・4) ボランティア研究
4)-1 電磁波過敏症
Sandstroem(1998)はスウェ-デンとノルウェ-の携帯電話使用者約11000人に対して質問票郵送法に基づく自己申告による自覚症状の横断的調査を行われた。
その結果、スウェーデンでは13%、ノルウェーでは30%が、疲労感、頭痛、耳周辺の温熱感など、本人は携帯電話使用と関連すると考えている自覚症状が少なくとも一つあると回答した。また症状の申告率は1日当たりの使用時間と共に増加した。
このような症状は、「電磁界過敏症」と総称される。
携帯電話に限らず、さまざまな電磁界源の近くで症状を訴える症例が報告されている。
北欧では、この問題が深刻に受け止められている。
この報告に対しKoivistoら(2001)は、主観的な症状の存在を否定している。
最近の報告として、携帯電話に対して過敏症状を訴えるボランティア20名に、欧州のアナログ、およびデジタル(GSM)方式の電話による電波を照射または偽照射して、曝露と症状の関連性の調査が行われた(Hietanen 2002)。被験者からはさまざまな主観的症状の訴えがあった。
しかし、症状の発生は照射の有無に無関係であった。
また、照射と偽照射の違いを言い当てられたものはいなかった。
この研究報告は、携帯電話による電磁波過敏症が電磁波によるものではなく、電磁波に対する不安感に起因する主観的なものであることを強く示唆している。Ziskin(2002)は、電磁界過敏症の研究についてのレビューを行い、その原因が電磁界そのものではないと結論付けている。
4)-2 その他の神経生理学的影響
Braune(1998)らはGSM方式の携帯電話を35分間使用した後の心拍数、血圧、手の末梢微小循環を測定した。
その結果、心拍数がわずかに減少、血圧が5 - 10mmHg上昇、微小循環が減少したと報告した。
しかし、その後の研究により、血圧の上昇などは実験条件によるアーチファクトであるとの結論を報告した(Braune 2002)。
携帯電話の電波を頭部に照射するときに反応時間の短縮が見られるという報告があった(Preece 1999、Koivisto 2000)がEdelstynら(2002)は注意タスクの向上という類似の結果を報告している。
これらから、脳幹を起源とする交感神経の亢進によるものではないかと考察している。
但し、この実験はブラインド試験ではなく、また規模も小さいので信頼性が十分でない。