フリッチャイ三昧 ブラームス 交響曲第2番、ダブルコンチェルト、ベートーヴェン第9他 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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今日はフェレンツ・フリッチャイの指揮した演奏の音源をいくつか続けて聴きました。

まず、この記事冒頭に掲載しましたのは1961年ザルツブルグ音楽祭でウイーン・フィルハーモニー管弦楽団と演奏したブラームス交響曲第2番と1957年にスタジオ録音したベルリン放送交響楽団とのハイドンの主題による変奏曲です。

フリッチャイの指揮するブラームスの交響曲は聴いたことがなかったのとウイーン・フィルとの録音も珍しい気がして聴き始めた演奏でしたがこれがなかなか素晴らしい演奏でした。1961年と言うとフリッチャイが演奏活動を続けていた最後の年になります。

 

「1961年9月、ベルリン・ドイツ・オペラの杮落とし公演でモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』を指揮し、その後、コダーイの『ハーリ・ヤーノシュ』などを録音した。12月にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団に客演し、ベートーヴェンの交響曲第7番ほかを指揮した。これが生涯最後の指揮となった。」(Wikipedia フェレンツ・フリッチャイ より)

 

交響曲第2番の演奏は少し速めのテンポで始まりますが、濃厚で激しい表情。テンポの揺れも多くかなり熱い演奏。ゆったりとした部分の美しい抒情から厳しく盛り上がるクライマックスまで、聞き手の心を抉り引きずるように歌い上げていきます。終楽章の熱さには思わず知らぬ間に身体が揺すられているような気がするほどでした。(途中、(たぶん指揮者の)歌う声が聞こえたような気がしたのは私の空耳でしょうか?)ウイーン・フィルの柔らかく豊かな音色もありとても聴き応えのある音楽。

 

「ハイドンの主題による変奏曲」の方は白血病を発病する前のスタジオ録音ですし手兵のベルリン放送交響楽団との演奏でもあり、とても均整のとれた録音になっています。

 

次に聴いたのは同じくブラームスのダブルコンチェルト。

 

シュナイダーハンのヴァイオリン、シュタルケルのチェロ、ベルリン放送交響楽団との演奏で、1961年にベルリンで録音されています。

 

厳しい音楽です。激しい音楽です。フリッチャイの最晩年の心境をまざまざと現しているような凄みのある演奏です。シュナイダーハンのヴァイオリンがとても美しく、それに答えるシュタルケルのチェロもこの曲にとてもあっていると思います。それにしても、やはり、凄みのある演奏です。

 

そして、そのダブルコンチェルトとカップリングされていたのが、ベートーヴェンのトリプルコンチェルト。

 

こちらは、ゲサ・アンダのピアノ、ピエール・フルニエがチェロ、そしてヴァイオリンがダブルコンチェルトと同じくシュナイダーハン。こちらもかなり豪華なソリスト陣です。

 

こちらもとてもニュアンス豊かな演奏。ブラームスよりはゆったりとした明るさも感じられます。三人のソリストがやはりとても見事。けっして暗い曲でも無く重たい曲でも無いと思うのですがチェロとヴァイオリン、ピアノの絡み、オーケストラの響きを聴いているうちに涙が出そうになり困ってしまいました。美しい演奏でした。

 

そう言えば今日は何でフリッチャイの演奏ばかり聴いていたんだったっけ・・・。

 

あっ、そうだ。第9だ。

 

12月だし第9でも聴こうかな、などと考えて、そう言えばフリッチャイの第9、と思いライヴラリを見るとこれが見当たらなかったのです。おかしいな。音源持っていたはずなのに、などと思いながらネットをあれこれ見ているうちに、何かのレビューで誰かが、「内的燃焼度が低くよく聴くと平板な表情の演奏に終わっています。この指揮者でなければという第9でもないです。こう云ってはなんですが、この程度の第9なら今はありすぎるぐらいあります。」と書いているのを見て・・・

 

あれっ。そんな演奏だったかな。暫く聴いていないけど私はとても気に入っていたはずだけど。それほど厳しく否定される演奏だった? などと思い、Amazon Music Unlimitedで音源を探して聴き始めたのです。

 

イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)/モーリン・フォレスター(アルト)
エルンスト・ヘフリガー(テノール)/ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
聖ヘトヴィヒ大聖堂聖歌隊 
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
フェレンツ・フリッチャイ(指揮)

 

とてもきびきびとして均整がとれ、それでいてスケール感も充分に感じられる演奏です。「内的燃焼度が低く」って、一体どれだけのものを期待されているんだろう?(笑) 確かに素晴らしい演奏はたくさんあるでしょう。しかし、これだけの演奏、「ありすぎ」て困ることは無いでしょう。

 

そして、この演奏にはもう一つ特筆すべき事があります。バリトンソロがあのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ。フィッシャー=ディースカウが生涯にたった一度だけ録音した第9交響曲、なのです。見事に柔らかく美しい声。明確な発音。このソロを第9らしくない、と否定する人もいるようですが、私は素晴らしい演奏だと思いました。こう言う表現があって良いじゃ無いか、と。ネットではディースカウがこの録音の後第9を歌わなかったのは、自分には合わないと思ったからだろう、と書いている人がいましたが私は少し違うのでは無いかと思っています。この録音の10年ほど前、まだ学生だったディースカウを見いだしデビューの機会を与えたのがフリッチャイでした。20世紀最大の歌手(いや、歴史上最高の、と言い換えてもおかしくないかも知れませんね。)フィッシャー=ディースカウを世に出した恩人がフェレンツ・フリッチャイ。そしてディースカウ自身そう考えていたと思われます。だから、この録音以後第9を歌わなかったのはフェレンツ・フリッチャイへの思いを込めてなのだ、と私は思ってしまうのです。

 

ディースカウ以外のソロも好演。ヘフリガーの端正なテノールも私は好きです。

 

それにしても、この録音時フリッチャイはまだ40代前半・・・。本当に病気は憎い。

 

 

Symphonie Nr.2 / Haydn-variationen / Alt-rhapsodie / Ferenc Fricsay

ウィーン・フィルとのブラームスは、指揮活動を引退する年の最後の夏の共演。ザルツブルク音楽祭で「イドメネオ」を振った後の追加公演での貴重なライヴ記録です。尚、ザルツブルクでの継続的な共演やウィーンでの単発的なオペラ公演をしていた両者は、ようやくこの年の10月にムジークフェラインでの定期に初登場することになり、その時もメインでこのブラームス2番を取り上げました。
記録して残ったザルツブルクでのこのライヴは、1960年のヴェルディ:レクイエムやコダーイの交響曲と並んで、フリッチャイの残した記念碑的な演奏のひとつです。ライヴの高揚感と緻密な指揮、そして何よりウィーン・フィルの芳醇な響きが一体となって、稀に見る名演奏が繰り広げられています。このブラームス2番は、元々1994年に初めて日の目を見た録音でした。発売当時は相当の驚きと興奮を持って迎えられたことは記憶に新しいです。スタジオ録音である1957年録音の2曲をカップリング。

 

 

ベートーヴェン:ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲

オリジナル・マスター・テープの録音データに基づき、リマスタリングをした`ドイツ・グラモフォン・オリジナルス`シリーズ(全8タイトル)。フェレンツ・フリッチャイ指揮、ピアニスト、ゲザ・アンダ他による1960、61年録音盤。

 

 

ベートーヴェン:交響曲第9番

ソプラノ歌手、イルムガルト・ゼーフリート、テノール歌手、エルンスト・ヘフリガー他の歌唱、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による1957、1958年録音盤。