WHO 環境保健超低周波健康影響4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・1.1.3 生物物理学的メカニズム
ELF電界および磁界に関する、提案されている様々な直接的および間接的な相互作用のメカニズムの妥当性について調べた。

特に、ある界へのばく露により生物学的プロセスで発生する「シグナル」を、固有のランダムノイズと区別できるかどうか、また、そのメカニズムが科学的原理および現状の科学的知見を疑うものかどうかについて調べた。

多くのメカニズムは、ある強度よりも高い界においてのみ、妥当性のあるものとなる。

しかしながら、妥当性のあるメカニズムが同定されなくても、基本的な科学的原理が支持されるならば、非常に低い界レベルでの健康影響の可能性を排除することはできない。
電磁界と人体との直接的相互作用について提案されている多くのメカニズムのうち、神経網における誘導電界、ラジカルペア、およびマグネタイトの3つが、他のものより低い界レベルで潜在的に作用するものとして突出している。
ELF電界または磁界へのばく露により組織に誘導された電界は、内部電界強度が数V m-1を超える場合に、生物物理学的に妥当な方法で単一有髄神経線維を直接刺激する。

より弱い電界は、単一の細胞に対立するものとしての神経網のシナプス伝達に影響を与える可能性がある。
多細胞生物では一般的に、神経系によるこのようなシグナルプロセスを使用して弱い環境シグナルを検出する。

神経網による識別の下限値は1 mV m-1であることが示唆されているが、現時点での証拠に基づけば、閾値は10~100mV m-1あたりにありそうである。
ラジカルペア・メカニズムは、一般に認められている様式であり、磁界が特定の種類の化学反応に影響し、一般的に、低磁界では反応性のあるフリーラジカル濃度が増加し、高磁界ではそれらが減少する。

このような増加は、1 mT以下で見られている。このメカニズムが渡り鳥の飛行と関連する証拠がいくつかある。理論的根拠に基づき、またELF磁界および静磁界によって生じる変化が類似していることから、約50μTの地磁気以下の商用周波数の界は、それほど大きな生物学的意味をもたないと考えられる。
マグネタイト結晶は、様々な形の酸化鉄の小さな強磁性体結晶であるが、動物およびヒトの組織に少量だが見られる。フリーラジカルと同様、これは移動性の動物の方向付けと誘導に関連している。

ヒトの脳にも少量のマグネタイトが存在するが、弱い地磁気を検出する能力を与えているわけではない。

極端な仮定に基づいた計算から、ELF磁界がマグネタイト結晶に及ぼす影響の下限値は、5μTであることが示唆されている。
化学結合の切断、荷電粒子に対する力、および種々の狭い帯域幅の「共鳴」メカニズムなど、その他の直接的な生物物理学的相互作用は、一般環境および職業的環境で発生する電磁界レベルでの相互作用について妥当性のある説明を提示しているとは考えられていない。
間接的影響には、電界に誘導される表面電荷が感知され、導体に触れた際に痛みを伴うマイクロショックがある。

接触電流は、例えば小さな子供が家のバスタブの水栓に触れた際に生じる。これにより弱い電界(恐らくバックグラウンドのノイズレベル以上)が骨髄に誘導される。
しかしながら、これらが健康へのリスクとなるかどうかは不明である。
高圧電力線は、コロナ放電の結果として帯電したイオンの雲を生じる。これが、風に運ばれる汚染物質の皮膚や体内の気道への沈着を増加させ、健康に有害な影響を及ぼす可能性のあることが示唆されている。

しかしながら、最も高いばく露を受ける個人においてさえ、仮に長期的な健康リスクがあったとしても、コロナイオンが大きな影響を及ぼすことはなさそうである。
上記で考察した3つの直接的メカニズムのいずれも、一般的に人々が遭遇するばく露レベルでは疾病発症率を増加させるという妥当性のある要因にはならないと考えられる。

事実、これらは数桁以上高いレベルにのみ妥当となり、また間接的メカニズムについてはまだ十分に研究されてはいない。

妥当性のあるメカニズムが同定されていないことから、有害な健康影響の可
能性を排除することはできないが、このことは生物学と疫学からのより強力な証拠の必要性を高めている。