・2.3.2.2 ワイヤコード
ワイヤコード化は、目視できる電気設備からの距離およびその特性に基づいて居住施設を分類するという、非侵入型の手法である。
この手法は、家庭内部での発生源からのばく露を考慮していない。Wertheimer およびLeeper(1979)は、通常よりも高い磁界にばく露される潜在的可能性によって住宅を分類する簡単な規則を考案した。
その仮定は単純である:
: 磁界強度は、発生源からの距離に応じて低減する;
: 電力線を流れる電流は、「引き込み線」によって各家庭に電力を供給する全ての電柱で減少する;
: 所与の電圧で送電する複数の線に太い導体および細い導体の両方を使用し、かつ複数の導体がある場合、より大きな電流を送る場合にはより多く、より太い導体が必要になる;
: 電線を電線管または深い溝に埋設した場合、ばく露に対する寄与度は無視できる。
これは、埋設ケーブルがまとめて布設されており、また発生源との間を往復する電流によって生じる界が、電柱上の横梁の上に間隔をおいて設置されている場合よりもずっと効果的に相殺するためである(2.2.2.2.2項参照)。
Wertheimer およびLeeper(1979)は、上記の4 つの基準を利用して、家庭を2 種類に分類した。
その後、更に4 種類(Wertheimer およびLeeper、 1982)、5 種類(Savitz 等、 1988)に分類された;VHCC(超高電流形態)、OHCC(標準的高電流形態)、OLCC(標準的低電流形態)、VLCC (超低電流形態)およびUG(地下、即ち埋設)。
高いレベルに分類された家は、低いレベルに分類されたものよりもバックグラウンドの磁界強度が強いものと想定した。
この分類体系によると、電力線からの距離が40m を超える住宅は磁界にばく露されていないものと判断された。
Wertheimer と Leeper が開発したワイヤコードの原型は、多くの研究で利用されてきた。
種類の実質的なデータセットについてのワイヤコード・カテゴリーごとの測定範囲-Savitz 等(1988)およびLondon 等(1991)の研究における対照群、HVTRC 調査、EMDEX 住宅プロジェクトおよびNCI 研究
、分布平均値とワイヤコードとの間の正の相関を示していた(すなわち、より高いワイヤコード分類には順高い平均値が見られる)が、様々なカテゴリーの間で相当の重複が見られる。
入手可能なデータセットにおいて、ワイヤコードと測定フィールドとの間の関係を評価したデータセット全体にわたり、相関関係は良く類似していたこのため、特に選択した例だけを次に示す。
HVTRC 調査から得た、全782 個所の一戸建ておよび複合住宅、ならびにVLCC を除く全ワイヤコードに関する対数変換済みのスポット測定値は、対数正規分布していた。
データは、全てのワイヤコードについて約1 桁の第10~第90 百分位値の間隔、ワイヤコード全体にわたる界の範囲での大幅なオーバーラップ(上記)、UG およびVLCC に対する等価の場(参照カテゴリーとしてまとめられることが多い)、およびワイヤコードと共に界が増加する傾向を示している。
このデータについて、ワイヤコードはスポット測定界の分散全体の14.5%を説明している 。
ワイヤコードと測定値分類(単純化のため、二分する分類方式を採用)との間の不一致については多くの理由がある。例えば、配線の本数および太さが配線系統の全電流容量を示すものであるが、配置、界の除去作用を高める多相回路の位相方式および実際の負荷パターン等の違いを考慮に入れていない。このように、高いワイヤコード住宅でも、実際の界の強度は低いということがある。
同様にして、低いワイヤコード住宅では、電力線以外の発生源または非常に
大きな負荷を受けている外部発生源による界のレベルが高いために、高い読み値を示すことがある。
現時点で入手可能なデータが示すように、「高ワイヤコード-低測定値」という状況は「低ワイヤコード-高測定値」という状況よりも頻繁に発生する。
ワイヤコードは、住宅での磁界測定値の変動についてはほとんど説明できないものの、 磁界が潜在的に高い家庭を特定する上では役に立つ。特に、内部測定値が高い家庭の大部分はVHCC 分類に入る。
また、分類エラーは、測定値が低く、ワイヤコード分類が高い家庭の場合に起こることが多いが、VHCC 分類は、測定値が低い家を排除することには、適度に良く機能する。
ワイヤコード化の概念は、現地の配線方式に合わせて調整すれば、おおまかではあるが代用尺度として有効であることが示された。
例えば、Savitz 等(1988)の研究におけるワイヤコードと磁界測定値との相関関係は、磁界測定値の変動の16%程度を占めるに過ぎない。Rankin等(2002)は、ワイヤコードが磁界測定値の変動の21%未満程度を予測したと報告している。
ワイヤコードは、全体としてみると、様々な環境における磁界へのばく露の代用尺度としては不完全である。
一般に、ワイヤコードは北米での研究でしか利用されておらず、他の国では各
家庭への電力供給がほとんど地下になっており、その適用範囲が限定されるためである。