・○ 100kHzを超える電磁界(携帯電話や放送局など)の健康影響
100kHzを超える中間周波及び高周波電磁界(携帯電話や基地局、放送局など)の健康影響については、IARCによる発がん性評価が現在進行中です。
この評価結果の公表後、WHOは数年かけて、健康リスク評価を実施し、「環境保健クライテリア」を発刊することになっています。
これまでのところ、WHOは次のような見解を示しています。
非常に低いばく露レベルと、これまでに集められた研究結果を考慮すれば、基地局及び無線ネットワークからの弱い高周波電磁界が健康影響を生じるという明白な科学的証拠はありません。
[補足説明]
IARCは、携帯電話使用による高周波電磁界へのばく露と、頭部及び頸部の腫瘍のリスクとの関連について調べるため、我が国を含む13カ国が参加する国際的な大規模疫学研究(通称インターフォン研究)を実施しました。
平成22年2月末の時点で、同研究の最終的な分析結果は公表されていませんが、幾つかの国別研究の結果と、欧州の一部の国々のデータを統合して分析(プール分析)した結果は公表されています。
これによれば、10年以下の携帯電話使用による頭部及び頸部の腫瘍のリスク増加は認められていません。10年を超える期間については、データが尐ないため、現時点では確かな結論を導くことができないとされています。
一方、高周波電磁界による発がんへの影響については、動物や細胞を用いた多くの実験研究がこれまでに実施されています。
初期の研究では、ある種の動物における腫瘍の増加や、がんにつながる可能性のあるDNAの損傷などの細胞への影響が報告されましたが、その後のより詳細な研究ではこうした結果は再現されておらず、確かな影響とは認められていません。
IARCは今後、インターフォン研究を含む疫学研究や、動物や細胞を用いた実験研究の結果を総合的に判断して、高周波電磁界に発がん性があるかどうかを評価する予定です。これまでにわかっていることとして、IARCは「入手可能なデータからは、携帯電話の使用に関連した脳のがん及びその他の腫瘍のリスク増加は示されていません」と報告しています。
[参考]電磁過敏症(電磁波過敏症)
日常生活で電磁界にばく露される機会が増えていることを背景に、刺激作用や熱作用を生じるよりも遥かに低いレベルの電磁界にばく露されることにより、頭痛や睡眠障害などの不特定の症状が生じるのではないかという、いわゆる「電磁過敏症」(電磁波過敏症)について関心が高まっています。
WHOは電磁過敏症について、次のように述べています。
電磁過敏症は、多様な非特異的症状として特徴づけられ、症状は人によって異なっています。
症状は確かに存在していますが、その重症度は非常に広い幅があり、どのような症状を引き起こすにせよ、影響を受ける人にとって電磁過敏症は、日常生活に支障をきたす可能性のある問題です。
電磁過敏症は、明確な診断基準を持たず、電磁過敏症の症状が電磁界ばく露と関連するような科学的根拠はありません。
さらに、電磁過敏症は医学的診断でもなければ、単一の医学的問題を表しているかどうかもはっきりとしていません。
1報道などでは「電磁波過敏症」が用いられていますが、本書ではWHOでの名称に従い、「電磁過敏症」と表記します。