AEW All Out 2020 9/5/2020

ヤング・バックス(マット&ニック・ジャクソン)対ジュラシック・エクスプレス(ジャングル・ボーイ&ルチャサウルス)(w/マルコ・スタント)
JEの勢い溢れる攻めを受け止めながら、ミスをカバーし、少しヒール調の構築で土台を作り試合を広げていく。ジャングル・ボーイのミスムーブになりかけたところを、得意のロコモーション式ノーザンライトスープレックスに持っていき、その流れで決めようとした場外へのブレーンバスターがミスになった所を切り返して、場外のノーザンライトスープレックスと過激なやり方で完全にカバーし切ってみせたマットの巧さ、冒頭に放った連携式のハリケーン・ラナを終盤ではエプロンへのパワーボムで返し、そのままカナディアン・デストロイヤーに行く等機転の利き方、そこにプラスαを必ず加える徹底ぶり。やはりヤング・バックスは凄い。かなり良い動きをしていたJEの良さを完全に引き出した後で、突き放し一蹴。JE特にジャングル・ボーイへの投資の意味が強いマッチメイクなのだが、そのテーマを遂行し、更にその上の地点で着地した好勝負。
評価:****

AEW世界タッグ王座戦
“ハングマン”アダム・ペイジ&ケニー・オメガ(c)対FTR(キャッシュ・ウィーラー&ダックス・ハーウッド)(w/タリー・ブランチャード)

FTRの的確過ぎるタッグワークに、王者組の高い能力。インパクト溢れる連携も多く飛び出した試合だが、この前のDynamiteで、ペイジがエリートを追放された事が全て。ヒールターンやエリート脱退はそこじゃない。ここかこの後だ。
微妙な関係をずっとズルズルと続けていたが、もう壊れてしまった。それではタリーがいる意味もなく、FTRがいくら素晴らしくても、全てアクションベースになり、ストーリーが広がっていかない。フェイスヒールのダイナミズムはない。オメガもペイジもTVプロレスで微妙な機微を表現出来る程役者ではないので、手詰まり。
豪快な大技の数々と個々の能力で何とか保っていた試合だが、次第に停滞していき、崩れ去るのが伝わる内容。ベタに行きたくない気持ちはわかるが、オメガの為にもペイジの為にも、この試合においてはFTRやタリーの為にも誰にも良くないストーリーメイク。この試合は普通に行い、その後で解散ストーリーを広げていくべきであった。中々良い試合。
評価:***1/2

ミモザ・メイヘムマッチ
オレンジ・キャシディ対クリス・ジェリコ

キャシディのキャラクター、長く続いている遺恨、キャラクターを超えた直線的なファイトとキャシディを押し上げるべく、ジェリコがあの手この手で采配を振るうこの抗争。キャシディも長いキャリアと隠れた実力を解放し、ジェリコのリードに食らいつく。ピンフォール&ギブアップとミモザカクテルのプールに叩き込まれると負け、試合が決まる条件が両方あるのが、ゲーム性と遺恨清算という二つの側面を上手く纏めている。やられても反撃し、炎の様に熱く、メサイアDDTを放つ姿はまるで蟻軍団のリーダーの様。そしてタクトを握って、最後は惨めな姿を見せて負けていくジェリコの千両役者ぷりはやはり素晴らしい。中々良い試合。
評価:***1/2

AEW世界王座戦
ジョン・モクスリー(c)対マクスウェル・ジェイコブ・フリードマン(w/ウォードロウ)

元CZW世界ヘビー級王者対決という出所の共通点がある両者の決戦。
MJFは、要所ではチープショットを決めるが、基本は真っ向勝負。それでは実力差格差は埋まらず、チャレンジマッチの趣。それが全編続いた試合。MJFの実力を示す事は出来ていて、大流血もあり見せ場作っていたが、絶対王者モクスリーでは流石に勝ち目はない。将来のMJFの為に組んだ投資型メインイベント。フィニッシュも隙をついたもので、実はMJFの方に配慮をかなりしていた内容。この投資を回収出来るかが楽しみ。そうであればこの試合は将来語り継がれる。中々良い試合。
評価:***1/2

全体評価:8

AEW Dynamite #50 9/16/2020
パーキング・ロット・ブロウル
ベスト・フレンズ(チャック・テイラー&トレント)対ジ・インナー・サークル(オルティズ&サンタナ)

 

 

オルティズ&サンタナは白塗りの戦闘モード。代表作の一つであるインパクトでのLAX対決、5150ストリートファイトを彷彿とさせる。

 

 

駐車場戦というとシナ対エディが有名。あの試合は高いエンタメ性をハードコアと織り交ぜた名作だったが、

この試合はよりハードコア度を強めた死闘。

 

 

すぐにベルトを巻ける程のレベルにある両チームだが、中々頂点に辿り着けず、中堅に甘んじている中で、巡ってきたチャンス。それを逃すまいとこれでもかと車でのバンプを取りまくる。車での攻撃、フロントガラスに突っ込むシーンはまさにZONA23のデスマッチ顔負け。デスマッチレスラーばりに背中を鮮血で染め上げるトレントは凄まじい。ハードコア度の高さがフューチャーされる中、タイヤのホイールに隠した警棒を使う、鉄パイプやバットに木材等、使用したのは駐車場にある様な凶器のみという拘りも見逃せない。そして大トリは、オレンジ・キャシディの登場。介入するにはこれしかないという登場の仕方と介入方法。そしてキャシディが締めるのではなく、ベストフレンズの2人が締めたのも見事。トレントの母親スーが運転する車に乗り込んで去って行くセンスも最高の一言。ピュアヴァイオレンスにアクセントで効果的なエンタメ要素を付加。All Outのもどかしさを払拭し、Full Gearに向けて再加速した激戦。これはWWE何本も取られた。名勝負。
評価:****1/2