ブルックナーの最初の交響曲、「習作交響曲(Study Symphony)」とか「第00番」とか呼ばれるヘ短調の交響曲を聴いてみようと思いました。私が時々聴く音源はエリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団の演奏ですが、今日は何か別な音源を、と思いYouTubeで見つけだのが、アシュケナージ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団の録音でした。
アシュケナージのブルックナー?
ちょっと意外な気がしました。
と言うのは、もう大分昔だと思いますが、何かのインタビューで、アシュケナージが「ブルックナーがオーストリア以外の人だったら作品が残ることは無かったはず。ブルックナーの作曲法はアマチュア的で転調も子どもっぽい物だ。」と言うような内容の発言をし、その後その発言をあげつらうようなアシュケナージ批判が多かった記憶があったからです。この「ヘ短調交響曲」の録音は1998年とのこと。とするとNHK交響楽団の音楽監督になる前の録音ですね・・・。
ブルックナーを録音するにしろ、何故いきなり「第00番」なんだろう、と言うのはちょっと不思議な気がしました。まず4番とか7番なら分かる気がしますし、何故か初めてブルックナーを振ったのが9番、と言う指揮者も多いような気がするのですが「第00番」と言うのは、相当な変化球(笑)
レコーディングのプロデューサーが、ブルックナーは嫌いだ、と言うアシュケナージに「第00番」はちょっと違っている、と勧めた、というような話がネットにありましたが真偽は分かりません。ただこのディスクの評判は割合好評だったとのこと。まあ、その後アシュケナージがそれ以外の曲をレコーディングした様子はありませんからブルックナー嫌いが解消したわけでは無いようですが(笑)
若干怖い物見たさ(笑)で聴き始めた演奏でしたが、これはなかなか好演だと思います。オーケストラの音もドイツ的な重さがあってブルックナーにとても合っている質感がある気がしますし、アシュケナージの歌わせ方もなかなか美しい。滑らかでとても真摯な柔らかな手触りが感じられるような音楽作り。たしかにブルックナーらしさは薄い曲ですがそれでもこの演奏の延長線上には、たしかにあのブルックナーの姿が見える気がします。
この音源の入ったディスクには「第00番」の後にブルックナーの「弦楽五重奏曲 WAB112」の第3楽章アダージョを弦楽オーケストラ用に編曲した物が入っていました。
これがまたとても良い演奏でした。「弦楽五重奏曲 WAB112」は交響曲第5番と同じ頃作曲されたブルックナーの室内楽の傑作でブルックナー自身の作曲技術もかなり円熟した時期の作品です。弦楽オーケストラで演奏されたアダージョの響きは、7番、8番、9番と続く大傑作交響曲の緩徐楽章の深さに通じる物が感じられるような気がしました。良い曲ですし、良い演奏です。
「弦楽五重奏曲 ヘ長調 WAB 112アダージョ (弦楽オーケストラ編曲版)」は他に録音はあるのでしょうか。もしあったらもっと聴いてみたいと思いました。(元の弦楽五重奏での演奏はいくつか聴いたことがあります。とても好きな曲の一つです。)
それと、指揮者アシュケナージは今まであまり興味が無かったのですが、もう少し色々な曲を聴いてみる価値のある指揮者かも、と見直したりしたのでした(笑)
(ちょうどアシュケナージが音楽監督をやっていた時代のN響はほとんど聴いていなかったのです(汗))
とかなんとか言いつつ・・・、今日はこの辺で。
Bruckner, A.: Symphony in F Minor / String Quintet in F Major: Adagio
1998年9月、ベルリンのイエス・キリスト教会でデジタル録音。レコード芸術誌のインタビューで、ブルックナーに対する独特な考えを明らかにしていたアシュケナージによる注目のレコーディング。作曲者自身が番号すらつけなかった『ヘ短調交響曲(通称ダブル・ゼロ)』と、『弦楽五重奏曲~弦楽合奏版によるアダージョ楽章(フリッツ・エーザー編曲)』という組み合わせです。ロマン的かつ色彩豊かな好演。
ブルックナー:交響曲第00番ヘ短調 WAB99
ブルックナー:弦楽五重奏曲ヘ長調 WAB112~第3楽章:アダージョ(エーザー編)