・5. この病気は遺伝するのですか
肺気腫は遺伝する病気ではありません。
しかし、きわめて稀にα1アンチプロテアーゼ欠損症と呼ばれる遺伝病のために若年性肺気腫になる人がいます。
この病気は遺伝性家族性の疾患であり遺伝子の欠陥のためにアンチプロテアーゼの一つであるα1アンチプロテアーゼと呼ばれる蛋白質をつくることができません。
そのため、肺内ではプロテアーゼが優位になりやすく、若年性肺気腫を起こしてきます。この場合も喫煙者であるか否かが発症年齢と深く関わっており、喫煙本数が多いほど早くに発症し病気の進行も早まります。
欧米では肺気腫患者全体の1~3%がこのα1アンチプロテアーゼ欠損症によるものと推定されていますが、本邦ではきわめて稀でありこれまでに日本全国でわずかに10数家系で見つかっているだけです。
血中α1アンチプロテアーゼ値が正常である他の大多数の肺気腫患者では、これまでに遺伝子異常は見つかっていません。
また、父親が肺気腫であれば必ず子供も肺気腫になるというような強い遺伝性はありません。
しかし、肺気腫患者の家族や親戚にはやはり肺気腫患者が多いという報告や肺気腫患者の子供では肺の働きを詳しく調べると若いときからわずかな異常をもっている人が多いという調査結果もあります。
このような調査結果は、家族で共通にもっていた外因(たとえば家族が皆喫煙者であったり、あるいは自分はタバコを吸わなくとも間接的に家族の吸ったタバコの煙を吸っていることなど)によって説明される可能性もあるため、この疾患は遺伝すると決めつける理由にはなりません。
しかし、タバコを吸った場合の肺気腫の起こりやすさといった体質が、ある程度親から子へ受け継がれている可能性はあるでしょう。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
この病気の主な症状は体を動かしたときに生ずる息切れです。
多くの肺気腫患者は比較的高齢になってから発症するために歩行したり軽い運動などで息切れに気づいても単に高齢のためと考えて医療機関を受診せずにいて結局診断が遅れることが多いのです。
病気の進行とともにこの息切れは徐々に悪くなり、ひどくなると、日常のちょっとした体の動きですらつらくなります。
喫煙者であることが圧倒的に多いこともあって、慢性的に少量の咳・痰がみられる人が多いのですが、息切れの程度と咳・痰の程度は必ずしも平行しません。
また、咳・痰がないからと言ってこの病気ではないと考えることはできません。一方、慢性気管支炎を合併しているときには、年中たくさんの痰を排出することもあります。呼吸がひゅーひゅーする感じを訴えることもありますが、気管支喘息の発作とは異なり気管支拡張薬の吸入をしても完全に元のように楽になることはありません。
風邪をひいたり、それをこじらせて気管支炎・肺炎を併発すると、この病気に特有な機能障害である息を吐き出す力がうんと弱まるため、息切れは一段と強くなります。