帝京大学医学部精神神経科学教授 竹内龍雄
効果が出るまでに1~2週間かかる
三環系抗うつ薬の欠点の一つは、効果が出るまでに1~2週間かかるということです。
この点、のんですぐ効果の出るペンゾジアゼピン系抗不安薬とは対照的です。抗うつ薬が効果を発揮するためには、脳の代謝のバランスが変わってくる必要があり、それに時間がかかるためと考えられています。
薬によってはもう少し早く効果が現われるものもありますが、少量から始めてだんだん増量していく方法をとると、有効量に達するまでの期間があるので、さらに時間がかかることになります。
もう一つの欠点は、副作用の方はのんですぐ出てくるということです。
従ってはじめの1~2週間は、効果が出てこなくて副作用だけが出るということになります。
困ったことですが、ここで薬をやめてしまっては元も子もありません。
抗うつ薬療法でまず大切なことは、効果が出るまでじっと我慢することです。
我慢を少なくするための対策はあります。治療開始時はペンゾジアゼピン系抗不安薬と併用する方法です“抗不安薬の方はすぐ効果が現われるので、抗うつ薬の効果が出るまでの間、ある程度症状に苦しめられないですみます。
抗うつ薬の効果が出てきたら、抗不安薬を漸減中止すればよいのです。
副作用は眠気、口渇、便秘など
三環系抗うつ薬にはさまぎまな副作用がありますが、さいわいなことに、服薬開始当初が最も強く、2週間もするとかなり消腿してきます。その頃には効果も現われてきますから、抗うつ薬療法ではやはり初めのうちの辛抱が大切です。
副作用で多いのは眠気、口渇、便秘などです。
眠気は中枢神経抑制作用によるもので、鎮静、茫乎、注意・集中力低下なども起こるので、自動車の運転はひかえねばなりません。
不眠がある場合は、夜寝る前に服用することで、睡眠薬のかわりになります。
口渇、便秘などは抗コリン作用と言って、自律神経系に現われる副作用です。口渇は唾液の分泌が減るためで、飲水、チューインガムなどでしのぎます。
便秘は腸の運動が抑制されるためで、繊維食などで対処し、下剤も用います。そのほか起立性低血圧、頻脈、目のかすみ、鼻閉などもときどき見られます。注意すべきは、前立腺肥大症や緑内障のある人で、排尿障害や眼圧上昇を来すことがあるので、医師に申し出なければなりません。
副作用は初めのうちが強く、だんだん慣れて消腿して行きますが、念のため、服薬中は数 カ月ごとに血液検査や心電図検査を行って、異常の有無を確かめます。
アルコールとの相互作用、胎児や乳児への影響などについては、ペンゾジアゼピン系抗不安薬と同様のことが言えます。
飲酒はひかえ、妊娠・授乳中は服用しないようにすべきです。
副作用でペンゾジアゼピンと異なる点は、抗うつ築には依存性がないことです。
この点は抗うつ薬の長所と言えます。長期連用しても依存が形成されず、退薬症状も出にくいということです。
しかしやはり服薬を急に中断することは避け、漸減すべきです。