来年度の登録販売者試験の合格を目指す方へのサポートのために投稿しています。登録販売者試験に合格するためには、「試験問題の作成に関すする手引き(以下、「手引き」と書きます)」を読み込むことが必要だと私は考えています。


    そこでまずは「手引き」を読んでもらい、切りのよいところで力試しに令和1年に各ブロックで出題された問題を【練習問題】として解いてもらっています。


    そうすることで「手引き」の読み込みと試験に試験に受かる実力が養成されると思います。


    登録販売者試験のヤマ場の第3章も残すところ「ⅩⅤ 公衆衛生用薬」と「ⅩⅥ 一般用検査薬」の2つの単元で終わりです。この辺になると多くの受験生はなかなか手が回らず、十分勉強できないまま試験に突入するケースもあるかと思います。しかしまだまだ時間がありますので、この投稿のコンセプト通り「手引き」をしっかり読んでもらいます。


    「手引き」の第3章(「主な医薬品とその作用」)の「ⅩⅤ 公衆衛生用薬」は該当する「手引き」の範囲が9ページを超えますす。1日に読んでもらう「手引き」の分量としては、2ページ程度がちょうど良いですが、切りの良いところで区切って【練習問題】に取り組んでもらいます。


     そして今日は、「ⅩⅤ 公衆衛生用薬」の中の「2 殺虫剤・忌避剤」を「2)代表的な配合成分・用法、誤用・事故等への対処」の前まで一気にやってしまいます。よろしくお願いいたします。読んでいると思わず痒くなりそうですがよく出題されているようです。しっかり読み込みましょう。


2 殺虫剤・忌避剤

    殺虫剤・忌避剤のうち、ハエ、ダニ、蚊等の衛生害虫の防除を目的とする殺虫剤・忌避剤は医薬品又は医薬部外品として、法による規制の対象とされている。殺虫剤・忌避剤のうち、人体に対する作用が緩和な製品については医薬部外品として製造販売されているが、原液を用時希釈して用いるもの、長期間にわたって持続的に殺虫成分を放出させる又は一度に大量の殺虫成分を放出させるもの、劇薬に該当するもの等、取扱い上、人体に対する作用が緩和とはいえない製品については医薬品として扱われる。

    忌避剤は人体に直接使用されるが、蚊、ツツガムシ、トコジラミ(ナンキンムシ)、ノミ等が人体に取り付いて吸血したり、病原細菌等を媒介するのを防止するものであり、虫さされによる痒みや腫れなどの症状を和らげる効果はな

  1)衛生害虫の種類と防除

    疾病を媒介したり、飲食物を汚染するなどして、保健衛生上の害を及ぼす昆虫等を衛生害虫という( 外敵から身を守るために人体に危害を与えることがあるもの(ハチ、ドクガ、ドクグモ、サソリ等)は衛生害虫に含まれない。)。代表的な衛生害虫の種類と防除に関する出題については、以下の内容から作成のこと。

   (a) ハエ

    ハエ(イエバエ、センチニクバエ等)は、赤痢菌、チフス菌、コレラ菌、O-157大腸菌等の病原菌や皮膚疾患、赤痢アメーバ、寄生虫卵、ポリオウイルスの伝播など様々な病原体を媒介する。また、人の体内や皮膚などに幼虫(ウジ)が潜り込み、組織や体液や消化器官内の消化物を食べて直接的な健康被害を与えるハエ蛆症と呼ばれる症状もある。

    ハエの防除の基本は、ウジの防除である。ウジの防除法としては、通常、有機リン系殺虫成分が配合された殺虫剤が用いられる。薬液がウジの生息場所に十分行き渡るよう散布されることが重要であるが、厨 芥(生ごみ)がビニール袋に入っているなどして薬液が浸透しない場合や、薬液をかけた後に乾燥させるのが困難な場合には、主に成虫の防除を行うことになる。成虫の防除では、医薬品の殺虫剤(希釈して噴霧する)も用いられるが、一般家庭においては、調製を要さずそのまま使用できる医薬部外品の殺虫剤(エアゾールなど)や、ハエ取り紙などの物理的な方法が用いられることが多い。

   (b) 蚊

    蚊(アカイエカ、シナハマダラカ等)は、吸血によって皮膚に発疹や痒みを引き起こす( 蚊のほか、ブユ(ニホンヤマブユ、アオキツメトビブユ等)、アブ(アカウシアブ、シロフアブ等)、ヌカカ(ホシヌカカ、イソヌカカ等)も、吸血によって皮膚に発疹や痒みを引き起こす。これらが病気を媒介することは我が国ではほとんどないが、刺された部位の皮膚症状は、蚊よりもひどくなることがある。)ほか、日本脳炎、マラリア、黄熱、デング熱等の重篤な病気を媒介する。

    水のある場所に産卵し、幼虫(ボウフラ)となって繁殖する。人が蚊に刺される場所と蚊が繁殖する場所が異なるため、種類による生息、発生場所に合わせた防除が必要となる。

    ボウフラが成虫にならなければ保健衛生上の有害性はないため、羽化するまでに防除を行えばよい。ボウフラの防除では水系に殺虫剤を投入することになるため、生態系に与える影響を考慮して適切な使用を行う必要がある。

    成虫の防除では、医薬品の殺虫剤(希釈して噴霧する)も用いられるが、一般家庭においては、調製を要さずそのまま使用できる医薬部外品の殺虫剤(蚊取り線香、エアゾール等)が用いられることが多い。なお、野外など殺虫剤の効果が十分期待できない場所では、忌避剤を用いて蚊による吸血の防止を図ることとなる。

   (c) ゴキブリ

    ゴキブリ(チャバネゴキブリ、クロゴキブリ等)は、食品にサルモネラ菌、ブドウ球菌、所を中心に防除を行うのが効果的とされている。

    燻蒸処理を行う場合、ゴキブリの卵は医薬品の成分が浸透しない殻で覆われているため、殺虫効果を示さない。そのため3週間位後に、もう一度燻蒸処理を行い、孵化した幼虫を駆除する必要がある。

   (d) シラミ

    シラミの種類ごとに寄生対象となる動物が決まっているため、ヒト以外の動物に寄生するシラミがヒトに寄生して直接的な害を及ぼすことはない。ヒトに寄生するシラミ(コロモジラミ、アタマジラミ、ケジラミ等)による保健衛生上の害としては、吸血箇所の激しい痒み(clxvii 吸血された部位を掻くことで化膿することもある。)と日本紅斑熱や発疹チフス等の病原細菌であるリケッチア(リケッチアは人獣共通して感染する)の媒介である。

    シラミの防除は、医薬品による方法以外に物理的方法もある。物理的方法としては、散髪や洗髪、入浴による除去、衣服の熱湯処理などがある。医薬品による方法では、殺虫成分としてフェノトリンが配合されたシャンプーやてんか粉が用いられる(なお、フェノトリンには、シラミの刺咬による痒みや腫れ等の症状を和らげる作用はない。)。また、シラミの成虫が脱落して次の宿主に伝染しやすい場所には殺虫剤を散布して、寄生の拡散防止を図ることも重要である。

   (e) トコジラミ

    トコジラミは、シラミの一種でなくカメムシ目に属する昆虫で、ナンキンムシとも呼ばれる。トコジラミに刺されると激しい痒痛を生じ、アレルギー反応による全身の発熱、睡眠不足、神経性の消化不良を起こすことがある。また、ときにペスト、再帰熱、発疹チフスを媒介することもある。

    トコジラミは床や壁の隙間、壁紙の裏、畳の敷き合わせ目、ベッド等に潜伏する。その防除にはハエ、蚊、ゴキブリと同様な殺虫剤が使用されるが、体長が比較的大きい(成虫で約8mm)ので、電気掃除機で隅々まで丁寧に吸引することによる駆除も可能である。

   (f) ノミ

    ノミによる保健衛生上の害としては、主に吸血されたときの痒みであるが、元来、ペスト等の病原細菌を媒介する衛生害虫である(日本にはほとんど存在しないが、ケオプスネズミノミ、ヨーロッパネズミノミが生息している地域では、現在でも、保健衛生上大きな問題となっている。)。近年、ヒトノミの生息数は激減しているが、ノミはシラミと異なり宿主を厳密に選択しないため、ペット等に寄生しているノミによる被害がしばしば発生している。

    そのためノミの防除には、イヌやネコなどに寄生しているノミに対して、ノミ取りシャンプーや忌避剤などが用いられる。また、シラミが終生を宿主に寄生して生息するのに対して、ノミはペットの寝床やよくいる場所、部屋の隅の 埃の中などで幼虫が育つ(ノミの幼虫は吸血せず、成虫の糞や宿主動物の体表から脱落した有機物などを食べて育つ。)ため、電気掃除機による吸引や殺虫剤の散布などによる駆除を行うことも重要である。

   (g) イエダニ、ツツガムシ

    イエダニは、ネズミを宿主として移動し生息場所を広げていく。吸血による刺咬のため激しい痒みを生じる。また、発疹熱などのリケッチア、ペストなどを媒介する。イエダニの防除には、まず宿主動物であるネズミを駆除することが重要であるが、ネズミを駆除することで、宿主を失ったイエダニが吸血源を求めて散乱するため、併せてイエダニの防除も行われる。イエダニの防除には、殺虫剤による燻蒸処理等が行われる。

    ツツガムシは、ツツガムシ病リケッチアを媒介するダニの一種である。ヒトの生活環境でなく野外に生息し(吸血はせず、幼虫期の一時期だけ動物に寄生して皮膚の老廃物などを摂食する。)、目視での確認が困難であるため、ツツガムシが生息する可能性がある場所に立ち入る際には、専ら忌避剤による対応が図られる。その場合、忌避剤の使用だけに頼らず、なるべく肌の露出を避け、野外活動後は入浴や衣服の洗濯を行う等の防御方法を心がけることが重要である。

   (h) 屋内塵性ダニ(ツメダニ類、ヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ等)

    ツメダニ類は、通常は他のダニや昆虫の体液を吸って生きているが、大量発生したときにはヒトが刺されることがある。刺されるとその部位が赤く腫れて痒

かゆみを生じる。

    ヒョウヒダニ類やケナガコナダニについては、ヒトを刺すことはないが、ダニの糞や死骸がアレルゲンとなって気管支喘息やアトピー性皮膚炎などを引き起こすことがある。

    屋内塵性ダニが生息する環境は、どんな住居にも存在し、完全に駆除することは困難である。また、一定程度まで生息数を抑えれば保健衛生上の害は生じないので、増殖させないということを基本に防除が行われることが重要である。

    殺虫剤の使用についてはダニが大量発生した場合のみとし、まずは畳、カーペット等を直射日光下に干すなど、生活環境の掃除を十分行うことが基本とされている。併せて、室内の換気を改善し湿度を下げることも、ダニの大量発生の防止につながる。

    殺虫剤を散布する場合には、湿度がダニの増殖の要因になるため、水で希釈する薬剤の使用は避け、エアゾール、粉剤が用いられることが望ましい。医薬品の散布が困難な場合には、燻蒸処理等が行われる。



【練習問題】

    衛生害虫とその防除に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。(平成29年・東京都・問98)


a  ゴキブリの卵は、医薬品の成分が浸透しやすい殻で覆われているため、燻蒸処理を行えば、殺虫効果を示す。

b  シラミは、散髪や洗髪、入浴による物理的方法では防除できないため、医薬品による防除が必要である。

c  ノミによる保健衛生上の害としては、主に吸血されたときの痒みであるが、元来、ペスト等の病原細菌を媒介する衛生害虫である。

d  ハエの防除の基本は、ウジの防除であり、その防除法としては、通常、有機リン系殺虫成分が配合された殺虫剤が用いられる。


1(a、c) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)











【解答】

a・・・誤

b・・・誤

c・・・正

d・・・正

以上により、答えは「5」。

【解説】

    「衛生害虫の防除」はなかなか手が回らないと思います。ドラッグストアにおいてもこの分野の相談はあまりありません。しかし、知識として持ち合わせておくことは大切です。まだ十分時間がありますのでしっかり学習しておきましょう。

    問題文aは、「ゴキブリの卵は医薬品の成分が浸透しない殻で覆われているため、殺虫効果を示さない。そのため3週間位後に、もう一度燻蒸処理を行い、孵化した幼虫を駆除する必要がある。」と書かれており、「誤」です。

    問題文bは、「シラミの防除は、医薬品による方法以外に物理的方法もある。物理的方法としては、散髪や洗髪、入浴による除去、衣服の熱湯処理などがある。医薬品による方法では、殺虫成分としてフェノトリンが配合されたシャンプーやてんか粉が用いられる。また、シラミの成虫が脱落して次の宿主に伝染しやすい場所には殺虫剤を散布して、寄生の拡散防止を図ることも重要である。」と書かれており、「誤」です。

    問題文cは、「ノミによる保健衛生上の害としては、主に吸血されたときの痒みであるが、元来、ペスト等の病原細菌を媒介する衛生害虫である。」と書かれており、「正」です。

問題文dは、「ハエの防除の基本は、ウジの防除である。ウジの防除法としては、通常、有機リン系殺虫成分が配合された殺虫剤が用いられる。」と書かれており、「正」です。



    では、「手引き」を再度引用します。各問題文の基礎になった部分に注意しながら、もう一度読んでください。



2 殺虫剤・忌避剤

    殺虫剤・忌避剤のうち、ハエ、ダニ、蚊等の衛生害虫の防除を目的とする殺虫剤・忌避剤は医薬品又は医薬部外品として、法による規制の対象とされている。殺虫剤・忌避剤のうち、人体に対する作用が緩和な製品については医薬部外品として製造販売されているが、原液を用時希釈して用いるもの、長期間にわたって持続的に殺虫成分を放出させる又は一度に大量の殺虫成分を放出させるもの、劇薬に該当するもの等、取扱い上、人体に対する作用が緩和とはいえない製品については医薬品として扱われる。

    忌避剤は人体に直接使用されるが、蚊、ツツガムシ、トコジラミ(ナンキンムシ)、ノミ等が人体に取り付いて吸血したり、病原細菌等を媒介するのを防止するものであり、虫さされによる痒みや腫れなどの症状を和らげる効果はな

  1)衛生害虫の種類と防除

疾病を媒介したり、飲食物を汚染するなどして、保健衛生上の害を及ぼす昆虫等を衛生害虫という( 外敵から身を守るために人体に危害を与えることがあるもの(ハチ、ドクガ、ドクグモ、サソリ等)は衛生害虫に含まれない。)。代表的な衛生害虫の種類と防除に関する出題については、以下の内容から作成のこと。

   (a) ハエ

    ハエ(イエバエ、センチニクバエ等)は、赤痢菌、チフス菌、コレラ菌、O-157大腸菌等の病原菌や皮膚疾患、赤痢アメーバ、寄生虫卵、ポリオウイルスの伝播など様々な病原体を媒介する。また、人の体内や皮膚などに幼虫(ウジ)が潜り込み、組織や体液や消化器官内の消化物を食べて直接的な健康被害を与えるハエ蛆症と呼ばれる症状もある。

    ハエの防除の基本は、ウジの防除である。ウジの防除法としては、通常、有機リン系殺虫成分が配合された殺虫剤が用いられる。薬液がウジの生息場所に十分行き渡るよう散布されることが重要であるが、厨 芥(生ごみ)がビニール袋に入っているなどして薬液が浸透しない場合や、薬液をかけた後に乾燥させるのが困難な場合には、主に成虫の防除を行うことになる。成虫の防除では、医薬品の殺虫剤(希釈して噴霧する)も用いられるが、一般家庭においては、調製を要さずそのまま使用できる医薬部外品の殺虫剤(エアゾールなど)や、ハエ取り紙などの物理的な方法が用いられることが多い。

   (b) 蚊

    蚊(アカイエカ、シナハマダラカ等)は、吸血によって皮膚に発疹や痒みを引き起こす( 蚊のほか、ブユ(ニホンヤマブユ、アオキツメトビブユ等)、アブ(アカウシアブ、シロフアブ等)、ヌカカ(ホシヌカカ、イソヌカカ等)も、吸血によって皮膚に発疹や痒みを引き起こす。これらが病気を媒介することは我が国ではほとんどないが、刺された部位の皮膚症状は、蚊よりもひどくなることがある。)ほか、日本脳炎、マラリア、黄熱、デング熱等の重篤な病気を媒介する。

    水のある場所に産卵し、幼虫(ボウフラ)となって繁殖する。人が蚊に刺される場所と蚊が繁殖する場所が異なるため、種類による生息、発生場所に合わせた防除が必要となる。

    ボウフラが成虫にならなければ保健衛生上の有害性はないため、羽化するまでに防除を行えばよい。ボウフラの防除では水系に殺虫剤を投入することになるため、生態系に与える影響を考慮して適切な使用を行う必要がある。

    成虫の防除では、医薬品の殺虫剤(希釈して噴霧する)も用いられるが、一般家庭においては、調製を要さずそのまま使用できる医薬部外品の殺虫剤(蚊取り線香、エアゾール等)が用いられることが多い。なお、野外など殺虫剤の効果が十分期待できない場所では、忌避剤を用いて蚊による吸血の防止を図ることとなる。

   (c) ゴキブリ

    ゴキブリ(チャバネゴキブリ、クロゴキブリ等)は、食品にサルモネラ菌、ブドウ球菌、所を中心に防除を行うのが効果的とされている。

   燻蒸処理を行う場合、ゴキブリの卵は医薬品の成分が浸透しない殻で覆われているため、殺虫効果を示さない。そのため3週間位後に、もう一度燻蒸処理を行い、孵化した幼虫を駆除する必要がある。

   (d) シラミ

    シラミの種類ごとに寄生対象となる動物が決まっているため、ヒト以外の動物に寄生するシラミがヒトに寄生して直接的な害を及ぼすことはない。ヒトに寄生するシラミ(コロモジラミ、アタマジラミ、ケジラミ等)による保健衛生上の害としては、吸血箇所の激しい痒み(clxvii 吸血された部位を掻くことで化膿することもある。)と日本紅斑熱や発疹チフス等の病原細菌であるリケッチア(リケッチアは人獣共通して感染する)の媒介である。

    シラミの防除は、医薬品による方法以外に物理的方法もある。物理的方法としては、散髪や洗髪、入浴による除去、衣服の熱湯処理などがある。医薬品による方法では、殺虫成分としてフェノトリンが配合されたシャンプーやてんか粉が用いられる(なお、フェノトリンには、シラミの刺咬による痒みや腫れ等の症状を和らげる作用はない。)。また、シラミの成虫が脱落して次の宿主に伝染しやすい場所には殺虫剤を散布して、寄生の拡散防止を図ることも重要である。

   (e) トコジラミ

    トコジラミは、シラミの一種でなくカメムシ目に属する昆虫で、ナンキンムシとも呼ばれる。トコジラミに刺されると激しい痒痛を生じ、アレルギー反応による全身の発熱、睡眠不足、神経性の消化不良を起こすことがある。また、ときにペスト、再帰熱、発疹チフスを媒介することもある。

    トコジラミは床や壁の隙間、壁紙の裏、畳の敷き合わせ目、ベッド等に潜伏する。その防除にはハエ、蚊、ゴキブリと同様な殺虫剤が使用されるが、体長が比較的大きい(成虫で約8mm)ので、電気掃除機で隅々まで丁寧に吸引することによる駆除も可能である。

   (f) ノミ

    ノミによる保健衛生上の害としては、主に吸血されたときの痒みであるが、元来、ペスト等の病原細菌を媒介する衛生害虫である(日本にはほとんど存在しないが、ケオプスネズミノミ、ヨーロッパネズミノミが生息している地域では、現在でも、保健衛生上大きな問題となっている。)。近年、ヒトノミの生息数は激減しているが、ノミはシラミと異なり宿主を厳密に選択しないため、ペット等に寄生しているノミによる被害がしばしば発生している。

    そのためノミの防除には、イヌやネコなどに寄生しているノミに対して、ノミ取りシャンプーや忌避剤などが用いられる。また、シラミが終生を宿主に寄生して生息するのに対して、ノミはペットの寝床やよくいる場所、部屋の隅の 埃の中などで幼虫が育つ(ノミの幼虫は吸血せず、成虫の糞や宿主動物の体表から脱落した有機物などを食べて育つ。)ため、電気掃除機による吸引や殺虫剤の散布などによる駆除を行うことも重要である。

   (g) イエダニ、ツツガムシ

    イエダニは、ネズミを宿主として移動し生息場所を広げていく。吸血による刺咬のため激しい痒みを生じる。また、発疹熱などのリケッチア、ペストなどを媒介する。イエダニの防除には、まず宿主動物であるネズミを駆除することが重要であるが、ネズミを駆除することで、宿主を失ったイエダニが吸血源を求めて散乱するため、併せてイエダニの防除も行われる。イエダニの防除には、殺虫剤による燻蒸処理等が行われる。

    ツツガムシは、ツツガムシ病リケッチアを媒介するダニの一種である。ヒトの生活環境でなく野外に生息し(吸血はせず、幼虫期の一時期だけ動物に寄生して皮膚の老廃物などを摂食する。)、目視での確認が困難であるため、ツツガムシが生息する可能性がある場所に立ち入る際には、専ら忌避剤による対応が図られる。その場合、忌避剤の使用だけに頼らず、なるべく肌の露出を避け、野外活動後は入浴や衣服の洗濯を行う等の防御方法を心がけることが重要である。

   (h) 屋内塵性ダニ(ツメダニ類、ヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ等)

    ツメダニ類は、通常は他のダニや昆虫の体液を吸って生きているが、大量発生したときにはヒトが刺されることがある。刺されるとその部位が赤く腫れて痒

かゆみを生じる。

    ヒョウヒダニ類やケナガコナダニについては、ヒトを刺すことはないが、ダニの糞や死骸がアレルゲンとなって気管支喘息やアトピー性皮膚炎などを引き起こすことがある。

    屋内塵性ダニが生息する環境は、どんな住居にも存在し、完全に駆除することは困難である。また、一定程度まで生息数を抑えれば保健衛生上の害は生じないので、増殖させないということを基本に防除が行われることが重要である。

    殺虫剤の使用についてはダニが大量発生した場合のみとし、まずは畳、カーペット等を直射日光下に干すなど、生活環境の掃除を十分行うことが基本とされている。併せて、室内の換気を改善し湿度を下げることも、ダニの大量発生の防止につながる。

    殺虫剤を散布する場合には、湿度がダニの増殖の要因になるため、水で希釈する薬剤の使用は避け、エアゾール、粉剤が用いられることが望ましい。医薬品の散布が困難な場合には、燻蒸処理等が行われる。