フランク ヴァイオリン・ソナタ さりげなく美しく移ろいゆく音楽 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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フランクのヴァイオリン・ソナタが聴きたくなりYouTubeで音源を探しました。今日聴いたのは、ヴァイオリンがチョン・キョンファ、ピアノはラドゥ・ルプーの演奏で1977年5月に録音されたものでした。

 

よく、ドイツ音楽とフランスの音楽の違いとして、真面目なドイツとオシャレなフランス、と言うような表現をされることがあります。私たちがクラシック音楽として受け入れてきた物の主流になっていたのはモーツァルト、ベートーヴェンからドイツロマン派にかけての音楽が多く、深く重いものが良い音楽というようなイメージが強くありました。それに対して所謂フランス印象派を中心にしたフランスの音楽は美しいけれど軽く、少しとりとめが無いような音楽という感じを持つこともありました。特に若い頃はベートーヴェン的な、大上段に理想を掲げたような物に惹かれたりしていた気がします。あるいはブラームスのように自分の心の奥を深く見つめるような音楽にも・・・。演奏で言えばフルトヴェングラーの演奏はそんなクラシック音楽に対するイメージを象徴する物だったと思います。

 

でもそれから少しづつ人生経験を重ねるにつれ、別にけっして「真面目」で「深く重い」ものを否定するわけではないのですが、時にむしろ「軽く」て「オシャレ」でちょっと前までは何だか表面的で浅い、等と感じていた音楽に強く惹かれることが多くなってきたような気がします。たとえば、このフランクやドビュッシー、フォーレ・・・、それにサティなんかも。

 

真面目なドイツとオシャレなフランス、と先に書きましたがフランス人が真面目じゃないなどと言うわけでは無いでしょう。フランス人もたぶんドイツ音楽が好きだったりします。でも彼らが作曲した音楽は(もちろん作曲者による個性はありますが)ドイツ音楽のように深刻な表情は見せないことが多いように思います。彼らは音楽が人生のすべてだというような顔はなかなか見せようとはしないのです。さりげなく美しく移ろいゆく音楽。しかし、そこに込められたものはけっして表面的な浅いものでは無いのかも知れません。

 

チョン・キョンファの演奏はなかなか濃厚な表情で燃焼度が高く心に染みこんでくるようです。ルプーのピアノも好演。

 

そう言えばこの曲、初めて聴いたのはヴァイオリンでは無くチェロ・ソナタ、としてでした。もうずいぶん前のことで、誰の演奏家も忘れましたがチェロの音で聴くとまたちょっと違った雰囲気があると思います。

これはミッシャー・マイスキーのチェロ、マルタ・アルゲリッチのピアノによる演奏。2016年3月に収録されたものだそうです。

これも2人の名演奏家が互いに高め合っているような名演ですね。マルタ姉さんの表情が良いな。

 

 

もう一つ。とても古い演奏ですが、この表現は今では聴くことができないような気がします。

 

1929年の録音。

ヴァイオリンのポルタメントがもの凄い色気を醸し出しています。それでいて少しも下品にならないところが素晴らしい。これこそフランス音楽の神髄かも知れません。

 

 

フランク/ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ、他

 

 

掲載した動画より15年前のライヴ録音です。

ショパン:チェロ・ソナタ ト短調 作品65/フランク:チェロ・ソナタ(ヴァイオリン・ソナタ・イ長調の編曲版)/ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調

2000年11月に京都コンサートホールで行われたアルゲリッチとマイスキーのライヴ・レコーディングです。ここに収められた作品は、いずれも美しい調和のとれた旋律と内なる情熱を内包した作品です。この演奏はまず相手に合わせようとする和やかな合奏ではなく、お互い相手の演奏に刺激されながら、感興を高め、時には火花を散らしながら渡り合っていくもの。かつてのアルバムに比べひとまわりも、ふたまわりも大きくなった「ふたりの調べ」を聴くことができます。

 

さらに19年前の録音

Debussy: Cellos Sonatas, La Plus Que Lente, Minstrels

ピアニスト、マルタ・アルゲリッチとチェロ奏者、ミッシャ・マイスキーが共演した、1981年録音盤。

 

 

 

フランク、フォーレ&ドビュッシー : ヴァイオリン・ソナタ

歴史的名盤であると同時に、録音から70年あまりを経過した現在においてもこの演奏をに匹敵するCDは数えるほどしかない。近代フランスの3大ヴァイオリンソナタをカップリングしたこのCDは、作曲者と近しい空気を呼吸していた2人の演奏家の競演こそが成し得た、レコード史上の至宝ともいえるだろう。
ティボーはその繊細かつ洗練された感性で20世紀前半を代表するフランス人ヴァイオリニストである。一方コルトーもロマン派からフランス近代に至る数々のレパートリーを華麗な技巧で披露したピアノの巨匠。彼らの個性はここに収められている3曲を演奏するのには打ってつけであった。
いずれの楽曲もある一定の古典的様式美を土台としながらも、流麗な印象主義的要素が馥郁たるフランス風の香りを漂わせており、スケール感や技巧だけではその本質を描写しきれない。しかしこの2人のコラボレーションはいとも簡単にロマンティックで上品な味付けをしつつ、作品の魅力を本質的なところで描ききってしまうのである。