・ゴナドトロピン(LH, FSH)分泌過剰症の代表は中枢性性早熟症(思春期早発症)です。
奇形腫による絨毛性ゴナドトロピン (hCG) 産生、過誤腫によるLH-RH産生、胚芽腫や神経膠腫による思春期発現抑制機構の障害などが性早熟症に原因です。
水頭症、脳炎、髄膜炎などの非腫瘍性中枢神経疾患においても性早熟が生じます。基礎疾患のない特発性の症例もあります。
成人では下垂体や視床下部に存在する腫瘍において産生されるゴナドトロピン(LH、FSH、hCG)やLH-RHによりゴナドトロピン分泌過剰症が生じます。
5. この病気は遺伝するのですか
大部分は遺伝とは無関係です。
しかし、稀に、家族性のゴナドトロピン分泌低下症が認められます。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
ゴナドトロピン分泌低下に伴う特徴的な症状は、無月経、性欲低下、インポテンス、不妊、陰毛・腋毛の脱落、性器萎縮、乳房萎to縮、二次性徴の欠如です。
ゴナドトロピンの分泌過剰症の男児では9歳以前に、女児では7歳以前に二次性徴が発現します。
思春期の徴候が出現すると、身長増加が促進され正常児より高身長を示します。
下垂体腫瘍が存在すると頭痛、嘔気、視野障害などを生じることがあります。下垂体腺腫に伴う局所症状や下垂体機能低下症状を示すことがあります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
治療可能な基礎疾患(腫瘍・炎症・肉芽腫など)に対しては原因治療を行います。
副腎不全や甲状腺機能不全を合併している場合にはこれらのホルモンの補償を開始します。
ゴナドトロピン分泌低下症に対する治療は年齢、患者の希望により決定します。挙児希望の場合(男子および女子)には、hCGあるいはhCGとhMG(あるいは FSH)両者の投与、ないしはLH-RH 連続間欠的皮下投与が行われます。
挙児希望のない場合には、男子ではアンドロゲンの投与、女子ではエストロゲン単独ないしプロゲステロンの併用投与が行われます。
ゴナドトロピン分泌過剰症に対しては、LH-RH誘導体の投与が性成熟の進行を迅速に抑制し、副作用のないことで優れています。
効果はLHーRHに対する血清LH、FSHの反応性の低下と血中性ステロイドホルモンの低下で判定します。
LH-RH誘導体の投与は1日3-6回鼻腔内に噴霧するか4週に一回皮下に注射します。
ゴナドトロピン分泌抑制作用を有するアンドロゲン拮抗薬の投与も骨成熟を抑制する効果があります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
ゴナドトロピン産生腫瘍では95%が治癒ないし軽快し、大部分では日常生活に支障を認めません。
中枢性性早熟症では、治癒は少なく3分の2が軽快、3分の1は不変です。
日常生活に大多数で支障を認めません。
ゴナドトロピン単独欠損症においては61%が治癒または軽快、35%は不変です。
日常生活に79%で支障を認めません。