・4)-2 その他の悪性疾患についての研究
○ Reynolds Pら(4)は、航空機の客室乗務員を対象にした後ろ向きコホート研究により、電磁界の職業性曝露と様々ながんの発生との関連性を調べた。
女性における全がんの標準化罹患比が1.05(95%信頼区間0.86~1.27)であるのに対し、悪性黒色腫の標準化罹患比は2.50(95%信頼区間1.28~4.38)と有意に高い結果が得られた。
また男性における全がんの標準化罹患比が2.43(95%信頼区間1.57~3.58)であるのに対し、カポジ肉腫の標準化罹患比は9.29(95%信頼区間5.18~15.36)と有意に高い結果が得られた。
しかしこの研究では、宇宙線や化学物質等の、電磁界以外にリスクを増加させる要因について分析の際に十分に考慮されていないので、がんのリスクの増加を電磁界曝露の影響としての評価することは難しいと考えられる。
○ De Roos AJら(10)は、神経芽細胞腫と診断された538名の小児の両親を症例とし、年齢と性をマッチさせた504名の両親を対照として、症例対照研究を行った。父親と母親に分類し、それぞれの職業性曝露を超低周波電磁界、
高周波放射線、およびイオン化放射線の曝露に分類して関連性を調べたが、いずれも小児の神経芽細胞腫のリスクの増加との関連性は認められなかった。
○ Fabbro-Peray Pら(13)は、非ホジキンリンパ腫(NHL)と診断された445名を症例とし、1,963名を対照として、症例対照研究を行った。
対象者にはインタビューを行い、これまでに従事した職種に関して聴取された。
その結果、毎日の溶接作業(オッズ比2.5、95%信頼区間1.2-5.0)、および通信士(オッズ比3.1、95%信頼区間1.4-6.6)について、NHLとの有意な関連性を認めた。
しかしながら、この研究では対照を選択時に症例とのマッチングを行っていないための選択バイアスの存在と、職種の聴取のみで曝露評価を行っているため誤分類の存在が考えられるが、十分に考慮されていないため明らかな関連性を認めることができるとは言い難い。