アトピー性皮膚炎の発症機序、環境因子 | 化学物質過敏症 runのブログ

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1)発症機序

アトピー性皮膚炎は遺伝的体質と環境因子が絡み合って発症し,さらに人間の複雑な心理を反映した奇妙な疾患である。遺伝的アレルギー体質としては正常人ではほとんど起こさない程度のごく微量の抗原(食物、家塵、ダニなど)により即時型アレルギー反応(特異IgE抗体が産生される)を生じ、同時に遅延型アレルギー(抗原と抗体(感作リンパ球)が48時間後に反応する)によって皮膚炎が生じる。

血清検査で乳児期には食物に対するIgE抗体が高率にみられるが成長とともに消失し、ダニアレルギーが主体となる。食物アレルゲン(卵など)を食べると症状が悪化し、食物アレルゲンを避けると症状が改善する場合もあるが、除去食治療の効果がはっきりしないケースが多い。

アトピー性皮膚炎はこれらのアレルギー機序にドライスキンによるバリア機能低下が加わり痒みを増してくる。すなわちドライスキンに代表されるアトピー素因(交感神経の過敏性とそれに伴う発汗障害、皮脂分泌低下ないし皮脂成分の変化、アルカリ中和能低下など)を持つ患者は、いろいろな環境因子に過敏となり痒くなる(掻痒閾値が低下する)。掻きこわすことにより皮膚バリア機能が低下し悪循環となって皮膚炎が悪化する。

アトピー性皮膚炎では種々の環境因子が免疫学的側面(Th1/Th2のアンバランス)や遅延型反応に関与し、皮膚バリア機能低下が増悪因子となる。さらにストレスなど心因反応も加わり複雑な機序で皮膚炎が発症する。

2)環境因子

私は以前夏に皮膚炎が悪化した環境因子を調べたことがある。顔面潮紅型のグループと、顔には発疹がないグループに分けて調査した。それによると高温多湿、粉塵、電磁波を含む化学物質過敏など職場の環境因子が関係し、発汗,ストレス、化粧品、不規則な生活なども誘因となった。またイヌ、ネコなど動物の毛に触れると痒みを増す。発汗や日光刺激によっても皮膚炎が悪化することがわかった。この表の中で多かったストレスと化学物質について考察する。

ストレス:成人型アトピー性皮膚炎は顔面のびまん性潮紅と湿潤性紅班が特徴で、アレルギー病変だけでは説明できない社会的要因(受験勉強、会社での人間関係などのストレス)が加わり、社会人になってから皮膚炎が悪化する。受験生では高校、大学受験前に悪化し、入学後は精神的に落ち着いて皮膚炎が改善される。東京在住の人が田舎に引っ越してから治癒した人もいる。精神的落ち着きが皮疹の改善に役立つ。

化学物質:コンピューターソフトを作る会社に入社した患者は電磁波にさらされてから顔面が紅くなった。量販店で働いていた患者は、ダンボールを開けるとプラスチックやビニールのにおいが鼻につき、痒みを感じた。ある大学生は外出が多くなり、部屋に閉じこもらなくなってから症状が軽くなった。ダニやほこりも影響するが、換気の悪い部屋で電磁波に曝されると皮膚炎が悪化する。アトピー性皮膚炎の顔面潮紅型の一部は化学物質による接触皮膚炎であろう。


アトピー性皮膚炎

原因 顔面 無し 総計
イヌの毛 1 1
ストレス 16 4 20
ネコの毛 6 1 7
パーマ  1        1  
ヒゲソリ 1        1
プール  1   3    4
ほこり  3        3
温泉   1        1
化学物質 10  2   12
機械油  2        2
空気、水 1        1
睡眠不足 2        2
切削油  1        1
掻きこわし1        1
日焼け  3        3
農薬   1        1
発汗   14  4   18
不規則 12  4   16
な生活    
不明   1   1    2
部活   1        1
薬品   1        1
総計  85   24  109