1.製品名 キシレン
有害性情報
1.ヒトへの影響 1)2)3)
(1)急性毒性(ヒト)
1)吸 入
・塗料作業者がキシレンを主成分とする蒸気(推定キシレン濃度10,000 ppm)を吸入し、3人のうち1人が死亡した。但し、キシレンが原因であるとは特定されていない。生存した2人には、神経障害があったが回復した。
・最高100 ppm以上の暴露と推定される労働者の206名の調査によると
神経衰弱様の症状及び自律神経障害 18%
血管神経障害 14%
であり、勤続5年以下の群に比して、5年以上の群では2~4倍の高率であった。2)
・その他労働者曝露により、吐き気、集中力の欠如、短期記憶の混乱、平衡感覚の喪失等の症状が報告されているが、いずれも、キシレンが原因であるとは特定されていない。
・ボランティアの実験等により次の報告がある。
混合キシレン 200 ppm 3~5分で鼻、喉に刺激あり
p-キシレン 100 ppm 1~7.5h/日×5日 女性 頭痛、目まいあり
m-キシレン TWA200 ppm 3.67h/日×4日 肺、心拍、血圧等に影響なし
2)経 口
・大量のキシレン(量不明)を飲み、呼吸不能により死亡した。
3)経 皮
・労働者曝露が数多く報告されているが、吸入の影響、共存他物質の影響が不明であり、経皮の影響は特定されていない。
・皮膚刺激、皮膚乾燥等の報告がある。
・人の末梢血リンパ球培養液にキシレン1.52 mg/mlを加えた実験で、染色体異常の増加、姉妹染色分体交換率の増加は認められなかった。4)
2.動物への影響(1)急性毒性 1)
1)急性毒性値
経路 動物 値
混合キシレン o-キシレン m-キシレン p-キシレン
吸入 ラット LC50 6,700 ppm
×4hr1)
ラット LCLo 6,125 ppm
×12hr1) 8,000 ppm
×4hr2) 4,912 ppm
×24hr1)
マウス LC50 3,523(male) 4,595 ppm
×6hr 5,267 ppm
×6hr 3,907 ppm
×6hr
経口 ラット LC50 8,640 mg/kg 4,400 mg/kg
(10/17) 6,661 mg/kg2) 5,000 mg/kg2)
ラット LCLo 5,000 mg/kg2)
皮下 ラット LCLo 2,500 mg/kg2) 5,000 mg/kg2) 5,000 mg/kg2)
腹腔 ラット LDLo 2,000 mg/kg2) 1,500 mg/kg2) 2,000 mg/kg2) 2,000 mg/kg2)
2)暴露濃度と症状 1)
1,500 ppm~2,000 ppm×4hr ラット 血清酵素活性上昇
2,800 ppm×2hr~3.5hr ラット 疲癒、運動失調
6,300 ppm~6,700 ppm×4hr ラット、マウス 中枢神経抑
(2)慢性毒性
1)濃度・暴露日数と症状4)
濃度(ppm) 暴露条件 動 物 症 状
77 24 hr/日×127日 ラット、イヌ、モルモット、サル 血液像に異常認めず
300 6 hr/日× 14日 ラット 肝・腎のモノオキシナーゼ活性上昇
300 6 hr/日×126日 ラット 毛づくろい行動の低下、運動量増加
690 8 hr/日×130日 ウサギ 糸球体腎炎
770 8 hr/日× 30日 ラット、イヌ、モルモット、サル 血液像に異常認めず
1150 8 hr/日× 50日 ウサギ 血液像に変化、腎障害あり