AEW Dynamite #52 9/23/2020
AEW TNT王座戦
Mr.ブロディ・リー(c)(w/ダーク・オーダー)対オレンジ・キャシディ

 

試合後に現れた黒髪のコーディの復活劇がメインの試合。別に対戦相手がキャシディである必要はなく、王座戦である必要もない。実際ほぼワンサイドでブロディがドミネイト。只ジェリコに勝つなど順調にプッシュを受けている人気者キャシディなので、終盤は火の出る様なトペやランニングPK、メサイアDDT、そしてビーチブレイクともう過去を隠す気なんてサラサラない隠し技を披露。ブロディとキャシディが、JAPW、CZWやChikaraと様々な東海岸インディーで激動の00年代を生き抜いた戦友。その2人が全米放送で王座戦を戦う。しかもWWEで評価されつつも、主役にぬれないまま干されて栄光と挫折を味わったブロディと、そんな栄光は味わってはないものの、たぶんマスクを被ったり、JCライダーから名前もキャラクターも丸々変えたりで、遅咲きのカルト人気を博してのし上がったキャシディ。紆余曲折あった2人がトップヒールと団体屈指の人気者ベビーフェイスとして再会する夢物語を実現させたAEWは素晴らしい。このカードの関係性や意義を分かってなければ、絶対に組まないか組んでもスカッシュで終わり。最近のキングストン登用も含め、夢半ばで消え去ったChikaraへの弔いは形を変えまだまだ続いていく。ノスタルジックにさせながらも、ノスタルジックだけではない実力もしっかり見せたのもポイント。平均的良試合。
評価:***1/4

 

AEW世界王座戦
ジョン・モクスリー(c)対エディ・キングストン

 

そんな東海岸インディーを生き抜いたベテラン2人の再会があった後のメインはアーチャー欠場により急遽決まったこのカード。共にCZW世界ヘビー級王者歴がある両者。しかし対戦としてはCZW 「Cage of Death 11」のNo. 1コンテンダー4ウェイ位で、ガッツリ対戦した訳ではないニアミス具合。このカードもまさか実現するとは夢にも思わなかったものなので、本当に人生は予測出来ない。
00年代米東海岸インディーにおける筆頭カルト・ブロウラー対決とあり、NYのギャング感と洗練されてこそいるがシンシナティ、オハイオの狂犬感を出した上で、共にルーツである日本プロレスとMMAのエッセンスそして場外での乱戦を散りばめたブルファイトを展開。キングストンがコスチュームの色そのままにストレッチプラムを極め、激しい打撃も連発すると、モクスリーは首相撲からの膝蹴りやゴッチ式ではない正調パイルドライバーを見せ、観る者特に長く彼らを追ってきたファンをニヤリとさせる。時間やルールの制約があるので、コンパクトに纏めた感はあるものの、彼らがどういう道を歩んで、どういうプロレスを嗜好しているか。そしてこの場所はそれを思う存分に見せる事が出来るけども、最低限のメジャーの綺麗さやスケールは必要な遊び場である事。演者と団体のカラーや意図がビンビンに伝わる内容。
AEWはエリートの団体であり、ジェリコの団体で、何よりコーディが叩きつけたマクマホン家に挑戦する為の軍隊である。その筆頭の兵隊がモクスリーである。でも同時にずっとやりたくてもやれなかったROHやPWG以外のインディーから成り上がってきたレスラー達の夢や希望の場でもある。過去を清算し未来へ向かう。PWGに代表される西海岸は当然。CZWやChikaraに代表される東海岸インディーを通る事でよりAEWという新興団体の意味が良く理解出来る。コーディ対キングストンと合わせて見ると面白いだろう。中々良い試合。
評価:***1/2(GMOTYC)

 

全体評価:7+