・10人全員の臍帯血中に検出された鉛、水銀、メチル水銀、PCBは神経毒性と発達毒性を持つ。
臭素化ダイオキシンや臭素化フランは難燃剤のPBDEsが分解して発生する内分泌攪乱物質である。PFCsはフッ素化合物でテフロン(PFOA)加工の調理器やスコッチガード(PFOS)などに含まれる。
PBDEsとTBBPAは臭素系難燃剤で家電製品、コンピュータなどのプラスチック部分から放出され、主としてハウスダストなどと共に体内に取り込まれる。PCNsは木材防腐剤や工業用潤滑油などに使われている。BPAは今回初めて米国の新生児で検出された。
現在、BPAの健康影響については、連邦科学研究所などで最優先の研究対
象になっている。
9人から検出された過塩素酸塩はロケット燃料の酸化剤でミサイル、スペースシャトル、花火などに使われ、土壌、地下水を汚染し、飲料水や食品に含まれる。
多環ムスク類は麝香(ジャコウ)の香りをもつ合成香料で石鹸、ローション、香水などから皮膚や吸気によって体内に入る。
ホルモン攪乱作用が示唆されているが詳しいことは不明である。
今回の臍帯血研究は、発達中の胎児が、母胎経由で神経毒性のある物質、内分泌攪乱物質、発がん物質など多数の化学汚染物質に曝露されていることを明らかにした。
だが問題は、体内の複数の化合物質が健康に及ぼす影響に関するデータがなく、複合的な毒性研究に殆ど手がつけられてないことである。
また貧困や歴史的な差別により、有色人種は、一般に、廃棄物処理場、工業地帯、交通量の多い道路の近くや、古く劣化した家に住んでいる。
さらに、危険な工場労働者として職場で曝露され、有害物質を含む食品や製品の利用によって、より多くの化学物質に曝露されるという環境不平等の問題が生じている。
環境保護庁(EPA)はこうした環境不公正を最重要課題とし取組みを開始している。
(森脇 靖子)