昨日書きましたように今日は、フルトヴェングラーのチャイコフスキー交響曲第5番を。これも第4番と同じでこれが唯一の遺された録音、のようです。1952年6月6日、イタリア、トリノで、トリノ・イタリア放送交響楽団を指揮したコンサートのライヴ、放送用に録音されたものです。
ウイーン・フィルとの第4番、ベルリン・フィルとの2つの第6番「悲愴」と比べ、音質的にはかなり見劣りがしますし、オーケストラもフルトヴェングラーとの共演に慣れているウイーンやベルリンと比べると少しギクシャクしたところがあるような気もしますが、しかし音質についてはフルトヴェングラーの戦前のライヴなどでもっとひどいものもたくさん聴いていますし、このイタリアのオーケストラも「振ると面食らう」などと揶揄されるフルトヴェングラーの指揮にしっかりと食いついていく、なかなかの好演のようにも思えます。
演奏はやはりライヴのフルトヴェングラー。音量の変化もテンポの動きも幅が大きく、時に激しく、時に優しく歌い、また時には自らの心の内にささやきかけるように沈み込み、また外に向かって叫ぶように盛り上がり・・・。
私の好きなピエール・モントゥーの第5番などと比べ、こんなに振幅の大きな曲だったかと改めて驚きます。
決して模範的な演奏ではありません。
しかし。
こんな演奏を実演で聴いたとしたら、しばらくは打ちのめされたのでは無いか。
やはり、フルトヴェングラーって、凄い指揮者だな。
今更何を言っているのか、と言うようなことを思わず呟きかけてしまったのでした。
フルトヴェングラーの指揮したチャイコフスキーの交響曲第5番は、時に「フルトヴェングラーの最悪の演奏」とも言われますが、本当にそうでしょうか? 確かに音質は乾いた固い音ですが、当盤のより明瞭な音で聴けば、フルトヴェングラーのやりたいことがよくわかるはずです。いずれにせよ、フルトヴェングラーが振った唯一の第5番の記録としては非常に貴重であることは間違いありません。なお、第4楽章のカットはフルトヴェングラー独自のもので、音の欠落ではありません。また、第4楽章の471小節で思わずわき起こった拍手はカットせずに含まれています。ハイドンは編成が小さいためか、まず音が非常に豊かに捉えられていることに驚かされます (たとえば、第1楽章の冒頭では、フルトヴェングラーが音楽に合わせて息をもらしている様子がはっきりと聴きとれます) 。演奏内容もライヴらしくもの凄く熱く燃え上がっており、フルトヴェングラーとトリノ・イタリア響による最高の演奏かもしれません。 (おことわり) アセテート盤を原盤としているため、SP盤に似たノイズが混入します。特にチャイコフスキーには修復出来ないレベル変動がわずかに含まれますことをご了承下さい。 (平林 直哉)
1. チャイコフスキー : 交響曲第5番 ホ短調 Op.64
2. ハイドン : 交響曲第88番 ト長調Hob.I:88『V字』
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー (指揮)
トリノ・イタリア放送交響楽団
録音 : (1) 1952年6月6日 / Sala del Conservatorio (トリノ) 、 (2) 1952年3月3日 / Auditorium A, via Montebello (トリノ)
