東京女子プロレス 

「東京女子プロレス'21」 

後楽園ホール大会 1/4/2021

NEO美威獅鬼軍(沙希様&メイ・サン=ミッシェル)対乃蒼ヒカリ&汐凛セナ
NEO美威獅鬼軍の存在感は、上手さや強さを超越したもの。メイ・サンが加入した今、存在だけでチケットが売れてお客を呼べる。美の巨人はまさにMoney Maker。メイ・サンの加入により、更に一挙手一投足が興味深くなり、連携技も増え、試合の内容も向上。キャラクターと存在だけでも凄かったNEO美威獅鬼軍が、内容まで手にすれば鬼に金棒。恐ろしい程の空間支配力であった。ヒカシオもプロレスの世界を超えた友人関係というだけあり、連携は上々。小気味良いファイトを見せていて、ミッドカードレベルまでならこれでも十分だが、この上に行くなら何か特別な武器が欲しい所。相手がNEO美威獅鬼軍という全てを飲み込む存在ならば尚更。また、それは乃蒼ヒカリ個人にも言えることで、先を行く形になっている渡辺未詩とは、スキル的に大きな差はなくとも、パワームーブという大きな武器があるから、プッシュを受けている所もある。華も安定感もあるだけに、明確に「これ」という武器は欲しい所。それがハードコアやデスマッチなら大歓迎ではあるが、それだと団体のカラー的に相手がいないと思うので、通常形式でも活かせる武器も欲しい所。個人的にはハードコアにも通ずるラフファイトやダークさを出せば、キュートさが持ち味の選手が多い団体なので、他と差別化を図れそうかと考える。平均的良試合。いずれにしても可能性しか感じない。
評価:***1/4

山下実優対伊藤麻希
2年前のメインで王座戦を戦った両者。この試合でも山下は一歩引いて様子見のスタンスだったが、真価を問われる伊藤が成長を見せる。技が増えたのは事実である。だがその使う技のチョイス、精度が見事。出来る事を最大の力で行う。簡単そうで簡単ではない行動ではあるが、意識的に取捨選択出来ているのは良い。フィジカル面も強度が上がっていて、ショルダーブロック一つとっても緩さがない。そして何よりもコミカルに逃げなくても勝負出来る様になった事。元々スター性もキャラクターも抜群だったが、そのキャラクターが故に、コミカルな展開を求められる事も多かったけれども、この試合では完璧にシリアスで勝負して、山下を確実に追い込んでいた。もし伊藤の攻めが緩かったのなら、適当に山下が締めて終わっていたが、意表を突いた丸め込みや関節技であわやという所まで行っており、危ないと感じた山下がすぐさま本気モードで蹴り飛ばして制圧しKOという結末にも説得力が生まれる。これはアンダーカード〜ミッドカードで試合数を積ませて、レスラーとしての成長を促した団体側とそれに応えた本人の勝利である。話題性はピカイチで、メインイベンターになり得る存在では元々あっただけに、遂に名に実が追いついた形。序盤から山下が潰しに行ってはおらず、まだまだこのカードの伸びしろはあると感じたので、この評価ではあるが、将来ビッグマッチのメインイベントとして出してもおかしくない内容。伊藤に関しては近いうちにプリプリ王座を任しても問題ないだろう。想像以上の激戦。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

プリンセス・オブ・プリンセス王座戦
坂崎ユカ(c)対辰巳リカ

この試合、辰巳は持てる力を全て注ぎ込んでいて、マイナスなポイントはない。緩さの要因となりうるヒップアタックも厳しく放っていて、格差を埋める脚攻めも執拗に行い、ドラゴンスクリュー連発からの足4の字は分かっていても説得力十分。
だがやはり絶対王者坂崎の充実度が余りにも凄過ぎた。序盤ティヘラがすっぽ抜けてから、脚攻めに向かわせた後、鉄柵を使った脚攻めを喰らった時の見事なダメージ表現。ミスをフォローした上で伏線まで張る。そして簡単に脚攻めに行かせるのが定石ではあるが、簡単に攻めさせず反撃し、グラウンドで落とす。飛び技を多く使わなくても、効果的に関節技、投げや打撃を活用しつつ支配。関節技もヘッドロックで粘る基本的なものから、三角や腕十字を狙いに行く等それなりの練習をしていないと出来ないものまで見せてくれるので、本当に隙がない。それらの厳しい攻めと表情で緊迫感を演出。辰巳の猛反撃を煽るものの、自身の強さはキープ。最後まで高い壁であり続けた。惜しい所としては、坂崎の高い完成度に、まだ辰巳の実力が追いついていなかった所はある点、他の得意技を飛ばして、魔法少女にわとり野郎を狙い、かわされて脚攻めに入られたフィニッシュ。この流れが性急過ぎた点。まだ手駒は残している中で、もう2〜3ターン攻防があっても良かった感じはしたが、それでも内容の詰まった見事な試合には違いない。この坂崎政権の後はかなり大変だと思うが、立場が人を育てる事も大いにあるので、辰巳の今後には期待したい。そして今の坂崎は、物凄い完成度を誇っているので、コロナが明けた後、AEW参戦の比率を少し増やして欲しい所。志田光戦、サンダー・ロサ戦はマストで組んで欲しい。AEW女子でもNWA女子でもベルトは獲れる存在。

好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

全体評価:8.5