20世紀の音楽界における指揮者の地位を確立した立役者とも言うべき大指揮者アルトゥーロ・トスカニーニの人物像やその人生について、詳しく知りたいと思い購入しました。
本の内容は、4つの章からなっていて第一章が「生涯-誕生・スカラ座・ニューヨーク時代・引退と死」で、彼の一生を追い、第二章は「トスカニーニをめぐる人々-家族・芸術家・指揮者たち」というタイトルで関わりのあった人たちや影響を受けた人のことなどが扱われています。第三章は「演奏とその記録-SPからAV時代まで」となっていて、トスカニーニのレパートリーや関係のあったオーケストラのことなどが取り扱われており、最後の章が「ディスコグラフィー-残された遺産の全容(三田晴久・編)」と題され、この本の出版された時点ではほぼすべてが網羅されただろう膨大なディスコグラフィーになっています。
第一章から第三章までは、まあわりあいさらっとした人物伝、という感じで、トスカニーニの経歴などは大体分かりますし、今まで知らなかったエピソードなどもいくつかはありましたので読んだ価値はあったかな、という感じです。
欲を言えば、指揮者としてデビューする前から指揮者として世界的に認められるまでの時期についてもっと突っ込んだ内容になっていたらな、と言うのと、アメリカ時代(1910年代のメトロポリタン歌劇場の指揮者だった頃と1920年代の終わりから1930年代のニューヨークフィルハーモニックの時代)のエピソードをもっと詳しく知りたかったな、と思いました。
指揮者としてデビューする前の人物像がもう少し突っ込んで描かれていれば、後のトスカニーニの音楽を理解する上で大きなヒントになっただろうと思うのです。
また、ニューヨーク時代、メトロポリタン歌劇場の指揮者だった頃のマーラーとの関わりやニューヨークフィルハーモニック時代のメンゲルベルクとのエピソードなどはとても興味があったのですが、この本では第一章でも第二章、第三章でもその辺はほぼまったく何も書かれていません。これは少しガッカリ(笑)
最後のディスコグラフィーは充実していますし、所々に記載されているレコーディングやディスク製作に関わるエピソードなども面白くとても読み応えありました。この本の価値の半分以上はこのディスコグラフィーかも、と思うくらいです。この部分だけでも買って損の無い本です。
RCA (2012-05-01)
売り上げランキング: 14,369