・難病情報センターより
1. 抗リン脂質抗体症候群とは
抗リン脂質抗体症候群は、血液中に抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体や、ループスアンチコアグラント)という自己抗体が証明され、習慣性に(2回以上)流産を起こしたり、動脈や静脈の中で血の固まりが出来る血栓症(脳梗塞、肺梗塞、四肢の静脈血栓症など)を起こしたり、血液検査上で血小板が減少する、というような症状や所見をきたす疾患です。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
1998年の全国疫学調査によれば、1997年の受療推計数は約3,700人とされていました。しかし近年の欧州で行われたEuro-Lupus、Euro-Phospholipid projectなどを参考にすると、SLEの約10%がAPSを合併していると推定されること、原発性APSがSLEに伴う続発性APSと同等数いると推定されることから、日本でSLEが約50,000人と推定されていることより、続発性APSが5,000人、原発性も同程度の5,000人で合わせて10,000人はいると推定されます。
3. この病気はどのような人に多いのですか
この病気の方の約半数は、全身性エリテマトーデス(SLE)に合併しています。強皮症など他の膠原病に合併することもあります。
また、他に膠原病などの基礎疾患がなくてもみられます。
流産をくりかえす習慣性流産の方や若くて特に動脈硬化がないと思われるのに脳梗塞などの血栓症を起こした方は、この病気である可能性があります。
4. この病気の原因はわかっているのですか
原因は未だ不明です。
5. この病気は遺伝するのですか
現在のところ、家族性は証明されていません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
下肢の深部静脈の血栓症の頻度が最も高く、症状としては再発しやすい下肢の腫脹と疼痛が特徴です。
脳の血管に血栓ができ、脳梗塞や一過性脳虚血発作をきたすことも比較的多くみられます。
その他脳血流障害による片頭痛、知能障害、意識障害、てんかんなど種々の中枢神経症状もみられることがあります。
また、肺に血栓が飛んで、肺動静脈血栓症や肺高血圧の原因となり、呼吸不全を起こし命にかかわることもあります。
心臓の血管に血栓が飛んで心筋梗塞を起こしたり、末梢動脈の閉塞による皮膚潰瘍、網膜動脈の血栓による失明も起こることがあります。
つまり、ひとつ、もしくは、いくつかの血管が血栓による閉塞によって、それぞれ、多彩な症状を呈する可能性があります。
習慣流産は、妊娠第1期(3ヶ月以内)に2回以上の自然流産があるか、第2期以降(通常妊娠5.6ケ月以降)に1回以上流産の経験がある場合をいいます。
その他、妊娠・出産に関連するものとして、出産は出来ても胎児仮死、胎児発育遅延などがみられたり、出産後の母体の血栓症の合併も報告されています。
血小板減少に関しては軽度であることが多く、皮膚に紫斑ができたり、脳出血や、消化管出血による吐血や下血という出血症状は少ないとされています。