wikipediaより
クロロホルム (chloroform) は化学式 CHCl3 で表されるハロゲン化アルキルの一種である。IUPAC名はトリクロロメタン (trichloromethane) であり、トリハロメタンに分類される。広範囲で溶媒や溶剤として利用されている。
合成 [編集]
工業的には塩素とクロロメタン、もしくはメタンとを400-500℃で加熱することで得られている。この温度ではフリーラジカルハロゲン化反応が起き、メタンやクロロメタンが徐々に塩素化された化合物へと変換される。
最終的にはクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素という4種類のクロロメタン類が得られる。これらの混合物は蒸留により分離される。
最初に工業化された合成法は、アセトンもしくはエタノールと、過塩素酸ナトリウムもしくは過塩素酸カルシウムとを反応させるというものであった。アセトンを用いた場合はクロロホルムと酢酸ナトリウムや酢酸カルシウム、エタノールを用いた場合はギ酸ナトリウムやギ酸カルシウムとの混合物が合成される。これらの混合物は蒸留により分離された。この反応はハロホルム反応として知られており、現在でもブロモホルムやヨードホルムを合成する際に用いられる合成法である。
重水素化されたクロロホルムは重水素化された水酸化ナトリウムと抱水クロラールとの反応により合成されるが、アルデヒドの水素原子のいくらかが重クロロホルム中に混入してしまうことがある。高い同位体純度を持つものはトリクロロアセトフェノンから合成される。
毒性 [編集]
中枢神経に作用するため、その特性を逆に利用して麻酔剤として利用されてきた。しかし大量に吸入すると血圧や呼吸、心拍の低下を引き起こし、重篤な場合は死に至る。また呼吸器、肝臓、腎臓に影響を与えることが確認されており、発がん性も疑われている。IARCの発がん性評価ではグループ2Bに分類されている。マウスなどの動物実験によって変異原性が疑われている。また、ラットを用いた実験では、胎児毒性、発達毒性が見られた。しかしヒトの生殖に対してどのような影響を与えるのかは知られていない。
歯磨き粉や咳止めシロップ、軟膏や他の薬剤に用いられたこともあったが、アメリカ合衆国では1976年に利用が中止された。
不燃性であるが前述のように強塩基や強酸化剤、マグネシウムや亜鉛といった金属類とは反応するため、溶媒として用いる際には注意が必要である。
これらの問題のため、研究室ではドラフト内で利用することが望ましい。なお毒性と厳しい排出規制、およびグリーンケミストリーの観点から極力使用しないよう推し進められており、より安全なジクロロメタンや、より環境負荷の小さい溶媒への転換が行われている。
日本では毒物及び劇物取締法の医薬用外劇物に指定、労働安全衛生法の第一種有機溶剤に指定されるなどの規制を受けている。