若い頃持っていたメンゲルベルクのイメージというと芝居がかった大時代的な演奏、時代遅れの指揮者の代名詞、と言う感じでした。しかし最近、古い録音をいくつか聴いているとそのイメージもかなり変わってきました。確かにかなり大きなテンポルバートが頻繁に出てきますし今時の演奏スタイルとはずいぶん違いますが、それは曲のスタイルやバランスを壊す物では決してなく、聴く者を曲に引き込む強さと魅力を持っているように思います。
この動画を見ると、とてもしなやかできれいな指揮ですね。そしてその棒に一糸乱れず付いていくアムステルダム・コンセルトヘボウ。なんとも言えない艶やかな音です。まったく音楽が自由に伸び縮みしながら聴き手の心を鷲掴みにしていきます。
メンゲルベルクは第2次大戦中の活動をナチスへの協力者というように見られ、戦後は一切活動できませんでした。(復帰できることになった直後に亡くなりました)
よく、トスカニーニとフルトヴェングラー、ブルーノ・ワルターを世界の3大指揮者と言います。(もちろん、レコード会社とかの宣伝文句でしょうけど。)
しかし、メンゲルベルクが戦後も活躍していたらそれも変わっていたかも。
世界の4大指揮者? それとも3大指揮者から誰を落とす?・・・なんて(笑)
それにしても昔のウィーンフィルやこの動画のアムステルダム・コンセルトヘボウのような艶やかな音を出すオーケストラはもう出ては来ないのでしょうね。もちろん今のオーケストラの方が技術的に高度なのだろうとは思うのですが・・・。まあ、それこそ時代の違いと言うことなのでしょう。無い物ねだり、ということでしょうか。
ウィレム・メンゲルベルクの芸術 with コンセルトヘボウ管弦楽団(31CD)
メンゲルベルクと言えば一番有名なのはマタイ受難曲のライブかもしれません。
これは、たしかに大時代的解釈かもしれませんが、凄い演奏です。
時間があるときにぜひ聴いてみて下さい。
Bach - BWV244 St. Matthew Passion (Willem Mengelberg, 1939, slightly abridged) - YouTube