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フェニルケトン尿症 (ふぇにるけとんにょうしょう、英: Phenylketonuria) とは、先天的な酵素(または補酵素)の異常によって、フェニルアラニンの代謝が阻害され起こる疾病である。頭字語のPKUで呼ばれることもある。
概要 [編集]
フェニルアラニンヒドロキシラーゼ反応(フェニルアラニンからチロシンが生じる反応)における酵素または補酵素の機能的欠損によるフェニルアラニンの蓄積とその副産物の生成によって起り、早期に適切な治療を開始しないと精神遅滞を引き起こす。
フェニルアラニン水酸化酵素の欠損が原因。日本では現在、全ての新生児に対し当疾患のスクリーニング(新生児マススクリーニング)を行い、早期治療に役立てている。湿疹が出やすい。
日本では新生児約8万人に1人の割合で起こる。先天性のアミノ酸代謝異常症の中では、最も多い。
代謝の流れ [編集]
フェニルアラニンヒドロキシラーゼ反応 [編集]
チロシンは非必須アミノ酸であるが、これはフェニルアラニンから生合成できるためである(フェニルアラニンは必須アミノ酸)。
フェニルアラニンのベンゼン環にヒドロキシル基が付加されるこの反応では、2つの酵素の活性が必要となる。
フェニルアラニンヒドロキシラーゼ
ジヒドロビオプテリンレダクターゼ
フェニルアラニンヒドロキシラーゼは、この反応の主たる酵素であるが補酵素としてテトラヒドロビオプテリン(BH4)を必要とする。
このBH4はフェニルアラニンをチロシンとすると、ジヒドロビオプテリン(BH2)となる。
このBH2は次のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ反応を起こすためには還元されBH4とならなければならない。そのための酵素として、ジヒドロビオプテリンレダクターゼが存在する。
このように上記2つの酵素活性が関係してくる。
酵素・補酵素・その他のタンパクの欠損 [編集]
フェニルケトン尿症は次のタイプに分けることができる。
1.フェニルアラニンヒドロキシラーゼの欠損
2.フェニルアラニンヒドロキシラーゼ輸送体の欠損
3.テトラヒドロビオプテリンシンターゼの欠損
4.テトラヒドロビオプテリンシンターゼ輸送体の欠損
5.ジヒドロビオプテリンレダクターゼの欠損
このうち、1は古典的フェニルケトン尿症と呼ばれる。2~5はかつては治療と診断が不可であったため重症フェニルケトン尿症と呼ばれていた時代もある。
これらはビオプテリン代謝異常症と呼ばれる。
副産物の生成 [編集]
フェニルアラニンはチロシンとなって消費されないと蓄積し、普段活性の無いフェニルアラニントランスアミナーゼ活性が高まり、フェニルピルビン酸となる。
フェニルピルビン酸はさらに代謝されてフェニル乳酸やフェニル酢酸、フェニルグルタミン酸となる。これらが血液脳関門の発達の悪い乳幼児期に蓄積すると、アミノ酸の細胞内へ輸送が阻害されるために、特に大脳の神経細胞が正常に成長できなくなる。
これが致命的となり、治療が行われないと精神遅滞をきたす。