ネヴィル・マリナー シューベルト交響曲全集 完成された「未完成」? 聴き応えのある全集です | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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ネヴィル・マリナーのシューベルトの交響曲全集はどんな感じなんだろうと興味を覚え、YouTubeを検索してみるといくつかの動画が出てきました。

まず、眼に付いたのが第7番と第10番。ここでの表記は第8番が「未完成」で、第9番が所謂「ザ・グレイト」のようですから、第7番と第10番ってどんな曲だろう? まずはどちらかを聴いてみようか、と思った時、その前にふと目についたのが第8番の動画でした。あれっ、これ4楽章有る・・・。動画のタイトルを見ると「SCHUBERT: "SYMPHONY Nº 8" - COMPLETE - Reconstructed by Brian Newbould」となっています。「ブライアン・ニューボールド補完による完成版」と言う事になるのでしょうか。あれこれとネットで調べてみると、この全集の特徴は「従来の第1~6番、《未完成》《グレート》に、冒頭以外はスケッチのみが残されていた《第7番》、3つの楽章がピアノ・スケッチで存在する《第10番》の他、2曲分の断章のオーケストレーション、そして《未完成》に至っては「完成された」ヴァージョンが収録されたイギリスの音楽学者ブライアン・ニューボールド監修による初の全集版」なのだそうです。

 

1. Allegro moderato
2. Andante com moto
3. Scherzo (Allegro)
    (Completed and orchestrated by BRIAN NEWBOULD)
4. Allegro molto moderato
    (extrait de "Rosamunde")

 

まずはやはりこの完成された(?)「未完成」から聴いてみよう、と言う事で聴き始めました。

マリナー/ASMF(アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ)らしいきびきびした演奏。歯切れの良いアンサンブルは好感が持てます。第1楽章、第2楽章といかにもシューベルトの「未完成」らしい演奏。様々な思いを抱えた若々しいシューベルトの面影が目に見えるようです。そしていよいよ第3楽章・・・

意外なほど明るく元気の良い音楽。まあ、スケルツォだから・・・。悪くはない曲だと思いつつ、でもあの第2楽章の深みに比べあっけらかんとしすぎてはいないか?なんて思ってしまう自分も確かにいます。

第4楽章はなかなか堂々とした開始から優しくチャーミングな旋律が流れシューベルトらしさも感じさせる音楽。厳しいリズムとロマンティックな歌とが交差し立派なフィナーレを作りあげています。・・・、確かに「立派なフィナーレ」ではあるのですが・・・。

 

私たちが知っている名曲「未完成」はやはり、あの2楽章で完結していたんだな。この動画を見終わった時思ったのはそんなことでした。つまらない曲でも悪い演奏でもありません。と言うよりかなりの好演だと思うのですが、やはり補完された2つの楽章は聞き慣れている「未完成」の第1楽章、第2楽章に繋げるには無理があると思いました。いくら優れた音楽学者が遺稿を研究し作風を考慮しながら完成させた曲だと言ってもあの名曲を引き継いで完結させるのはあまりに荷が重かったのでは無いかと思います。つまり、やはり「未完成」はあの2楽章で完結していたんだな、そう言うことなのだろうと。

 

そんなことを含めても、この全集なかなか聴き応えはありますし、面白い企画だとは思います。

他の未完の曲や断章の完成版もじっくり聴いてみようか、と。

聴いてどう思うかは別として聴いてみる価値は間違いなくあると思います。

 

 

こちらから、この全集全曲を聴くことができます。

 

 

シューベルト: 交響曲全集(第1番-第10番)(5CD)

全10曲+断章を含めたニューボールド監修による交響曲全集を国内盤初出以来、復刻。

イギリスの音楽学者ブライアン・ニューボールド(1936-)監修による初の全集版として話題となった、1981年から84年にかけての旧PHILIPS録音、マリナー指揮のシューベルト:交響曲全集が国内盤としては初出時以来、約30年振りに復活。従来の交響曲第1番から第6番と"未完成交響曲(第8番)"、そして"ザ・グレイト(第9番)"に加え、ニューボールド監修によりオーケストレーションされた各曲が収録された、資料としても発売当時大変貴重なセットです。加えられたのは、冒頭以外はスケッチのみが残されていた"第7番"、 3つの楽章がピアノ・スケッチで存在する"第10番"の他、2曲の"断章"のオーケストレーションとなっており、注目の"未完成"の全4楽章版は、スケッチを補筆しオーケストレーションを行った第3楽章、そして"「ロザムンデ」間奏曲第1番"を第4楽章に採用し、本来の形と思われる全4楽章形式で作成されました。