厚生労働科学研究成果データベースよりシックハウス症候群の診断・治療法及び具体的対応方策に関する研究
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do
研究目的:
シックハウス症候群について、患者や一般医療機関での理解度が十分でなく適切な診療を受けにくいとの指摘があることから、診断・治療法及び具体的対応方策に関する検討を行った。
研究方法:
(1)シックハウス症候群の概念整理(2)機序未解明なシックハウス症候群の病態研究(3)環境対策の3点より本研究を行った。
結果と考察:
(1)中毒症状が出現した1型、化学物質曝露の可能性が大きい2型、化学物質曝露は考えにくく、心理・精神的関与が考えられる3型、アレルギー疾患等の発症・増悪と考えられる4型に概念整理ができた。(2)機序未解明な病態研究として、トルエン低濃度曝露時のfMRIによる脳画像解析により、シグナル増強部位の増加が観察された。これより高い濃度のトルエン曝露では、左側頭葉内側面や両側視床下部の活性化が示唆された。
患者に小型体動計を着用したところ、睡眠中に不規則な体動が断続的に現れる特徴が示された。追従性眼球運動の検査で、階段状の波形の混入が多く見られ、患者群の値は健常者群より各周波数で高かった。
家兎瞳孔括約筋はフィールド刺激により、早い成分の収縮とゆっくりした成分の収縮の2相性を示した。患者の末梢血液中リンパ球のneuropathy target esterase(NTE)活性は健常対照より有意に高く、NTE遺伝子のエクソン2における非翻訳領域内において有意差を示すSNPを見出した。
アルデヒド代謝に関与するALDH2多型と疫学的に化学物質過敏症を診断するQEESIスコアの関連性は認められなかった。
(3)シックハウス症候群の患者が発生した住宅の室内環境有害物質の測定を継続的に行うこと、また、資料収集は重要であり、化学物質削減住環境にて実証実験施設の実験評価の検討が必要であった。室内環境有害物質の測定・分析の定量評価精度は、各メーカーの測定精度に誤差要因があった。
結論:
1-4型に概念整理ができた。機序未解明なシックハウス症候群の病態解明を図るため、脳画像、体動、化学物質不耐性の遺伝子解析を行うことは意義があった。環境対策として、シックハウス症候群の発生した住宅の室内環境有害物質の測定を継続的に行い環境対策マニュアルを作成し、実践的対応として化学物質削減住環境を提唱し、実証実験施設の啓蒙活動と実験評価法の検討が急務である。室内環境有害物質の測定・分析の定量評価精度は、各メーカーの測定精度に誤差要因があるので認識して測定値の評価を行うことが重要である。
runより:細かい研究成果はpdfファイルになります。興味ある方は読んでみてください