ボジャノフの自由なピア二ズムが炸裂します | 音楽事務所クリスタル・アーツ

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201256月、全国8都市で行われるボジャノフのリサイタルツアーに向けて、その音楽を存分に味わうための情報を配信するブログがスタートしました。ボジャノフの音楽&人間としての魅力を、さまざまな観点でググっとクローズアップしてゆく予定です!


(C)Kiyotane Hayashi

一人きりのステージで自由に炸裂する個性!

昨年秋に行われた佐渡裕指揮ベルリンドイツ響ツアーでのソリストとしてボジャノフを知った方も多いと思います。これまでこうして何度かオーケストラとの共演で来日を重ねているボジャノフですが、リサイタルでの日本ツアーはなんと今回が初めて。

オーケストラとの共演でも、もちろん、訴える力の強い個性的なピアニズムを聴かせて我々に強烈な印象を残しましたが、ソロの演奏ではこれがますます際立つ形で炸裂します。一人きりのステージで、すべてが彼の頭で自由に組み立てられるわけですから、当然といえば当然……。

 

そのピアノは、実に感情豊かに、濃厚に奏でられます。一見異端的に聴こえますが、実はとても正統的でもあり、なにか不思議な引力があります。パワフルなフォルテに圧倒されていると、次の瞬間には消え入りそうに遠くまで響くピアニッシモが耳をやさしくなでる。生の演奏に繰り返し触れているうちに、いつか癖になってしまうタイプの演奏です。

規範を踏襲したうえで殻を破る


 以前、あるコンクールのあと、ボジャノフはこう語っていました。

「僕の演奏のいくつかがエキセントリックすぎるという審査員もいたようです。そういう人がいるのは不思議なことではないので、気にしていません。古い規範に縛られている方が多いのかもしれない。音楽はそこから自由でもいいのではないかと思うけれど……20年後には変わっているかもしれません」

 カサグランデ、リヒテル両国際コンクールで最高位、エリザベート国際コンクール第2位など輝かしい結果を残す彼ですが、実は、その個性的な表現を、異彩を放つ天才と評する審査員と、どうしても受け入れられない審査員とで意見が真っ二つに割れることも多くみられます。それだけ主張が強く、だからこそいつも聴衆は熱狂します。

 再現芸術であるクラシック音楽の世界では、ひとつの楽譜から、たくさんの演奏家が繰り返し同じ作品を演奏します。そこには連綿と受け継がれてきた伝統や音楽解釈の基礎が横たわっています。その規範を踏襲したうえで殻を破るには、音楽の基礎体力、挑戦する強い自信がなくてはいけません。
 ボジャノフの音楽は、まさにそうした「再現芸術」の壁に挑戦しているようにも見え、しかし実際のところ、彼自身はただひたすらに大好きな音楽に没頭しているだけであるから不思議です。(
続く)


[文 高坂はる香(音楽ライター)]

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