・6)-3 その他のがんについて
これまでに、電磁界の曝露と乳がん、肺がん、非ホジキンリンパ腫、および大腸がんとの関連性を示した研究結果が報告されているが、いずれも一貫した結論が見出されていない。
また電磁界の曝露について関連性の評価を行うのに十分なデータ数がないため、今後さらなる疫学研究が実施されることが望ましい。
6)-4 その他の健康影響について
これまでに、免疫学および血液学上の健康影響、メラトニン分泌の抑制、神経変性疾患、うつ病、自殺、および心臓疾患の発生との関連性について調べた研究が報告されているが、いずれも確立した結果が得られていない。
6)-5 評価
超低周波磁界の曝露による発がん性について、小児白血病に関しては限定された根拠が示されている。
超低周波磁界の曝露による発がん性について、その他のがんについては根拠が十分示されていない。
静電界、静磁界、および超低周波電界の曝露による発がん性については、すべてのがんについて根拠が十分示されていない。
6)-6 総合評価
超低周波磁界の曝露は、発がん性があるかもしれない(グループ2B)。
6)-7 考察
今回レビューした文献は、これまでにまとめた文献レビュー以降に、新たに報告されたものを主体とした。報告内容は前年度までの報告書と同様に、電磁界における健康影響があるとする論文と、否定的な論文の双方があった。IARCより小児白血病に関しては超低周波磁界との関連性について限定された根拠があるとされたものの、成人の白血病や全脳腫瘍を含む大部分のその他の健康影響については明確な証拠があると示されず、また健康影響はないとする確証もないという現状である。
全白血病および全脳腫瘍と電磁界曝露との関連性ついては、これまでに疫学研究の精度が改善してきており、研究の規模と方法については、現実として達成可能であろう限界に近づきつつあると考えられる。
しかしながら、曝露評価や選択バイアスの存在については、いくつかの点により改善が難しい要因である。
今後の研究では、曝露評価や選択バイアスに関して特定の仮説を調査するようなデザインを行うことが必要とされる。
また乳がんや神経変性疾患等の、全白血病および全脳腫瘍以外の健康影響と電磁界曝露との関連性ついては、評価を行うに足る研究結果が不十分なため、近年行われている研究成果の報告を待ち、一定の精度を持った研究論文を整理し、メタアナリシス等を行う評価を今後も実施する必要があると考えられ
る。