・ 内分泌の異常に関する研究 [編集]
CFS患者の発症前の状態として広く報告されている、トラウマ・感染・負傷などによる「物理的もしくは精神的なストレス」は、視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を活性化し、コルチゾール等の「ホルモン」の放出を促進させ、「免疫系」等の多くの体のシステムに影響するとされる。
コルチゾールとは、ストレスを受けた時に身体の防衛反応が働き、脳視床下部からの指示で副腎から分泌されるホルモンである。
その他の研究においても、CFS患者や、線維筋痛症等のCFSと関連する疾患に、類似のホルモン異常がみられており、コルチゾールは、炎症や細胞性免疫の活性化を抑制する作用を持っているとされ、コルチゾールレベルの低下は、炎症プロセスや免疫細胞の活性化につながると考えらている。
また、運動後のコルチゾールに関連した炎症反応を起こす遺伝子発現の異常もみられ、診断法に用いられる可能性がある。
なお、CFS患者はコルチゾールレベルが低下していることが明らかとなっているが、免疫学データによると、CFSにみられるコルチゾールレベルの変化は、正常と認められる範囲内であり、患者群と健常者群の平均値を比較することで、初めてその違いを見ることがでる。
すなわち、コルチゾールレベルをCFS患者の診断方法として用いることはできない。
また、TGF-βの産生異常により、神経ホルモンDHEA-Sの低下・アシルカルニチン異常・グルタミン酸・γ-アミノ酪酸 (GABA) の産生低下が起こっていると考えられている。
患者の約半数の血液中に、自己免疫疾患の患者の血液中だけにみられるCHRM1(ムスカリン1型アセチルコリン受容体)抗体という特殊たんぱくが見つかっており、その他 OPRM1(オピオイドμ受容体)、 HTR1A(セロトニン1A受容体)、DRD2(ドーパミンD2受容体)も血液中に存在する患者が存在する。
アセチルコリン受容体に対する自己抗体は、重症筋無力症と関連があり、CHRM1が血中に存在する患者は脱力感・思考力低下の症状が強い。
神経学的な異常に関する研究 [編集]
CFS患者で、脳内の神経細胞の活動性が下がっている部位が幾つかある患者が居る。前頭前野(ブロードマン24,32,33と9/46d野)の部位に限定してのアセチルカルニチン取り込みが低下しており、この前帯状回の神経細胞は、自律神経系の中枢部であり、グルタミン酸などの合成が上手く行われていない可能性があり、このことにより自律神経系の諸症状がでることにつながっていると考えられている。また、血中アセチルカルニチンの濃度低下により、倦怠感・思考力・集中力の低下なども引き起こす原因とされている。
また、ポジトロン断層法 (PET) による脳の血流を調べたところ、前帯状回・眼窩前頭野(意欲やうつ状態と関係している)・背外側前頭前野(新しい計画を立てたり新たな行動の意欲と関係)・側頭葉(記憶に関連している)・後頭葉(視覚と関連)・脳幹部(意識を調節する部分や筋肉との共同運動を調節し、呼吸・心拍・体温調節などの基本的な生命現象の中枢)などの血流が大幅に低下し、神経細胞の活動レベルが下がっている患者が見つかっている。
一部の患者の不定愁訴はこれらによるものと推測できる。
病名呼称各種 [編集]
筋痛性脳脊髄炎(ME)
1938年から医療文献に記されている。1988年に、イギリス衛生省・英国医療協会により、公的にMEを真に存在する・重症の病気であるとした。脳脊髄炎と名前に含まれているが、炎症がないから不適切だと主張するものもいるが、患者に炎症が見つかっているケースがある。イギリス・カナダ等では、CFSよりMEという呼称が利用されている。
慢性疲労症候群(CFS)
1988年に、CDCにより名付けられた病名。アメリカ・日本等ではこの呼称は利用されている。
しかし重傷度が伝わらない[5]等の理由により、多くの患者・医師等は改名を望んでいる。
ヤッピー・フルー
「裕福層のインフルエンザ」を意味する蔑称である。1990年のニューズ・ウィークの記事で取り上げられた。裕福層にCFS患者が多く、仮病・バーンアウト症候群だと思われていたからである。
現在では、裕福層だけに発症するわけではなく、あらゆる階級・人種に発症することが分かっている。この呼称は、世にCFSを精神疾患・怠惰なだけだという偏見を生み出してしまった。
慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)
アメリカの患者団体が、慢性疲労と間違われやすい・重症度が伝わらないということで提案している病名。
慢性活動性EBウイルス感染症(CEBV)