住宅での磁界へのばく露評価:測定を行なわない方法 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・2.3.2 住宅での磁界へのばく露評価:測定を行なわない方法
2.3.2.1 距離
ばく露を評価する最も簡単な方法は、界の発生源となりうる施設(電力線または変電所など)への近接度を記録することである。これにより、当該発生源からの電界および磁界に対するばく露について非常に大雑把な尺度が得られるが、その他の発生源や、電界、磁界が発生源からの距離に応じてどのように変動するか(これは発生源が異なれば異なってくる)を考慮していない。距離は、調査担当者が測定したものでなく、被験者が報告したものは信頼性が落ちる傾向がある。最近では、UKCCS における0.4μT を超える時間平均磁界ばく露の発生源の半分以上が高圧電力線以外の発生源に起因するものとされている(Maslanyj 等、2007)。

2.3.2.3 過去の界の計算
Feychting およびAhlbom(1993)は、スウェーデンにおいて、電力線から300m の範囲内にある家に住む住民を同群にまとめて、症例対照研究を実施した。電力線の導体配置、電力線から家までの距離、電流の過去の記録は全て利用できた。

こうした特殊な状況により、研究者等は、被験者の家が様々な時期(例えば診断前)にばく露された磁界強度を計算できるようになった。

ワイヤコード化と、Feychting およびAhlbomが使用した計算モデルとの間で共通する要素としてあげられるのが、磁界強度が電流と共に増加し、電力線からの距離に応じて減少するという物理法則に基づく信頼性、および、両者が目視可能な電力線以外の磁界発生源を無視しているという事実である。

但し、1 つ重要な違いがある:Wertheimer およびLeeper のコードでは、電線種類と太さが電線の潜在的電流容量の尺度となっている。

Feychting およびAhlbomの研究では、概算の年平均電流は公益事業者の記録から得られた;従って、推定した磁界の時間的安定性という問題は全く発生しなかった:異なる時間異なった負荷値を用いて実施した評価からは、異なる推定値が生まれている。

Feychting およびAhlbomのアプローチは、計算で見込まれる精度が負荷履歴に関し得られる情報の充実および精密さによって差を生じることがあるが、北欧諸国やその他の国で利用されてきた。

他の界の発生源を無視できるという仮説は、高圧電力線に比較的近い被験者の場合のみ適切なものとなる。

こうした仮説の妥当性は、研究のために選択した母集団の定義や当該母集団がばく露される他の発生源からの平均磁界の大きさのような詳細事項により差を生じる。
Feychting およびAhlbom の研究から、そのアプローチがアパートの場合より、一戸建ての家庭の方がうまく機能するという証拠が幾つか挙げられている。

Feychting およびAhlbomの磁界の計算値と測定値を比較して彼らの方法の妥当性を確認し、一戸建て、集合住宅に関係なく、磁界測定値が0.2μT 未満の家のほぼ全てを計算によって正しく分類できることがわかった。

但し、磁界測定値が0.2μT を超える家の場合、計算によって一戸建ての家の85%を正しく分類できたが、アパートの場合は50%にすぎなかった。
Feychting およびAhlbomは、過去についての計算値と現在の測定値との間の差についても評価し、現在の負荷を使用した計算の結果、磁界推定値が0.2μT 超える一戸建ての比率が、履歴データに基づく計算値に比べて45%増加したことがわかった。

過去の磁界の計算値がばく露を正しく反映するものならば、この結果は現在のスポット測定が過去についてのばく露戸数を過大評価していたことを示唆する。磁界を送電線から計算し、人のばく露の推定値として利用される場合、他の発生源による磁界を無視できるという想定がなされる。

高い磁界を生じる送電線の近くでは、他の発生源(主に配電線)が同じくらい高い磁界を発生することはまれであり、これは有効な仮説である。

送電線からの距離が増えると(または、同様にばく露と非ばく露の間の閾値が小さくなると)、仮説は有効でなくなり、誤分類を引き起こす。

この例として、Feychting およびAhlbomの研究では、現在の計算値と測定値を比較することで大きな計算誤差が生じることが分かった。

この誤差は、低ばく露カテゴリーでより顕著となっている(Feychting およびAhlbom、2000)。

低ばく露カテゴリーでのこうした計算誤差は、現地の磁界発生源からの寄与分を含めなかった結果と考えられ、電力線からの距離が大きくなればそれだけ大きくなる。

こうした誤差は、過去のばく露を推定する意義を無効なものとし、その影響予測にとって現時点での測定値の方がより信頼性のある測定法ということになる