ルービンシュタインとライナー 「ブラームス ピアノ協奏曲第1番」 厳しい造形と美しいたたずまい | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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ヨハネス・ブラームス
ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15
ピアノ:アルトゥール・ルービンシュタイン
指揮:フリッツ・ライナー
シカゴ交響楽団
録音:1954年4月17日 オーケストラ・ホール (シカゴ)
 

ブラームスのピアノ協奏曲第2番は時々聴くのですが、そう言えば第1番はどんな曲だったっけ、などと思いながらライブラリーの中から、最初に眼に付いたこの演奏をかけてみました。随分前に入手して、これもしばらく聴いていなかった演奏です。

 

音楽が始まった瞬間から目の覚めるような演奏でした。

 

厳しい音楽作りで鋭く切り込んでいくライナーとシカゴ交響楽団。

 

それに対峙するルービンシュタインのピアノも素晴らしいものです。

オーケストラに一歩も引かない激しさを持ちながら豊かな情感とたたずまいの美しさを一瞬も失わない演奏。

 

今までライナーとシカゴ交響楽団の演奏はあまり多くは聴いていなかったのですが、これはもっともっと聴くべき指揮者とオーケストラかも知れません。

 

 

などと思いながら、このディスクを購入した時のことを思い出していました。

 

そう、同じルービンシュタインとライナー/シカゴ交響楽団のラフマニノフの2番を聴いて、それが素晴らしい演奏だったのであれこれとネットで情報を見ているうちに、ルービンシュタインとライナーがラフマニノフの第3番録音中に決裂し、その後一切共演しなかったというエピソードを見たのです。それでラフマニノフの2番とパガニーニの主題による狂詩曲、そしてそれ以前に録音したこのブラームスしかルービンシュタインとライナーの共演した録音はないのだと。それで興味を覚え購入したディスクでした。

 

「アルトゥール・ルービンシュタインとの共演ではブラームスのピアノ協奏曲第1番(1954年)、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(1956年)とパガニーニの主題による狂詩曲(同年)という名盤を残したにもかかわらず、その後のラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の録音の際に深刻な対立を起こしてレコーディングを中止。以後、ルービンシュタインはライナーとの共演を一切拒絶するにいたった。
この経緯は次の通りである。当時のルービンシュタインはラフマニノフのピアノ協奏曲は第2番については精通していたが、第3番はレパートリーにはしていなかったため、録音の際に大きなミス・タッチをしてしまった。しかし、これに対するライナーの態度を冷笑と受け取ったルービンシュタインは、思わず「では、あなたのオーケストラはミスをしないのか?」と声を荒らげてしまった。それに対してライナーは一言、「しない!」と言い放った。このライナーの態度にルービンシュタインは激怒し、そのまま録音セッションから出て行ってしまった。RCAレコードには、このセッションの最初の15分間だけのテープが残されているといわれている。
このエピソードが残されたのは1956年頃のことであるが、当時、ラフマニノフのピアノ協奏曲は第2番だけがポピュラーで、第3番はホロヴィッツの他にはほとんど演奏するピアニストはおらず、当時のルービンシュタインがこの曲をレパートリーとしていなかったことは不自然ではない。しかしそれに対してライナーは、既に1951年にホロヴィッツとの共演でこの曲を録音(オーケストラはRCAビクター交響楽団)し、そのレコードは同曲の唯一無二の決定的演奏として音楽界で高い評価を受けていた。すなわち、ラフマニノフの第3番に関する限り、当時のルービンシュタインとライナーでは経験の積み重ねがまったく異なっていたのである。」(Wikipedia フリッツ・ライナー より)

ルービンシュタインはホロヴィッツに対し強いライバル心を持っていたと思われますし、特にテクニックの面ではコンプレックスを感じていた事もあるようですから、ホロヴィッツが得意にしているレパートリーだったこの曲に対して相当に慎重になっていたと思います。それが名盤と言われていたホロヴィッツのレコードの共演者から馬鹿にされたと感じたのですから、その怒りは強烈に激しい物だったでしょう。

 

ジョージ・セルもソリスト、特にピアニストとは難しい関係になることが多かったようですが、このフリッツ・ライナーという人もかなり敵を作りやすかった人のようです。

 

Wikipediaを見ると、ソリストどころか自分のオーケストラの楽員にも憎まれていたようですからかなりのものですね(笑)

 

まあ、和気藹々とやっていようが憎み合っていようが、私たちリスナーにとっては演奏が良いか悪いかがすべて。

 

 

このルービンシュタインとライナー/シカゴ交響楽団のブラームスは相性の悪さがかえって緊張感を作り、その結果が名演になっているように思われます。

 

それにしても、これはどちらの個性も凄いですね。

今日はかなり満腹したようです(笑)

 

 

 

 

 

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番

ピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタイン、フリッツ・ライナー指揮他との共演による1954年録音盤。(Amazon 商品の説明 より)