6. この病気ではどのような症状がおきますか
門脈の圧が上昇すると、門脈血の一部が肝臓に向かわずに他の方向に逃げるようになります。
このようにしてできた新しい血液の流通経路を側副血行路と総称します。この側副血行路のために、脾臓が大きくなったり、腹壁の静脈が怒張したり、食道や胃に静脈瘤ができたり、腹水がたまったりします。
脾臓が大きくなると脾機能亢進症という状態になり、貧血をきたすようになります。
また、静脈瘤の圧が上昇すると、静脈の血管がその圧に耐えきれなくなり、破裂・出血してしまい、吐血・下血等の症状が出ます。
Budd-Chiari症候群の主な症状として腹水、下腿浮腫・下肢静脈瘤、腹壁静脈怒張、門脈圧亢進症状としての食道静脈瘤・脾腫・貧血等があります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
Budd-Chiari症候群では、肝静脈や肝部下大静脈の閉塞ないし狭窄による症状と、門脈圧亢進症による症状が治療の対象となります。
静脈の閉塞ないし狭窄に対して
諸検査で血栓が確認されれば、血栓を予防したり、溶解させるために抗凝固療法を行います。
また、その病態に応じて、狭窄部のバルーンカテーテルによる狭窄部拡張術や、あるいは、閉塞・狭窄を直接解除するような手術を選択します。
門脈圧亢進症に対して
静脈瘤が出血した際には緊急の処置が必要です。
放置すると出血のためショックとなり、場合によっては生命が危険にさらされる可能性があります。
このような場合は直ちに最寄りの救急病院を受診し、点滴・輸血・静脈瘤に対する専門的止血処置等を受けなければなりません。
静脈瘤に対する止血処置
薬物療法
バルーンタンポナーデ法
内視鏡的治療:硬化療法、結紮療法
手術療法:食道離断術
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
Budd-Chiari症候群は症状の出現の仕方により、急性型と慢性型に分けられます。
急性型の症状は重篤で、腹痛、嘔吐、急速な肝臓の腫大、腹水等で発症し、多くが1ヶ月以内に死亡します。
しかし、この型は本邦では極めて少なく、大部分は慢性型の患者さんで占められております。
慢性型は多くの場合無症状で経過し、次第に下腿浮腫、腹水、腹壁静脈怒張等を認めます。
このような場合、食道胃静脈瘤からの出血が十分にコントロールされれば経過は良好であります。