・1.1.8 免疫学および血液学
ELF電界または磁界が免疫系の構成要素に及ぼす影響に関する証拠は、全体として一貫性に欠ける。細胞集団と機能的マーカーの多くはばく露に影響されなかった。
しかしながら、10μT~2mTの磁界を用いた一部のヒト研究では、ナチュラルキラー細胞の増加または減少、および白血球の総数の変化なしまたは減少が観察された。
動物研究では、ナチュラルキラー細胞の活性の低下が雌マウスに見られたが、雄マウスまたは雌雄のラットには見られなかった。
白血球数も、研究によって減少または変化なしが報告されており、一致していない。
動物のばく露は、2μT~30 mTとさらに広範囲であった。
これらのデータの潜在的な健康影響を解釈する際に困難となるのは、ばく露と環境条件が大きく異なること、実験動物が比較的少数であること、さらにエンドポイントが広範囲にわたることである。
ELF磁界が血液系に及ぼす影響について実施されている研究は少ない。
分化した白血球数を評価した実験で、ばく露範囲は2μT~2 mT を用いた。ELF磁界への急性ばく露、またはELF電界と磁界を組み合わせた急性ばく露では、ヒトまたは動物研究のいずれにおいても一貫した影響は見られなかった。
1.1.9 生殖および発育
全体として、疫学研究では、ヒトの生殖における有害な結果と母親または父親のELF界ばく露との関連は示されていない。
母親の磁界ばく露に関連した流産のリスク上昇についての証拠が幾つかあるが、この証拠は不十分である。
150kV m-1までのELF電界が、幾つかの哺乳類において評価されている(大規模集団および数世代にわたるばく露を含む)。
その結果は一貫して、発育への悪影響はないことを示している。
20mTまでのELF磁界への哺乳類のばく露は、外見、内臓または骨格の顕著な先天異常を生じなかった。
一部の研究では、ラットおよびマウスの両方について、若干の骨格形成異常の増加が示されている。骨格変形は催奇形性研究では比較的平凡な知見であり、しばしば生物学的には有意ではないと見なされる。
しかしながら、骨格の発育及ぼす磁界の微妙な影響は排除できない。
生殖への影響を扱った研究は極少数しか発表されておらず、それらから結論を導き出すことはできない。
哺乳類以外の実験モデル(鶏卵、魚、ウニおよび昆虫)に関する幾つかの研究では、μTレベルのELF磁界が初期の発育を擾乱するかもしれないという知見が報告されている。
但し、哺乳類以外の実験モデルの知見が有する、発育毒性の全体的評価における重みは、それに対応する哺乳類の研究よりも小さい。
全体として、発育への影響および生殖への影響に関する証拠は不十分である。