・5. この病気は遺伝するのですか
常染色体優性の遺伝性疾患です。
両親のいずれかにこの病気があれば、子供の半数はこの病気になります。
一方で、家族歴がない方も半数以上おられます。
これらの方は、個人の発生過程でMerlin遺伝子に新たに異常が生じたと考えられます。
これらの方の両親のMerlin遺伝子には異常が無く、従って、これらの方の兄弟姉妹には神経線維腫症Ⅱ型は遺伝しません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
この病気では、各種の中枢神経腫瘍が生じます。
最も多い腫瘍は神経鞘腫で、聴神経鞘腫はほとんどの方に、脊髄神経鞘腫も多くの方に見られ、三叉神経鞘腫もしばしば伴います。
また、髄膜腫は約半数の方に合併し、頭蓋内や脊椎管内に多発することがしばしばです。
他に脊髄内神経膠腫も伴うことがあります。また、皮下や皮内の神経鞘腫も合併することがあります。
従って、最も多い症状は聴神経鞘腫による症状です。これには、難聴・めまい・ふらつき・耳鳴などがあります。
次いで多いのは脊髄神経鞘腫の症状で、これには手足のしびれ・知覚低下・脱力などがあります。
また、三叉神経鞘腫の症状として顔面のしびれや知覚低下もおこります。
その他、痙攣や半身麻痺、頭痛を伴うことや、若年性白内障のため視力障害を伴うこともあります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
この病気に伴う腫瘍はほとんどが良性腫瘍ですが、腫瘍による症状が出現したら、手術による摘出が必要です。
最も問題になるのは聴神経鞘腫の治療です。聴神経鞘腫を摘出せずに経過を見ると、いずれ聴力はなくなり(何年も変らず経過することもありますが)、腫瘍が大きくなると生命の危険があります。
しかし、手術して腫瘍を摘出すると、多くの場合聴力はなくなり、顔面神経麻痺を合併することもあります。
腫瘍が小さい内に手術すれば、術後顔面神経麻痺の可能性は低く聴力温存の可能性もありますが、無症状の聴神経鞘腫を手術すべきかどうかは経過をよく見て決める必要があります。
腫瘍の成長が明らかな場合や、聴力が低下した場合には、治療が必要でしょう。
外科手術の他に、ガンマーナイフなどの放射線手術も小さな腫瘍には有効で、多くの場合腫瘍の成長をコントロールすることができます。ただし、聴力の温存率は高くありません。