少し前に、中世ドイツのミンネゼンガーをテーマにした記事を投稿しましたが、
ドイツでミンネザング(吟遊詩と呼ばれる詩や歌)が流行し始めるより一世紀ほど前、フランスの宮廷を中心にトゥルバドゥールと呼ばれる抒情詩人達が脚光を浴びていました。
「トルバドゥール(Troubadour)は、中世のオック語抒情詩の詩人、作曲家、歌手のこと。リムーザン、ギュイエンヌ(Guyenne)、プロヴァンス、さらに、カタルーニャ、アラゴン王国、ガリシア、イタリアで活躍した。女性のトルバドゥールはトロバイリッツ(Trobairitz)と呼ばれる。
トルバドゥールは、12世紀後半になると北フランスのトルヴェール(trouvères)と、ドイツ側でミンネザングを歌うミンネゼンガーとして、拡散した。彼らの詩の多くは、騎士道と宮廷の愛をテーマにしたものであった。特に、結婚した恋人を想う真実の愛の歌が有名である。これらの中世叙情歌も騎士階級の没落とともに衰退することになった。」(Wikipedia トルバドゥール より)
「中世ヨーロッパの、特にフランスで、12世紀ごろに盛んだった、宮廷の貴族たちの恋愛を叙情詩にうたいあげた詩人たち。貴族(騎士)自身であることが普通だった。11世紀ごろに南フランスに生まれたトゥルバドゥールや、北フランスのトゥルヴェール、そしてやや遅れて生まれたドイツのミンネジンガーなどが一般に吟遊詩人と言われている。」(吟遊詩人/トゥルバドゥール より)
「トゥルバドゥール Trobador は、南フランス、ラングドックやプロヴァンス地方に現れ、12世紀に活躍した、「女性を高貴な存在として認め、彼女に熱烈なロマンティックな愛を捧げる」叙情詩をうたいあげた詩人たち。多くは専門の芸術家ではなく、貴族(騎士)であった。彼らは宮廷や貴族館で騎士たちの恋愛沙汰を題材に、即興の詩をおもしろおかしく、ときにもの悲しく歌い上げ、後の文学の一つの源流となった。」(吟遊詩人/トゥルバドゥール トルバドゥール より)
トゥルバドゥールを吟遊詩人と日本語では呼ぶことが多いのですが、吟遊詩人と言うと、諸国を旅しながら詩曲を作り歌った人々を指します。トゥルバドゥールの多くは宮廷で詩を作ったり歌ったりしていた貴族や騎士階級の人たちで吟遊詩人という表現は必ずしも正しくないようです。吟遊詩人という言葉にふさわしい存在はジョングルールと呼ばれた人たちなのかも知れません。
「ジョングルール(仏: jongleur)は主にフランスにおける「大道芸人」の事。中世フランスに現れ、各地を遍歴して民衆文化の伝播や伝承の担い手としての役目をはたした。(中略)集団で各地を転々と遍歴するのが一般的であったようだが、エスタンピーなどの器楽演奏やシャンソンなどの歌唱、ジャグリングや簡単な手品などの余興を演じるためや、吟遊詩人のトルバドゥールやトルヴェール達に雇われてその伴奏や歌い手として宮廷に出入りする者もおり、その中の非常に優れた者は、例えばアダン・ド・ラ・アルの様にミンストレルとして宮廷に仕える者も現れた。」(Wikipedia ジョングルール より)
身分により格差の大きかった時代、詩を作ったり楽譜の読み書きをしたりすることは教育レベルの高い人たち、つまり上流階級(貴族の子弟か聖職者)に限られていた筈です。逆に器楽演奏の技術や即興演奏に長けていたのは職人階級、つまり「芸人」と呼ばれる人たちでした。ですから貴族階級のトゥルバドゥールが自ら作った歌を雇ったジョングルールの伴奏で歌ったり、書いた詩をジョングルールに即興で歌わせたりしたことはよくあったのことなのではないか、と思います。もしかするとそうしてジョングルールが即興で歌った歌をトゥルバドゥールが楽譜に記し自らの作品として遺したこともあったかも知れません。(これはあくまで想像です(笑))
今日は「トゥルバドゥールの音楽」(Music of the Troubadours)と言うアルバムを聴きました。
トゥルバドゥールの歌として伝えられる音楽が12曲収められたアルバムですが、一曲目からその独特の響きに驚かされます。西洋音楽とはとても思えない、どちらかというと中東あたりの民族音楽を彷彿とさせる発声や楽器の響き。
しかし聴き進むごとに惹きつけられる物が確かにあります。地の底から湧き上がってくるようにエネルギー感。垢抜けないゆえに強く感じるそこに生きた人々の息づかいや体臭。
これから盛り上がっていこうとする若いヨーロッパの空気がみなぎっているようです。
時にはこんな音楽も悪くないですね。
音楽史でトゥルバドゥールとは、12世紀頃に南仏で活躍、様々な身分の、恋愛をテーマにした詩人たちのことで、二千を超える詩と二百を超える旋律が残っています。詩にスポットを当ててじっくり聴かせる録音が多い中、ナクソス盤は中近東風味をふりかけてノリノリ。冒頭1からいきなりエスニックな女性ヴォーカル(歌手選択に特にこだわりました!)、6の時代の壁を忘れさせる器楽のノリには聴き手もつい体を動かしちゃう、9の大騒ぎ、一転10のシットリ、11はトゥルバドゥールの代名詞、ヴォーカルと尺八みたいな笛にワクワクしどおしの12。もっと早くこういうの知りたかったなぁ。(CD帯紹介文 より)