・東京都健康安全研究センター環境保健部生体影響研究科より
・http://www.tokyo-eiken.go.jp/edcs/5103-74-2.html
B-3-b-1.trans-, cis-クロルデン(trans-, cis-Chlordane)
1)ヒトの健康影響に関連する情報
米国において,chlordane 単独あるいは heptachlor との組み合わせで職業暴露あるいは室内散布により慢性の神経障害が生じた1).
木造ビルの表面および周辺の散布により chlordane の暴露を受けた250名に対する7年後の調査の結果,chlordane の暴露は慢性の神経生理学的,心理学的機能の損傷に関連があるとの報告がある2).
工業用 chlordane は暴露10年後も検出され,自己抗体の出現,T cell ,B cell の異常などの免疫障害が発現するとの報告がある3).
建築物の chlordane/heptachlor 処理と,白血病および造血障害の関連が指摘されている4).
日本における皮膚および血中の cholordane,oxychlordane,nonachlor の測定値の報告がある5).
日本において cholordane の使用は1986年までであるが,1991年の測定で皮膚および血中から検出されている.工業用 cholordane の主成分である nonachlor,oxychlordane が検出され,白蟻駆除処理などの物理環境,生活習慣との関連について論じている6).
徳島,沖縄の職業暴露を受けたグループと対照群について,血中および皮脂の cholordane 関連物質の分析を行った.対照群の血中の残留物量は oxychlordane,trans-nonachlor,trans-chlordane の順で,皮脂については trans-chlordane,cis-chlordane,trans-nonachlor の順であった.住居の chlordane 処理を行った場合,汚染が進む状況が見られた7).
1984~1985年にかけてのフィンランド各地に住む165名の母乳の分析で,cis-chlordaneは4.9%,oxychlordane は3.3%,trans-nonachlor は6.0%の母乳から検出された.chlordane 化合物のレベルは平均 0.41ppmであった8).
化学殺虫剤と発ガンに関する総説9).
2)内分泌系・発生過程に対する影響
アリゲーター卵管組織由来サイトゾルおよびヒトエストロゲンレセプターを用いたエストラジオール結合試験で chlordane 220nM,toxaphene 200nM,dieldrin 630nM の各々単独投与ではトリチウムラベルエストラジオ-ルの結合を阻害しないが2種以上の組合せで阻害効果有り10).
Swiss マウス雄に chlordane 0,100,300mg/kg/日を30日間経口投与で輸精管サイズ (径) の減少,輸精管の組織学的退行性変化を認めた11).
SD ラットの妊娠4日 - 授乳21日間および出生22日齢 - 80日齢に chlordane 0,100,500,5000ng/g/日投与.雌の子供でテストステロン値が用量相関的に低下した.また,雄子供の最初の交尾行動期間が短縮し,500ng/g 群では交尾行動の活発化を認めた12).
SD 幼若雌ラットの19 - 20日齢に chlordane 50mg/kg/ 1日2回,4日間腹腔内投与.chlordane はエストラジオール,エストロンを代謝する肝ミクロゾーム酵素活性を刺激し,エストラジオール,エストロンで誘発される子宮重量増加を阻害した13).
BALB/C Crgl マウスの妊娠1日に cis-,trans-chlordane 各々50,100mg/kg1回投与し妊娠11-14日に着床状態観察.cis- 50,100mg/kg 群および trans- 100mg/kg 群で妊娠率低下.cis- 50mg/kg および trans- 100mg/kg 群で着床数減少.奇形胚子は観察されなかった14).
3)実験動物での臓器障害性に関する情報
肝重量増加及び肝細胞脂肪変性:ラット 経口 100mg/kg 4日間15)
肝重量増加,肝細胞腫大及び結節性増生:ラット 混餌 25ppm 130週間16)
肝細胞腫大:ラット 吸入 1.0μg/l 13週間17)
甲状腺ろ胞細胞高の増加:ラット 吸入 10μg/l 13週間17)
総説18)
4)腫瘍発生に関する情報
肝細胞癌:マウス 混餌 30ppm 80週間19)
肝細胞癌:マウス 混餌 55ppm 9週齢より投与370日齢時20)
総説18)