・人の健康リスクを評価する場合、人に関する適切なデータが入手できれば、一般に動物データよりも有用である。
動物研究や試験管内研究は補足的な研究であり、人体研究で不足している証拠を補足するために主に用いられる。
人を被験者とする研究については、ヘルシンキ宣言の規定を含む倫理的な原則に全面的に準拠しなければならない。
陽性または陰性の影響を扱った全ての研究を評価し、その真価によって判定する必要があり、その上で証拠加重手法により総合的な評価、判定を下す必要がある。
ばく露がある結果をもたらす可能性を、一連の証拠がどれほど変化させているかを決定することが重要である。
一般に、研究は反復可能であるか類似研究と一致していなければならない。異なる種類の研究(疫学および実験)の結果が同一の結論を示している場合には、影響を示す証拠はより強力なものとなる。
EHC モノグラフは、各国の機関や国際機関のリスク評価ならびにそれに基づくリスク管理の意思決定を援助するためのものである。
EHC モノグラフは、データが許す範囲でのリスク評価であって、いかなる意味においても規制や基準設定のための勧告ではない。
そうした勧告は国や地方政府の独占的権限である。
但し、電磁界に関するEHC は、ICNIRP などの機関に対しては、国際的ばく露ガイドラインを再検討するための科学的根拠を提供する。
手順
本 EHC モノグラフの刊行に至る全体的手順を以下に記述する。
RAD 協力センターのコンサルタントまたはスタッフが、最初にMedlinePubMed といった参照データベースのデータやIARC とICNIRP のレビューに基づいて第1 稿を作成する。
RADが受け取るこのドラフト文書については、まず少数の専門家委員会がレビューを行い科学的な品質および客観性を確認する必要がある場合もある。
この文書を第1 稿として受理すると、編集を加えずに150 を超える全世界のEHC 連絡窓口に送付し、その完全性と正確性について批評し、さらに必要があれば追加資料を提供するように依頼する。
この連絡窓口は、多くの場合各国政府が指名しており、協力センターであったり、専門家として知られる科学者個人であったりする。ここで通常は数ヶ月の期間を設け、寄せられた意見を著者が検討する。
寄せられた意見を反映させた第2 稿は、コーディネーター(RAD)が受け取り、承認した上でタスクグループのメンバーに送付し、彼らが少なくとも6 週間のピアレビューを行った上で会議を開催する。
タスクグループのメンバーは、所属組織の代表者ではなく科学者個人という立場で参加している。
その職務は文書中の情報の正確性、重要性、関連性を評価し、対象周波数域の電磁界ばく露による健康と環境のリスクを推定することである。
さらに今後の研究の必要性や安全面での改善点を指摘した要約および勧告も要求される。
タスクグループのメンバー構成は、会議の主題に関し必要な専門性(疫学、生物学、物理学、医学、公衆衛生)、性別や地理的分布におけるバランス、科学に関する見解の多様性に基づき決定される。