新日本プロレス Wrestle Kingdom 15 In Tokyo Dome 2日目 1/5/2021
 

『KOPW 2021』決定戦-フェイタル・4ウェイマッチ
矢野通対チェーズ・オーエンズ対バッドラック・ファレ対BUSHI

箸休めは中盤にやってこそ箸休め。この試合をオープニングにするなら、ダークマッチのスターダムの試合を入れるべき。何に配慮して遠慮しているかはわからないが、こういう時こそ強引にやらないと意味がない。他の女子の団体に差をつけて、選手たちには本戦に出られる喜びとやりがいを与え、世界には新日本も女子の試合をやりますというアピール。それによりオンデマンドに加入させて、スターダムに新日本ファンを流れさせる。ロッシー氏は、業界きっての優秀なビジネスマンならば、選手を強奪出来るパワーをここにも使うべきでしょう。上り調子の今こそ攻めるべき。試合に関しては特にコメントはないものの、チェーズはゆってぃみたいな風貌で、ジョバーにしか見えない。腕もある「クラウン・ジュエル」ならもう少し何とかしたい所。
評価:*1/2

NEVER無差別級選手権試合
鷹木信悟(c)対ジェフ・コブ

ハードヒットが軸となる肉弾戦だが、コブは各種投げや身体能力を活かした大技、鷹木は飛び技や打撃も交え、様々なアクセントを随所に散りばめる。只、軸は崩さずにとにかく激しさを突き通す強さもある。色々なマットを渡り歩いてきたからこそ、ストレートは豪速球、変化球も緩い球とまではいかなくても、カットボールやスプリット等芯を外すもの鋭く落ちるものというような、要は何種類もの変化を付ける事が出来るのがこの2人の強みである。The Empire入りしたコブは、正直ヒールが似合わないハワイアンではありながらも、シリアスな表情を崩さず、マシーンとして在り続けたのは、試行錯誤の後が見えて良かった。これがメインでもおかしくないくらいの大激戦。そして鷹木は早くIWGP戦線に行かせるべきである。好勝負。
評価:****

SANADA対EVIL(w/ディック東郷)
この試合も悪い意味でいつもと同じ。裏切った元タッグパートナーに対して恨みを晴らす試合のはずだが、SANADAは爽やかファイトに終始。SANADAも「復讐してやる」なんて言葉が似合わないRVDの様なタイプ。遺恨精算がとことん似合わない。出来ないものは仕方がない。求める方が悪かったとしか言いようがないので、このテーマでこのカードを組んだ方に責任がある。EVILも東郷を使いながら何とか調整はするものの、強引にでも好転させる支配力はない。EVIL自体はラフな展開もヒールプレイも上手く使える選手なだけに、割を食ったなという印象。長々とやった割には、スペシャル感はなく、東郷のテーブル受け位だった。只、SANADAを批判して、前日のオカダ対オスプレイを持ち上げるのはおかしな話。裏切りを経た遺恨清算戦というテーマに対して、普通のシングルとほぼ変わらないという同じ構造上の欠陥を露呈したからである。それが良くも悪くも新日本スタイルだと言ってしまえばそれまでだが、幅を狭めるのは、結果的に損をするのは団体側なので、もう少し工夫は必要だと考える。結局SANADAは、マイクはなし、テーマなしの試合で伸び伸びとやらせるのが1番である事がわかる内容。平均的良試合。
評価:***1/4

IWGP Jr.ヘビー級王座戦
石森太二(c)対高橋ヒロム

演舞的な攻防から場外を使った攻防そして石森の支配では、昨日ファンタズモが痛め付けた手と腕を狙う形。ここまではかなりのクオリティではあったが、中盤以降は少し停滞。長い長い支配ターンの割に、終盤で回収し切れなかったのが要因。長く熱い割に、エルボー合戦等気合が先行して、質が追いついてこなかった。セミなので、ヘビーの様な試合をしたいという思いが強過ぎて、ジュニアの良さを削り過ぎてしまった。試合時間もベストよりはやはり長く、間延びするシーンも。石森が関節技で押したのは良いものの、それだけが浮いてしまう。この時間ならばとことん物量押しで危険技も雪崩式も飛び技も切り返しと何でもやってしまう位ではないと苦しい。ヒロムは痛みの表現を強めにして、これまでとは異なるエッセンスを入れようとしていたそのチャレンジは評価したいが、石森は良くも悪くもスーパーアスリートである為、デスペラード位の関係性がないとこの手法で昇華するのは難しかった。ドームという最高の舞台でありながらも、声援が送れない状況の中でのセミ抜擢ではあるが、思惑通りには運ばなかった内容。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4


IWGPヘビー級&IWGP ICダブル選手権試合
飯伏幸太(c)対ジェイ・ホワイト

ジェイの巧みな技術とインサイドワークが飯伏をシャットアウト。窮地に立たされた飯伏はキラー・モードを解禁し応戦。介入得意技必殺技フルスロットルで作り上げた48分ものスペシャルなロングマッチと言えばかなり聞こえがよく、実際良い試合ではあるものの、この全部乗せのボリュームの割には、もっと伸びていなければいけない内容。外道をすぐさま介入させチープショットを狙った割に、かなり長く飯伏をドミネイトする展開が続く。ジェイの凄さは非常に伝わる展開だが、飯伏にも抵抗させる展開は与えるべきで、飯伏の価値はとことん落とすやり方はスマートではない上、飯伏はそもそもダウンベース、演劇ベースの受けが得意な選手ではないので、小刻みに攻防を行いつつ、ジェイが強く狡く行くのが最適解だったと考える。上手さの割に退屈。これが全てである。
そして48分もやる必要はなく、ただ単に、団体側が国内外に48分という超絶なロングマッチを年間最大の舞台で行った事実を示したいというエゴが強過ぎた。正直20分位の方が、このカードの相性的に、記憶にも記録にも残る試合が出来る。どうしてもロングマッチをしたいなら、半端な介入だけではなく、ハードコア要素や過激化要素を増やすしかなかったが、それもなかったので苦しかった。両者共素晴らしいレスラーなのは言うまでもなく、この試合も良い試合ではあるものの、自らの腕と試合時間という記録と肩書きに溺れ過ぎた内容。ロングマッチを行うのは決して悪くないが、然るべきやり方でやらないと本来発揮されるべき力が失われてしまうのは、マネジメントとして課題が残る。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

総評

物量と試合時間に質と面白さが付いてこなかった2日目。スターダムを本戦に入れるのは、ドームだけではなく、試験的に新日本のビッグマッチでクロスオーバーさせながら、2022年大会で入れ込むのは必要だろう。日本プロレス界の盟主として動く必要はあるだろう。国内向けにはそれで良いのかもしれないが、ずっと通常形式だけやり続けるのには限界が来ている。40分台も当たり前になれば、後は60分以上になる。それならアイアンマン戦や3本勝負を取り入れれば、ハードコア系に頼る必要はなく、マンネリを防げる。
そしてジェリコとモクスリーがいないと、ここまでサプライズと海外への繋がりが感じられないドメスティックな内容になるのかと愕然とする。ジェイ・ホワイトのWWE移籍話が盛り上がっているが、2020年来日出来ない時に、フリー選手中心の小大会でお茶を濁すのではなく、ジェイやGODをAEWやインパクトに派遣して、Bullet Club再結集の場に少しでも立ち会わせておけば、ここまで蚊帳の外感はなかったはず。AEW×インパクトの盛り上がりをツイートするだけで指をくわえて観ている現状は、とても「世界第二位の団体」の雰囲気は感じられない。後になって、憎きヤング・バックス、コーディ、ケニー・オメガ、そしてトニー・カーンやドン・キャリスらに頭を下げて絡ませて欲しいと頼み込む位なら、まだコロナが明けない今なら間に合うかもしれない。このBC復活ストーリーに乗っかる事は大事である。ジョン・モクスリー対KENTAをAEWの舞台で行う事に対して許可を出すのも大事。AEWに全てを持っていかれる事を危惧しているかもしれないが、ジェリコやモクスリーを貸し続けて、リターンを全くしていない現状なのだから、多少お土産を持っていき、AEW×インパクト×新日本の三団体交流にする位ではないと、結局ライブではないウィークリーのTV放送を持ってもROH位のレベルにしかならないので、もし世界に置いていかれたくないなら早急に行動すべき。それでも国内の市場のみを守り、テレ朝とメルツァーと東スポプロレス大賞を気に掛けるだけで良いなら、別にする必要はないが。
北米市場との乖離を強く感じた大会でした。

全体評価:8