・難病情報センターより
1. 肺気腫とは?そして、若年性肺気腫とは?
肺は肺胞と呼ばれる無数の小さな空気の袋が集まってできている臓器です。その中を空気の通り道である気管支が樹木の枝のように走っています。
肺気腫とはその肺胞の壁が長い年月をかけて徐々に壊れてゆく病気です。
そのため、肺胞としての働きを失った空気のたまり場が肺のいたるところにできてきます。肺は全体として弾力のない伸びきったゴム風船のようになり、勢いよく空気を吐き出そうとしても思うようにいきません。
肺は呼吸をすることによって身体が必要とする酸素を取り込み、その酸素が使われた結果できた炭酸ガスを外に吐き出すことを大切な仕事としています。
この酸素と炭酸ガスの入れ換えは肺胞とその周りを取り巻く毛細血管との間で行われます。肺気腫になるとそのガス交換の効率も悪くなるため、ちょっとした体の動きですぐに体内の酸素不足が起こるようになります。
肺気腫は、一般に60歳を過ぎてからはじめて症状がでてくることが多いのですが、患者さんの中にはもっと若いときから発症する人がいます。
そこで、若い年齢で発症した肺気腫を高齢になってから発症する肺気腫と区別して若年性肺気腫と呼ぶことにしています。
これは、若年性肺気腫の患者さんでは、きっとこの病気になりやすい特殊体質をもともと何か持っていたに違いないと考えるからです。
この病気は長期にわたる喫煙が一番の原因です。
そこでタバコを吸っている人の場合には50歳までに発症したときに若年性肺気腫と呼び、タバコを吸っていない人の場合には60歳までに発症したときにそう呼びます。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
長くタバコを吸い続けた人にとって高齢になってから肺気腫を起こしてくることは稀ではありません。
例えば1日20本以上喫煙を続けていると7人に1人あるいは15%くらいの人が息切れのある肺気腫になると言われています。
慢性の肺の病気のために在宅で酸素吸入をしている患者さんはこれまでに全国で約4万人登録されており、最近では毎年4000人くらいずつ増えていますが、この在宅酸素吸入患者の一番多い基礎疾患は肺気腫であり全体の約40%を占めています。
肺気腫によって亡くなる方は人口10万人あたり3.2人(1990年)程度で米国の約1/20に過ぎませんが、これは肺炎や気管支喘息で亡くなった患者さんの数に含まれてしまっているために実際の数より過小評価されている可能性もあります。
ちなみに米国では慢性閉塞性肺疾患(肺気腫と慢性気管支炎を併せた診断名)は常に主要死因の5位までに入っています。
本邦では、これから人口の高齢化が急速に進んでいくこと、喫煙者の割合が先進国の中でも著しく高いことなどの理由により、今後は肺気腫患者がますます増加していくものと予想されています。
このように肺気腫はこれからも高齢喫煙者の中でどんどん増えていくと思われる疾患ですが、それでは、若くしてこの病気にかかる人がどのくらいいるかについては現在のところ正確な統計はありません。一般的には若年性肺気腫と呼ばれる患者さんはきわめて稀です。