結論:
Ⅰ.リスク調査研究: 5編の文献について精査を行った結果、現時点では、ヒトに対する内分泌かく乱作用が確認された事例はないことがわかった。
低用量域のホルモン様作用の問題は内分泌かく乱性を考察する上での中心的課題であるが、現時点で入手できる科学的知見からは、低用量域における内分泌かく乱作用を直ちに断定することには疑問があると結論付けられた。
今後、DES陽性対照が再現性をもって陽性反応を示す試験系の確立とそのための背景データベースの構築や統計解析手法の検討、及びホメオスタシス反応の寄与を確認する遺伝子発現解析などを含む対応するメカニズムについて引き続き検討する。
また、Ⅱ.基盤研究として、内分泌かく乱化学物質の影響メカニズムの可能性として指摘されている諸点のうち、解明の困難が集中し、問題の中心課題ともなっている、いわゆる“高次生命系"の挙動に焦点をあて、①内分泌系・②免疫系・③神経系などの高次生命系ネットワーク各々に対する影響について作用機転の可能性を明らかにすることを目的として検討を進めてきた。
また、これら3つの系相互の連携を司るシグナル伝達系を解析する立場から、④核内レセプターとその共役転写因子、⑤エストロジェン受容体とセカンドメッセンジャーの相互作用、⑥ステロイド代謝活性機構についても併行して検討を進めてきた。個別的に見ると、発生・生殖系では、ステージ特異的に部位を特定しつつ投与する方法を確立し、mRNAの発現を観察する系を作成し、技術的な発展としてキメラ解析に好材料の鳥類を用い解析するなど新しい工夫も進んだ。
免疫系では、種々の指標が様々に変動し評価が困難であったが、比較的微量のDESでも慢性投与では、胸腺への影響が明らかであった。ケモカインMCP-1の産生に反応するエストロジェン応答遺伝子としてSAGE法で得られたwisp-2遺伝子の役割の解明は普遍的な反応系樹立への可能性を切り開いた。神経系では、神経幹細胞への影響を観察し、このものの分化に伴う遺伝子発現を検出する系が樹立されつつある。核内レセプターでは、ERαの応答特異性を明らかにした点が注目された。
精製・クローニングされたp68は、RNAヘリケースの1種であり、ERα特異的であることが判明した。以上により、これまでの研究において、内分泌系をはじめとする高次系への内分泌かく乱物質の影響が、受容体原性の応答系であるのみならず、それらのシグナル伝達が正負様々に修飾する相互作用をもち、しかもこれを構成する分子の中に未知のものが少なくないという事実が明らかになってきた。 今後は、これまで進めてきた高次生命系を中心とした生体影響研究の側からの能動的な基盤研究での低用量影響の実態を平行して推進することにより、その可能性の如何と背景機構を明らかにする。
低用量効果が試験管内分子反応としてその実態が種々追認されているのに対して、ほとんどの個体レベル反応でそうした結果が見られない事実に鑑みて、これらの現象を引き起こす背景と実態的な障害の如何の追求についてもあわせて検討を行う。
runより;いきなり難しい内容ですが化学物質過敏症が自律神経の病気だけでなく内分泌かく乱作用と免疫が関わっていると言う論文です
さて、1のほうにナゼURLがあるかというとPDFファイルがたくさんありすべて
jpegなので興味を持った方だけ読んでという意味です
膨大な研究データで鼻血が出そうですが・・・
厚生労働科学研究成果データベースよりシリーズは大抵こんな感じです
ヤレヤレだぜ・・・(-。-;)