1.2 病態・症候
1) 化学物質過敏症広義の化学物質過敏症の病態・症候は非常に多様であり、前述の「室内空気質健康影響研究会」の報告書にあっては、『粘膜刺激症状(結膜炎、鼻炎、咽頭炎)、皮膚炎、気管支炎、喘息、循環器症状(動悸、不整脈)消化器症状(胃腸症状)、自律神経障害(異常発汗)、精神症状(不眠、不安、うつ状態、記憶困難、集中困難、価値観や認識の変化)、中枢神経障害(痙攣)、頭痛、発熱、疲労感等が同時にもしくは交互に出現する』としている。
厚生省(現厚生労働省)が設置した厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班は、1997年8月に「化学物質過敏症パンフレット」を作成し、表-1にす広義の化学物質過敏症の診断基準を提示しており、その中で、化学物質過敏症の主症状(4種類)と副症状(8種類)を示している。
この主症状のうちの2項目と副症状のうちの4項目が陽性の場合と、主症状のうちの1項目と副症状のうちの6項目が陽性でかつ検査所見のうちの2項目が該当した場合、の2つのケースについて、化学物質過敏症と診断される、として
いる。
なお、現時点(平成19年3月)においては、健康保険による診療保険請求の傷病名として認められているのは『シックハウス症候群』注3)のみであり、『化学物質過敏症』は認められていない(注:保険適用されやすくなりました。)
2) シックハウス症候群
シックハウス症候群の病態・症候は、その定義が、広義の化学物質過敏症と同様に確立されていないため、前述の「室内空気質健康影響研究会」の報告書にあっては、「①皮膚や眼、咽頭、気道などの皮膚・粘膜刺激症状及び、②全身倦怠感、めまい、頭痛・頭重などの不定愁訴」とした表現に留めている。
1.3 原因
1)発症因子広義の化学物質過敏症の発生機序については、「化学物質過敏症について-総説」(平成16年2月、加藤貴彦)によると、ホルムアルデヒド、有機溶剤(トルエン、キシレン等)、有機リンその他の化学物質が原因となり、化学物質の曝露による自律神経系や免疫系等への作用が推測されているものの、今なお正確な発生機序は不明とされている。
一方、シックハウス症候群について、「室内空気質と健康影響 解説シックハウス症候群」(平成16年2月 室内空気質健康影響研究会)にあっては、発症関連因子の化学物質について、「従来、建材や内装材などから放散するホルムアルデヒドや、トルエンをはじめとする揮発性有機化合物の吸入が、シックハウス症候群の主な発症関連因子の一つであると指摘されてきた。
……(中略)……クロルピリホスについては、これを使用するしろあり駆除従事者の健康影響を示唆する報告がなされており、気密性の高い住宅でこれを使用し比較的高濃度の曝露が持続した場合、特に感受性の高い居住者に健康影響が生じる可能性は否定できない」としている。
また、化学物質以外の環境因子の関与については、「皮膚・粘膜刺激症状や不定愁訴を誘発する要因は必ずしも化学物質だけではない。皮膚・粘膜刺激症状は、……(中略)……温度、湿度及び気流等の温熱環境因子が増悪因子となり、……(中略)……不定愁訴は、各種疾患により生じるほか、温熱環境因子、生物因子(感染症)、照度、騒音及び振動等の様々な物理的環境因子、精神的ストレスなどが発症・増悪に関連る……(中略)……としている。
runより:……(中略)……は編集ではありません。元々です( ̄_ ̄ i)