芸術祭ラジオ部門合唱曲の部 その二 1964年~1968年 ラジオの役割は? | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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芸術祭で合唱曲の作曲コンクールが1961年になって、ラジオ部門に加えられたというのはどういう事情だったのでしょう?


もちろん合唱曲が他のクラシック音楽の作曲部門から独立したというのは国内の合唱のレベルを上げたいという関係者の努力、働きかけがあったのだとは思います。しかし、あえてラジオ部門に加えられたのはその当時の放送の未来に関する試行錯誤の一つだったのではないか、とも思います。戦後しばらくは国民の娯楽や情報取得の主役はラジオでした。それが大きく変わったのは昭和30年代になってからです。昭和28年に登場したテレビは昭和34年「皇太子ご成婚」をきっかけに飛躍的に普及しました。その結果としてそれまでラジオが果たしていた役割の多くがテレビに取って代わられることになります。そうなるとこれからのラジオの果たすべき役割は? たぶんそんな中から出てきた色々な考えの中にラジオのコンテンツとして音楽を、と言うものがありそうならばより芸術文化に貢献して貰えるもの、学生や一般人でも親しめる合唱を薦めていこう、という文部省の考えなどがあったような気がします。

そう言った思惑どおりに進んだかどうかはなんとも言えませんが、芸術祭に出品するという事がラジオの関係者にとってある種のステイタスになったというところはあったようですし、(出品作品数は放送局の数に対してあまり多くは無かったとは思いますが、)出品する事になった局ではプロデューサーを始めとしてかなり力を入れたところが多かったようです。

 

1964年 出品作品 11   

この年は「蔵王」「旅」で無冠だった佐藤眞さんが「若人のうた」で最高賞に輝きました。また日本の合唱の歴史に残る空前の大ヒット作「水のいのち」が生まれた年でもあります。

 
芸術祭賞 NHK(第1、第2) 中沢昭二作詩 佐藤眞作曲 合唱組曲「若人のうた」
男声合唱のための組曲 『若人のうた』

 

芸術祭奨励賞 東京放送 高野喜久雄作詩 高田三郎作曲 合唱曲「水のいのち」

  
芸術祭奨励賞 NHK(第1) 北川冬彦作詩 中田喜直作曲 混声合唱のための組曲「馬の風景」

1965年 出品作品 14
芸術祭賞 NHK(第1) 三善晃作曲 合唱曲「こどもの季節ー七つのこどもの詩による」
芸術祭奨励賞 東京放送 武川寛海作詩 石井歓作曲 男声合唱曲「五つの学生の歌」
第20回芸術祭「五つの学生の歌」(放送初演)

    
芸術祭奨励賞 東京放送 阪田寛夫作詩 大中恩作曲 合唱曲「煉瓦色の街」

日日のわれらへのレクィエム「煉瓦色の街」 弘前大学混声合唱団第14回定期演奏会より


芸術祭奨励賞 NHK(第1) 伊藤海彦作詩 中田喜直作曲 合唱組曲「みえないものを」
4.考える - 女声合唱組曲「みえないものを」より


NHK・大阪(第1) 蓬莱泰三作詩 南安雄作曲 混声合唱のための組曲「日記」

 


1966年 出品作品 11
芸術祭賞 青森放送 三浦哲郎作詩 田中利光作曲 津軽の音素材による混声合唱「四季」


芸術祭奨励賞 NHK(第1) 中村千栄子作詩 大中恩作曲 女声合唱組曲「愛の風船」

女声合唱組曲「愛の風船」沈黙のしあわせ


芸術祭奨励賞 NHK(第1) 岩谷時子作詩 中田喜直作曲 合唱組曲「都会」

混声合唱とピアノのための組曲 若者たちよ

 

1967年 出品作品 6
芸術祭奨励賞 NHK(第1) 阪田寛夫作詩 小倉朗作曲 混声合唱と打楽器のための組曲「イソップ物語」 
芸術祭奨励賞 NHK・札幌(第1) 和田徹三作詩 中田喜直作曲 女声合唱とピアノのための組曲「北の歌」


この年の参加作品で、受賞は逃しましたが同じ作曲者の「水のいのち」に継ぐ大ヒット作となったのが「心の四季」でした。
NHK・名古屋(第1) 吉野弘作詩 高田三郎作曲 合唱組曲「心の四季」

「心の四季」より「1.風が」「2.水すまし」「3.流れ」


毎日放送 伊藤海彦作詩 大中恩作曲 合唱組曲「遙かなものを」

1968年 出品作品 12
芸術祭賞 東京放送 谷川俊太郎作詩 團伊玖磨作曲 混声合唱のための「ティベルティメント」
芸術祭奨励賞 NHK(第1) 高田敏子作詩 三善晃作曲 合唱組曲「五つの童画」

合唱組曲「五つの童画」 1.風見鳥  Collegium Cantorum YOKOHAMA


芸術祭奨励賞 東海ラジオ放送 伊藤海彦作詩 大中恩作曲 男声合唱とピアノのための蒸気機関車への賛歌「走れ・わが心」

 

 

今日はここまで(笑)

1969年以後はまた「芸術祭ラジオ部門合唱曲の部」その三、その四・・・と続く予定、です。

 

それでは、また。

 

 

日本の合唱史

児童合唱団、学生合唱団から市民アマチュア合唱団、プロ合唱団などが活発に活動しているように、合唱音楽は子どもから大人まで、多くの人々に親しまれている。近代から現代まで合唱が受容されてきた歴史を平明に紹介する論文と、指揮者や作曲家が合唱への想いを語るコラム、主要作品のデータ集などで構成する合唱文化への招待状。