・アンケートでは子どもの発症者について把握できなかったが、当団体には、
子どもが電磁波過敏症になり、学校の側に携帯電話基地局があるので学校へ行くと体調が悪くなるといった声や、大学構内の無線LAN で体調を崩すという学生の保護者からの相談も寄せられている。
このように、電磁波は電磁波過敏症発症者の社会参加を阻む障壁(バリア)
であり、基本的人権を侵害している。
発症者が普通の人と同じように生活できるよう、社会全体でこの問題に取り
組む必要がある。とくに子どもたちが、健康で快適に過ごせるよう、学校や生
活環境を整える必要がある。
カナダの人権委員会の報告書や、アメリカのIEQプロジェクトの報告書にもあるように、発症者のための改善策は、さらなる被害拡大を予防することにもつながるだろう。
2006 年12 月、国連で「障害者の権利条約」が採択された。第一条では「障
害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な障害を有する者であって、様々な障壁との相互作用により他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することを妨げられることのあるものを含む」
( http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/adhoc8/convention.html
)と明記されている。
電磁波過敏症や化学物質過敏症もこの障害の定義に合致する。
この条約では、障害者の社会参加を実現するための必要かつ適当な変更を「合理的配慮」を求めている。例えば、足の不自由な人にとって、段差が障壁(バリア)になり、合理的配慮として車いすやスロープが必要なように、電磁波過敏症発症者には電磁波が,化学物質過敏症の人には化学物質が障壁になり、電磁波や化学物質の削減によって社会参加が可能になる。
障害は「個人の疾患・問題」ではない。社会参加を阻む障壁がある時に、初
めて「障害」という問題が発生する。
しかも、社会全体で電磁波を削減することは、発症者の症状を改善し、社会参加を促すだけでなく、他の人々の健康を守るためにも役立つ。
予防原則に基づいて、積極的に電磁波の削減を進めていく必要がある。
具体的には、下記のような対策が必要になるだろう。
・ ・無線ネットワークを有線に置き換える
・ ・送電線や携帯電話・PHS 基地局、Wimax の設置場所を制限する
・ ・携帯電話・PHS 基地局、WiMax など無線施設を設置する際、設置計画を周辺住民に事前に公開する
・ ・携帯電話・PHS 基地局、テレビ・ラジオ送信施設、Wimax など電磁波発生源の情報をインターネット等で公開する
・ ・公共施設や学校、病院に携帯電話・PHS 基地局、無線LAN の設置を禁止する
・ ・携帯電話の使用ルールの確立と使用場所の制限
・ ・家電製品の電磁波対策と電磁波に関する情報を公開すること
・ ・電波防護指針の見直し
・ ・電磁波対策住宅の研究開発と普及
・ ・公共交通機関、ホーム、待合室等での携帯電話等無線通信機器や電波を発生させる機器の使用禁止エリアを設置し、利用者に周知する
・ ・医療関係者に電磁波の健康影響を知らせ、医療体制を充実させる
・ ・電磁波の少ない病院や病室の整備
・医療機関の情報や電磁波対策など、発症者のための相談窓口の設置
・発症後も働き続けられるよう、職場での電磁波環境の改善を雇用主に義務づける
・子どもが通う施設で無線LAN、コードレス電話、携帯電話など無線通信機器
の使用を原則禁止とする
・白熱灯の利用促進
発症者の多くは化学物質過敏症も発症しているので、化学物質も含めた環境
因子の削減が必要になるだろう。
発症者は、今この瞬間も電磁波によって苦しんでいる。
各国の研究が指摘しているように、発症を防ぐためにも被曝を避けることが不可欠だ。
どうか、一日も早い救済と対策をお願いしたい。
VOC-電磁波対策研究会
代表 加藤やすこ