・2.2.2 磁界
2.2.2.1 自然に存在する界
地磁気は、数ミリ秒から1012 秒の範囲の期間で継続的に変化している。表3 に、各種の周波数帯域の概要を示す。(省略)
地磁気の最大の特徴は、地球の回転軸にほぼ沿った双極子界に非常に似
ていることである。双極子界は、中心核を流れる電流で説明される。界の垂直な構成要素は、磁極で最大約70μT に達し、磁気赤道でゼロに近づく;逆に水平な構成要素は、磁極でゼロに近づき、磁気赤道で最大となり、30μT を僅かに上回る。
双極子界の100 年程度のオーダーの期間における変化は長期的変動となり、これは中心核の境界近くの渦電流で説明される
・2.2.2.2 人工的な界
2.2.2.2.1 送電線
界に影響を与える要因送電線から生じる磁界は、幾つかの要因に依存している。
: 線に流れる電流の数(通常、一回線の場合は3つ、二回線の場合は6つ、など)
: 空間中の電流の配置。これには以下のものが含まれる:
: 電流の分離。これは通常、隣接する導体によるスパークを回避するために必要な距離によって決まり、風による導体の変位に対する余裕を含む。従って、分離の距離は通常、線の電圧が高いほど大きくなる。
:多回線の逆相。
一回線の中で3つの相が上から下にa-b-cの順に配列されていると想定する。
二回線目も同様にa-b-cの順に配列されている場合、2つの回線は相互に強め合う磁界を形成する。
しかし、二回線目が逆の順、即ちc-b-aの順に配列されている場合、その磁界は逆向きとなり、2つの界の強度は部分的に相殺される。生じる界は、ほぼ距離の二乗ではなく三乗の逆数として低下する。
これは相の転位、反転、または回転などいろいろな呼び方で知られる。
相対位相のその他の配列ももちろん可能であるが、一般的には地表レベルで形成される界はより強くなる。
: 送電線を流れる電流。これには以下のものが含まれる:
: 負荷電流
: 何らかの不均衡電流
: 接地導体によって、あるいは地面そのものの中を流れる電流
: 電流の地上高:所与の電圧の線に許容される最低地上高は通常、地上の物体に対するスパークオーバーを回避するために必要な距離によって決まる。
一般的に、高圧線には大電流が流れており、導体間の空間も広い。
従って、磁界自体は電圧に依存しないものの、高圧線からは通常は強い磁界が生じる。
電力線の電流は電力需要の変化に伴い、一日のうちに、また季節的に変化する。
この変化は直接的にも、また運ばれる負荷が導体の温度に影響し、結果として弛みと地上高に影響することによっても、磁界に影響する。電力線は通常、定格よりもかなり低い負荷で稼働しているため、遭遇する平均的な磁界は、線から生じうる理論上最大の磁界よりも大幅に低い。
高調波および過渡現象電力システムおよび電力使用の本質は、幾つかの高調波が他のものと比べて優勢である点にある。
特に、150(180)Hz の第5 高調波は通常最も優勢で、偶数高調波(第2、第4、第6、…)は一般的に奇数高調波(第3、第5、第7、…)よりも小さい。
多くの状況において、高調波は非常に小さく、恐らく基本周波数の数%あるいはそれ以下である。
しかし、場合によっては、特殊な機器を備えた建物、あるいは特定の電力使用施設の近くの建物では、高調波が増加する可能性があり、時に第3 高調波が基本の強度に匹敵するものとなる可能性がある。
一般的に、第3 または第5 を超える高調波は非常に小さいが、高調波が第23 または第25 まで達するプロセスがある。
高調波の中には電気システム自体の稼働によって生じるものもある。
たとえば第11、第13、第23 および第25 の高調波は、一般的なAC-DC 変換器によって生じる。
しかし、ほとんどの場合は需要家が電力システムに負荷を接続したときに生じている。
典型例として照明設備の調光スイッチがある。高調波は、効率的に稼働している電力システムでは好ましくない存在と考えられている。
高調波は送電システムで低くなり、配電システムで高くなり、回路および家庭への最終配電で最大となる傾向がある。
過渡現象は電力システムにも発生する。
電圧(および結果として電界)における過渡現象は以下の要因によって生じる。
: 架空電力線への落雷。ほとんどの雷は接地線に落ちる(接地線が存在する場合)。
相導体に落雷した、または何か別のものに落雷した後に相導体に伝搬した場合、その相導体に非常に高い電圧がかかる可能性がある。
この電圧は、その除去を目的の一つとして設置されたスパークギャップにおいて少なからず急速に除去される。
: スイッチング事象。電流を伴う回路のスイッチが開き、電流が中断された場合、その回路に電圧が生じる。電圧はその回路の電気特性によって定められる時間で除去される。
スイッチングのサージは、電流の中断ごとに発生し、配電システムおよび家庭においても起こる。
: 短絡。短絡は、二相の導体間あるいは接地線または接地されている導体に接続している相の間で起こる。架空線で短絡が発生するのは、風で振動したり、衝突したり、また木や熱気球などが一つの相導体と別の導体あるいは接地線の間隙をふさいだ場合などが例としてあげられる。
地中回路や家庭の回路においては、ドリルでケーブルが切断された場合、ま
たは絶縁の腐食によって短絡が発生することがある。短絡が起こると、関わる回路は瞬時に(ブレーカー操作、またはヒューズが飛ぶことによって)遮断される。
送電システムでは40ミリ秒、配電システムではわずか1秒の短絡の間、関連回路の電圧はその障害のために通常とは異なる値になる。
電流(およびその結果生じる磁界)の過渡現象は以下の要因によって生じる。
:短絡。短絡の間(短絡が排除されるか、あるいはより一般的にはヒューズまたはブレーカーによって回路が遮断されるまでの間)、異常に高い電流が流れる。