トスカニーニ/ニューヨークフィルのブルックナー交響曲第7番 美しく歌うカンタービレの見事さ | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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そう言えば、とふと頭をよぎったのは、以前色々なサイトをパラパラと見ていた時ちょっと眼に止まったあるディスクのことでした。

 

トスカニーニ指揮ニューヨークフィルのブルックナー交響曲第7番。

 

トスカニーニのブルックナーというのは想像もしていなかった、と言う表現も大袈裟ではないくらいで、えっ、演奏したことがあったの?、と驚いた記憶があったのです。ただAmazonやHMV等では扱っていないディスクらしく、さらに説明にかなり欠損のある録音だという記載もあったためそのまま購入することもなく、そのサイトも忘れてしまっていました。

あれを販売していたのはどこだったっけ。それ以外にも歴史的な音源が色々あったような・・・

 

急に気になりだしてまた探してみました。

 

 

「ブルックナー/交響曲第7番 ホ長調(自身による改訂版、一部欠落あり)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
トスカニーニによる、現在確認されている唯一のブルックナー録音。録音の失敗または録音ディスクの紛失・破損などで、第1楽章の末尾7小節,第2楽章3小節,第4楽章48小節が欠落。それでも全体の8割程度は録音されています。
古い録音ですが、当時のライブ録音であることを前提とすればバランスも悪くありません。」(上記サイト 商品説明 より)

 

これはなかなか興味のわく録音です。

 

相当珍しい音源のようだし、まさかYouTubeにはないよな。

等と考えながら、YouTubeの検索窓に「Toscanini Bruckner」と打ち込んでみると・・・

 

あった!

 

いくつかの動画が並んでいますが、音源はどれも同じようです。

1935.1.27、カーネギー・ホール(NY)、ライヴ録音

 

(この記事の冒頭に掲載した動画はこの画像の一番上にある物です。)

 

トスカニーニがブルックナーを演奏したのはこの演奏の他はあと一回か2回有ったような無かったような・・・。どうやらあまりはっきりとは分からないようです。(録音が残っているのはこれだけです。)

 

さっそくYouTubeで聴いてみました。

 

音は少し硬めのような気はしますが1935年のライヴ録音としてはかなり聴きやすい音だと思います。

 

トスカニーニらしくもたれないテンポ設定ですが、とても自然に流れる音楽です。戦後のベートーヴェンの演奏などと比べるとけっしてインテンポにこだわることもなく、リズムが神経質になりすぎることもなく旋律をたっぷりと歌い上げていくとても美しいカンタービレにあふれた演奏。そういえば、トスカニーニはシューベルトやブラームスでとても豊かな歌を聴かせてくれたのだ、と思い返しました。そう、この音楽はトスカニーニの指揮した「ザ・グレート」の延長線上にある演奏と考えればとてもよく理解できます。最初に感じた「トスカニーニのブルックナー?」と言う違和感はトスカニーニと言うと戦後のベートーヴェンの印象が強すぎるせいかもしれません。そう、トスカニーニは元々歌の人。そしてこの第7番という曲はブルックナーの交響曲の中では一番美しい旋律にあふれた曲です。素晴らしい演奏になることは不思議なことではないはずなのかもしれません。

 

美しい歌と時に厳しい表情を見せる第1楽章、そして痛切に心に沁みる第2楽章、激しいリズムにトスカニーニらしさを垣間見せた第3楽章、それから速めのテンポで劇的に盛り上がる最終楽章・・・

 

こうなるといくつかある録音の欠落が何とも惜しい・・・

第1楽章の最後の最後盛り上がったところで、ふと音が消えてしまうのは何とも力が抜けてしまう感じですし、第2楽章は途中ほんの少しではあるのですが、前後の演奏があまりに素晴らしいですから、う~ん、と思ってしまいます。そして第4楽章はさらに大きな欠落。(第4楽章は頭から他の楽章より少しノイズが大きいような気もします。)

 

歴史的な記録としてこれだけでも聴けた事に感謝すべきなのでしょうが、やはりこれだけいい音で聴けると贅沢になってしまいますね(笑)

 

それにしてもこの時代のトスカニーニの瑞々しい音楽性。やはり全盛期は私たちが知っているよりもさらに凄い指揮者だったと言うことなのでしょう。そしてこの時代のニューヨークフィルの音がまた素晴らしいです。なんとも言えない弦楽器の豊かな響きと時折ポルタメントをかけたりしながら美しく歌うカンタービレの見事さ。この時代のあまり完全とは言えない録音でこれだけ聴かせてくれると言うことは、生では一体どのように聞こえていたのでしよう。第2次大戦前のニューヨークにタイムトラベルしたい物です。

 

 

CDではありませんがAmazonに音源ありました!

Bruckner: Symphony No.7 in E Major, WAB 107