胃腸鎮痛鎮痙薬の有効成分に関する記述について、(     )の中に入れるべき字句の正しい組み合わせはどれか。なお、2箇所の( b )内は、いずれも同じ字句が入る。(近畿ブロック問36)

    胃腸鎮痛鎮痙薬に配合される抗コリン成分としては、( a )がある。抗コリン作用を示すアルカロイドを豊富に含む生薬成分として( b )が用いられることも多い。ただし、( b )の使用期間中は、授乳を避ける必要がある。

     a                                             b
1 ブチルスコポラミン臭化物 エンゴサク 
2 ブチルスコポラミン臭化物 ロートエキス
3 パパベリン塩酸塩 エンゴサク
4 パパベリン塩酸塩 ロートエキス
5 アミノ安息香酸エチル エンゴサク








【解答】
a・・・ブチルスコポラミン臭化物
b・・・ロートエキス
以上により、答えは「2」。

【解説】
    このところ平成30年度に行われた登録販売者試験問題で、第3章の問題のうち「漢方薬・生薬」の問題文が含まれる問題を紹介しています。今日の問題は生薬に関する問題文ではありませんが、選択肢に生薬「エンゴサク」が含まれているため、チョイスしました。

    自分的には難しい問題ではなかったのですが、皆さんはいかがでしたでしょうか。

    選択肢の候補として上げられている「ブチルスコポラミン臭化物」、「パパベリン塩酸塩」そして「エンゴサク」はどれも重要な薬物なのでこれを機会に覚えてしまいましょう。

    では、「試験問題の作成に関する手引き」(p109~110)を引用してみます。

3 胃腸鎮痛鎮痙薬
1)代表的な鎮痙成分、症状を抑える仕組み、主な副作用

 (a) 抗コリン成分
    急な胃腸の痛みは、主として胃腸の過剰な動き(痙攣 )によって生じる。消化管の運動は副交感神経系の刺激によって亢進し、また、副交感神経系は胃液分泌の亢進にも働く。そのため、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げることで、その働きを抑える成分(抗コリン成分)が、胃痛、腹痛、さしこみ(疝痛cxi、 癪 cxii)を鎮めること(鎮痛鎮痙 )のほか、胃酸過多や胸やけに対する効果も期待して用いられる。
    胃腸鎮痛鎮痙薬に配合される抗コリン成分としては、メチルベナクチジウム臭化物、ブチルスコポラミン臭化物、メチルオクタトロピン臭化物、ジサイクロミン塩酸塩、オキシフェンサイクリミン塩酸塩、チキジウム臭化物等がある抗コリン作用を示すアルカロイドcxiiiを豊富に含む生薬成分として、ロートエキス(ロートコン(ナス科のハシリドコロ又はチョウセンハシリドコロの根茎及び根を基原とする生薬)の抽出物)が用いられることも多い
    これらの成分が副交感神経系の働きを抑える作用は消化管に限定されないため、散瞳による目のかすみや異常な眩しさ、顔のほてり、頭痛、眠気、口渇、便秘、排尿困難等の副作用が現れることがある。重大な事故につながるおそれがあるため、抗コリン成分が配合された医薬品を使用した後は、乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。また、排尿困難の症状がある人、心臓病又は緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。高齢者では、排尿困難や緑内障の基礎疾患を持つ場合が多く、また、一般的に口渇や便秘の副作用が現れやすいので、使用する前にその適否を十分考慮し、使用する場合にはそれらの初期症状等に常に留意する等、慎重な使用がなされることが重要である。
    ブチルスコポラミン臭化物については、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることが知られている。
    ロートエキスについては、吸収された成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が速くなる(頻脈)おそれがあるため、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避ける必要がある。なお、ロートエキスにより母乳が出にくくなることがある。
    メチルオクタトロピン臭化物についても、吸収された成分の一部が母乳中に移行することが知られている。

★下線部太字の部分が抜き出されて問題文が作られています。問題文の作り方がわかり大変興味深いです。

    以下は参考までに載せておきます。

(b) パパベリン塩酸塩
    消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める作用を示すとされる抗コリン成分と異なり、胃液分泌を抑える作用は見出されない
    抗コリン成分と異なり自律神経系を介した作用ではないが、眼圧を上昇させる作用を示すことが知られている。緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。

★下線を引いたら部分が重要な部分で過去に出題されています。

(d) 生薬成分(p111)
    鎮痛鎮痙作用を期待して、エンゴサク(ケシ科のエンゴサクの塊茎)、シャクヤク(Ⅰ-2(解熱鎮痛薬)参照。)等が配合されている場合がある。