3.アトピー素因と化学物質過敏
化学物質過敏症というのは大部分の人ではほとんど問題にならないが、例えばアトピー素因を持つ患者では顔面にかぶれ様の症状が出やすく、難治性のこともあり患者を悩ますことになる。
そして、患者自身も化学物質によるとは考えてもみなかったことで、今までどうして皮膚炎が生じたのか理解出来ないことが多い。
医師としてもいろいろな具体例をあげて化学物質過敏を理解してもらう必要がある。
新築,リフォーム,転居などがきっかけで,アトピー性皮膚炎が増悪する例が少なくなく、原因と思われる化学物質に触れないと皮膚症状もかなりよくなってくる。
4.環境ホルモン
ダイオキシンなどの環境ホルモンもアトピー素因の人にいろいろの影響を及ぼす可能性がある。
化学物質や環境ホルモンなどの環境汚染により鼻,眼,気管支粘膜のアレルギー疾患が増加し,アトピー性皮膚炎の重症化や成人型アトピー性皮膚炎も増えたのではないか。
環境ホルモンが胎児の脳に障害を与えることは証明されており、異常な数にのぼる登校拒否,学級崩壊,家庭内暴力,いじめ,少年犯罪の増加なども環境ホルモンが誘因とは考えられないだろうか。開放的だった昔の住まい,そして自然の素材に囲まれて生活していた時代には,アトピーだの化学物質過敏症だのとわけのわからぬ病気になる心配はなかった。
5.おわりに
今後医療従事者は患者さんを診察する際、いろいろな角度から病気を診断し、治療する必要がある。アトピー性皮膚炎の診断、治療も同様で、難治性といわれる顔面潮紅型についても医師と患者の信頼関係を深めつつ、化学物質過敏などの増悪因子見つけ出すよう努力して治療したいと思う。