環境ホルモンの疑いのある物質 wikipediaより
アトラジン 生産中 除草剤
アトラジン(Atrazine, 2-chloro-4-(ethylamine)-6-(isopropylamine)-s-triazine)はs-トリアジン環を持つ有機化合物。欧州連合では使用が禁じられているが、世界で最も多く使われる除草剤の一つ。
「アトラジン」の名称以外にも商品名で呼ばれることも多い。
毒性と使用規制
アメリカのカリフォルニア大学デービス校の教員などが作る「公開毒物学ネットワーク」(Extension Toxicology Network)[10]によると、アトラジンの経口毒性(LD50)は、ラットで3090 mg/kg、マウスで1750 mg/kg、ウサギで750 mg/kg、ハムスターで1000 mg/kgである。
1997年のアメリカ合衆国のアトラジン使用量。濃いところほど、面積あたりの使用量が多い。
アトラジンは地下水を汚染するとして、欧州連合では2004年に禁止された。
アメリカ合衆国ではアトラジンは使用規制はあるが禁止はされておらず、広範囲に使われる除草剤の一つで、2003年の年間使用量は3万4千トンである。
世界でも多く利用されている除草剤であり、世界80ヶ国で使用されている。
両生類への影響
アトラジンは両生類に対し、いわゆる催奇形物質(英語)として作用することがあるとの研究が行われている。
主に研究に取り組んでいるのはカリフォルニア大学のタイロン・ヘイズである。一方、アトラジンの主要メーカーの一つであるスイスの農業会社シンジェンタ(英語)はこれを否定する見解を発表している。
カリフォルニア大学のヘイズは2000年、アトラジンがアフリカツメガエルのオスを雌雄同体にする作用があると述べている。
さらに2002年10月、科学雑誌ネイチャーに、アトラジンがヒョウガエル(英語)のオスに対して低濃度でも脱オス化を起こさせたとする発表を行った。
一方、スイスの農業会社シンジェンタ(英語)は、いくつかの研究結果をまとめ、ヘイズらの実験結果を再現することはできていないと発表している。
ヘイズはこれに対し、アトラジンが雌雄同体現象を引き起こしたとは言えない、とする論文のほとんどにシンジェンタが援助を行っているとの発表を行っている。
アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)とその諮問機関である科学諮問委員会(Scientific Advisory Panel, SAP)は、ヘイズの論文も参照した上で、2000年以前に出されたデータからアトラジンの環境に対する影響を評価するのは不可能であり、この問題についてさらなる研究が必要であると述べた。
EPAからの要望に応じて、シンジェンタは優良試験所規範に基づいた方法で、EPAやドイツの監督当局の監修を受けた上での2つの調査を行っている。
EPAは2006年、トリアジンが合衆国民の幼児や子供に危害を与えることは無いだろう、と結論した。
EPAは2007年にも、アトラジンが両生類の生殖腺発育に悪い影響を与えることは無いことが研究機関の調査により判明した、との報告を行っている。
一方2008年、タフツ大学の準教授ケリー・マクローリンは、生命の初期段階においてアトラジンに晒されたカエルが、オタマジャクシとなってから心臓に奇形を生じ、腎臓と消化器系を損なったとする報告を行っている。
これは異所性のプログラム細胞死によるものと推定されたが、メカニズムを特定するには至らなかった。
また、たとえ合衆国基準を満たす使い方であっても、人に先天的欠損症や低出生体重児、月経不順などの原因となるとする研究もある。
2009年10月、EPAはこの研究結果を受け、アトラジンの安全性を再評価することを決めている。
2010年3月、カリフォルニア大学のタイロン・ヘイズは、アトラジンがカエルを激減させているとの論文を発表している