AEW Dynamite #59 11/11/2020
バンクハウスマッチ
ザ・ナチュラル・ナイトメアズ(ダスティン・ローズ&QTマーシャル)対ザ・ブッチャー・アンド・ザ・ブレイド(w/バニー)

 

ダスティンがいるだけで南部の香りをするのは流石。メンバー的にはダスティン位しか南部感はしないが、試合はエンタメ性と暴力性を兼ね揃えたハードコアブロウル。各種凶器にギターショット等も含み、そしてマーシャルとブレイドは大流血。B級ハードコア好きにはたまらない大乱戦。高所落下やラダーからの空襲にセコンドのすっかりチェリーボムに戻ったバニーもテーブル葬を受け身体を張る。終盤はネタ切れか、攻め疲れ感が出過ぎていたものの、予想を遥かに超える激闘となった。05年位のTNAで行われていたモンスターズ・ボール戦が好きな人(私の事ですね)は持ってこいの試合。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

レイ・フェニックス対ペンタ・エル・セロ・ミエド
 

演舞的な攻防から互いのマスクを裂く展開。行動自体は派手で激しくても、テンポはスローなままなので、浮いている印象を得る。ルチャブロズを組む前ならまだしも、タッグとしての期間が長くなっているので、そこまでやる必要がある?別に他のやり方もあったんじゃない?という感覚はある。中盤までは悪くなくても、行動に見合った熱量は得られていないという印象ではあったが、終盤フェニックスが反撃に転ずると急加速。技を乱発する様な形ではなくとも、威力、華麗さ、キレと全て満点の動きを見せ、徐々に事態を好転させると、スタンディング式ダイヤモンド・ダスト(リバース・エセックス・デストロイヤー)という新技も入れ、粘った ペンタが、エプロン、場外、リングとパイルドライバー系3連発という荒技で強引にフィニッシュ。締め方もらしくて良いものの、フェニックスに必殺級の攻撃をさせてからの方がもう少し加点出来たはず。このカードのスタイル的に足し算、掛け算のプロレスなので、ボリューム増し増しでも問題はなかった。
中々良い試合。
評価:***1/2

AEW Dynamite #62 - Winter Is Coming 12/2/2020
 

コーディ&アリン対チーム・タズ(ホッブス&スタークス)の試合後の乱闘で突如会場が暗転。現れたのは、なんとスティング!!
WCW崩壊から19年。遂にTNTにスティングが帰ってきた!
まず、第一声が元WCWのアナウンサーである、トニー・シュヴァーニだったのが良い。その横にWWFの実況であり副社長だったJRがいるのも感慨深い。更にダスティンやコーディは勿論、AAとの再会。ECWの象徴であるタズもいて、タズやダスティンはTNAで、コーディもWWEで被ってはいるものの、皆がAEWというWWEのライバル団体でTNTという TV局で再会したのが感慨深い。TNTでやる以上、フレアーやNOWの様な家族ぐるみでWWEとズブズブな人は難しいが、ブレット、DDPに次いで、絶対に対WWEの象徴であるスティングを出したかったのだろうとやっと念願が叶った瞬間が素晴らしい。クオリティとかは度外視して、コーディ対スティングは是非行って欲しい。

 

AEW世界王座戦
ジョン・モクスリー(c)対ケニー・オメガ

中盤まではじっくりと攻防を積み上げていく形。テーブルを使わない新日本の時のケニーという印象。ラフを交えつつ、適度に攻守交代を繰り返しながら土台作り。昨年の超過激なデスマッチから考えると上手さはあっても、味気ないなと感じる所も多かったが、試合の雰囲気を変えたのは、モクスリー。デスマッチ顔負けの椅子に座っての打撃合戦。打撃合戦は良くあるシーンだが、この一捻りはデスマッチで名を上げたモクスリーがやるからこそ大きな意味が生まれる。
ここからは、新日ライクな切り返し合戦を織り交ぜつつ、互いの得意技を打ち合う展開が続く。シンプルではあるが、ビッグマッチならこれ位で十分。特にモクスリーのスターパワーがカバーしてくれる上、ケニーはケニーでトペコンやVトリガー連打で物量押しも出来る。得意な領域で着実に仕上げへの準備をしたかと思ったら、解説に就いていたドン・キャリスが登場し、瀕死のケニーをサポート。マイクでの一撃、Vトリガー連発に片翼の天使で悲願の王座戴冠!
こんな特大サプライズが控えていれば、年間ベストなんて狙わずに確実な形を取れば、後は結末のインパクトで全て吹き飛ぶ事を理解していたからこその前半の静けさ。TVプロレスなので要所と最後でインパクトを与えればそれで良い。試合後、ドン・キャリスはケニーを連れてバックステージから会場の外へ。ケニー・オメガと共に自らが副社長を務める火曜日のインパクト・レスリングのTV放送に出て、結託の真相を話すと宣言!
スティング登場をも吹き飛ばす、AEW×インパクト・レスリングのクロスオーバーは年末に特大の爆弾を投下した。全てを吹き飛ばす二大サプライズは、NXTはおろか更なるWWEへの進撃の号令となった。試合としては好勝負レベルだが、2020年屈指のサプライズである衝撃のシーンでした。
評価:****

全体評価:9

 

新日本のケニー対ジェリコ実現に尽力したドン・キャリス。重要なファクターではあるが、彼が全てを回したというより、多くの人脈と関係性そしてアイデアが積み重なってそうさせたというところ。今後どうなるかわからないが、ケニー・オメガというレスラーに更なる箔を付ける為、インパクトにとっては、視聴率やオンデマンドサービスの加入率の増加、何よりも他団体のカナダ人の大スターを自分の番組に持ってくるというのは、インパクトの親会社であるカナダのTV局アンセム社からしたら快挙である。日本行きが難しく、インディ団体が動いていない中、人材やストーリーの交流により多くのドリームマッチが実現出来るのはWIN-WINだろう。


 

コロナ禍である状況、新日本のスターの参戦は、単発の試合なら爆発させてマニアの話題にはなる。だがそれは新日本のファンや選手側が喜んでも、全米放送の視聴率を上げる役割は果たせない。それならば、かつて第二の団体だったTNAの後進団体とWCWを放送していた局TNTでクロスオーバーをやるという方が視聴率もお金も稼げる。面白さもありながら、ビジネスでも利益を生み出せる手法でこれをやってのけたのは凄いこと。来年はWCW、ECW崩壊、WWFへの吸収から20年。いよいよ本格的に時計の針が動き始める。