シューベルト「ヴァイオリンとピアノのための幻想曲」天才が最後の年に遺した美しい煌めき | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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シューベルトの「ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 ハ長調 D934」は1828年に作曲されました。

 

「1827年12月26日、カール・マリア・フォン・ボックレト、イグナーツ・シュパンツィヒ、ヨーゼフ・リンケによってシューベルトのピアノ三重奏曲第2番の初演が行われた。ピアノ三重奏曲は大きな成功を収め、これに触発されたというシューベルトはヴァイオリンとピアノのための楽曲に着手する。翌月までに全曲が完成されて2月7日にウィーンで初演されたものの、この演奏会は大変な不評に終わった。当時のウィーンの聴衆や批評家は曲の長大さに耐え切れず、次々席を立っていったと伝えられる。」(Wikipedia ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 (シューベルト) より)

 

シューベルトはこの曲の前に4曲のヴァイオリンとピアノのためのソナタ(1~3番はソナチネと呼ばれることも多く、また4番D.574は「二重奏曲」と呼ばれることもあります。)と「ヴァイオリンとピアノのためのロンド ロ短調 D.895」を作曲しています。比較的若い時に書かれた4曲のソナタは家族や仲間たちと楽しむために書かれた曲でもあり技術的にはシンプルな物でした。20代最後の年に書かれたD.895とシューベルトが亡くなる年に書かれたD934は、その頃親しくなっていたボックレトやスラヴィークと言う当時の一流演奏家に演奏して貰うために書いた物で演奏技術的には格段と高度な物になっています。(シューベルトは将来本格的な協奏曲を書くことを考えていたようです。)

 

美しい旋律、ヴァイオリンとピアノがまるで語り合うように旋律を受け渡しあいながら音楽は深まっていきます。時に快活に、時に笑顔を見せ、しかしふと顔を伏せた時に見せる深い闇・・・。切れ目無く続く20数分、美しい旋律に浸りながら次第に身じろぎも出来なくなるような想いに包まれていきました。

 

今日聴いたのはヴァイオリンがヨハンナ・マルツィ、ピアノがジャン・アントニエッティ。1955年11月に録音された演奏です。

ヨハンナ・マルツィの美しいヴァイオリンの音、それをしっかりと受け止め支えるジャン・アントニエッティのピアノ。

同じコンビの「ヴァイオリンとピアノのためのロンド ロ短調 D.895」も続けて聴きました。こちらも素晴らしい演奏です。

 

 

 

 

Complete Works for Violin & Piano

当盤には、EMIとドイツ・グラモフォンに13枚しかレコードを残さなかった彼女の十八番として名高いシューベルトのヴァイオリン作品をすべて収録。終始、凛とした佇まいと美しいボウイングで歌い上げた、これぞシューベルトと唸りたくなるような至高の名演で、シューベルトの書いた一音一音を心を込めて歌い上げる豊かな抒情はすべてのヴァイオリン・ファン必聴です。

シューベルト:
・ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ(全3曲)
・ヴァイオリンとピアノのための華麗なるロンド ロ短調D.895
・ヴァイオリンとピアノのための幻想曲ハ長調D.934
・ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(二重奏曲)イ長調D.574
ヨハンナ・マルツィ(ヴァイオリン)
ジャン・アントニエッティ(ピアノ)
録音時期:1955年9月&11月